『三月、七日。』『三月、七日。〜その後のハナシ〜』の感想

作品情報

幸せになりたい、でも幸せになんてなれっこない——。
誰かを幸せにすることもできなくて何のために生きているのか——。
孤独を噛み締めて生きる少年と少女。ふたりが出会ってしまったのは、運命の悪戯か偶然か——? 筆者の独特の感性で描く、拙くも切ない、青春ラブストーリー登場。

上記はAmazonの内容紹介より転載。
全2巻のライトノベル

この感想には小説の重大なネタバレが含まれています。それでも大丈夫という方だけお読みください。

妹について

名前は七日(なのか)。
一人称は「うち」
兄の呼称は「三月クン」「お兄ちゃん」
年齢は15歳、四風館高校普通科の1年生。

父は事故で亡くなっていて、母親は不明。
広島の祖父母に養ってもらっていたが、現在は遠く離れた東京の学校の寮で一人暮らしをしている。

黒髪お下げの純朴な少女。
学校では周りの人間に馴染めず孤立している。
広島出身で訛りが強いが、本人は特に気にしていない。
過去に起きた事故の経験から、自分は幸せになれないと思い込んでいる。

「うちも、三月クンの事……好き」


「うちだって、三月クンの事好きじゃもン! 好きじゃけど……しょうがないもん!好きじゃけど……!」


「だって……お兄ちゃん……すごい、いい事言ったけェ」

兄について

主人公。
四風館高校進学科の1年生。
現在はマンションで母親と二人暮し。父親は不明。

成績優秀で、1年生ながら生徒会長を務めている優等生。
品行方正を装って周りの人間を見下して馬鹿にしている嫌味な性格だったが、物語が進むにつれ少しずつ変わっていく。

感想

二人の男女が兄妹と知らずに恋に落ちる話。
途中まで二人の接点がなかなか繋がらないのが、もどかしい。
その分近づき始めた時が楽しくなるんですけど。

登場人物は思春期真っ盛りです。
どうすれば大人になれるのかとか、生きている意味を考えたりとか、自分は何の為に生まれてきたのかとか、自分が何をしたいのかとか。
そういうことに悩む普通の高校生の心情がよく描かれています。

この話で面白いのが兄妹と分かった後の二人の気持ちの違い。
兄は好きになった七日が実の妹だと判明してショックを受けますが、七日の方は母を含め家族が出来て嬉しいという喜びの方が大きい。
この違いによる兄の苦しい胸の内が読んでてせつなかったです。

……とここまではいいとして、問題は続編の『三月、七日。〜その後のハナシ〜』です。
この話は、実妹キャラ好きには最悪の話でした。
読んだ記憶を抹消したいぐらいです。

とにかく兄がひどい。
中盤までは七日を諦めきれずに苦しむ姿が延々と続くんですが、後半になると急に心変わりをして、妹以外の子を好きになるんですね。実妹モノとしては最悪な展開としか言いようがない。

七日の兄に対する気持ちは一つの兄妹愛の形として悪くないとは思うのですが、兄の方はどう考えても兄妹恋愛の否定にしか見えません。読んでて本当に気分が悪くなりました。
壁に本を投げつけたくなるぐらい。

まとめ

読むなら『三月、七日。』までがいいと思います。
二人が恋に落ちてキスをするシーンまでは非常に面白かったですし、告白シーンは読んでてすごく恥ずかしいというか胸がドキドキしました。

そんな気持ちをどん底に落としてくれるので、続編は絶対に読まない方がいいです。
幸せな気持ちが一気に吹き飛びます。まさに天国から地獄でした。