『ブラコンアンソロジー Liqueur ―リキュール―』vol.02の感想

作品情報

「あたしの恋を阻むもの。それはあたし自身に流れる血。」――叶わぬ恋に身を焦がす少女たちの姿を描く、オールブラコンアンソロジー第2弾!
草野紅壱Kashmirカザマアヤミよしだもろへ渡辺静袴田めら大朋めがね雨隠ギド伊咲ウタ風華チルヲ、昼沖太、Kima-gray桜沢鈴来瀬ナオ、藤屋いずこ、大石中二、たくじ、みりの、五十嵐電マ巻田佳春狩野蒼穹、キダニエル、位置原光Z、壱号、総勢24名の作家が、少女たちの想いを切なく、ときにコミカルに描く!

上記はAmazonの内容紹介より転載。

弟や兄が大好きな姉、妹視点がメインのブラコンアンソロジーコミックの2冊目。
18禁ではなく一般向けです。

前巻の「全16作、256P」から「全24作、304P」に増量。
内訳は兄妹モノが16作姉弟モノが8作で、前巻に引き続き兄妹モノの比率が高め。
作家さんはほとんどが新規で、続投は3人のみです。

前作『ブラコンアンソロジー Liqueur ―リキュール―』の感想

作品一覧(赤字が兄妹モノ)

作品名 作者名 ページ数
『ある姉の不道徳』(姉弟 渡辺 静 16P
『伝染』 よしだもろへ 8P
『兄と妹の一日戦争!』 伊吹ウタ 12P
『その思い出と共に』(姉弟 草野紅壱(続投) 10P
『よるとまひる2』 カザマアヤミ(続投) 8P
『俺が姉につれない理由(ワケ)』(姉弟妹) 風華チルヲ 10P
『妹の秘肉☆オブザデッド』 昼 沖太 12P
『勇者のお姉ちゃん☆』(姉弟 Kima-gray[キマグレ] 11P
『月香と陽太〜最強の姉〜』(姉弟 桜沢 鈴 12P
『おにいちゃんカメラ』 雨隠ギド 16P
『思春期♥コンプレックス』 来瀬ナオ(続投) 12P
『わたしだけのナツ』 藤屋いずこ 8P
『影は、光を追いかけるばかり。』 袴田めら 14P
『いもうとかんさつ日記』(姉弟妹) kashmir 6P
『恥ずかしいけど誠兄ィのためなら!』 大石中二 12P
『お兄様は処女厨!!』 たくじ 10P
『萌えもだえ!』 みりの 12P
『フレーム・イン』 五十嵐電マ 17P
『クイズ!妹一人に聞きました!』 巻田佳春 4P
『今年からは妹』(姉弟 狩野蒼穹 8P
『たぬきねいり』 キダニエル 16P
『たくらんで妹』(姉兄妹) 位置原光Z 10P
『姉の特権』(姉弟 壱号 14P
『はさみ。』(姉弟 大朋めがね 24P

感想(兄妹モノのみ)

『伝染』 よしだもろへ 8P(特にお気に入り)


花粉症(?)にかかった兄に対し妹が……という話。
8Pと短いお話なんですが、兄妹の方言でのくだけたやり取り、妹の秘めた恋心にないしょのキスと中身は充分過ぎるほど詰まっています。
黒のセーラー服→普段着→パジャマ、おさげ→おろし髪など、妹の格好にバリエーションがあるのもポイント高し。

『兄と妹の一日戦争!』 伊吹ウタ 12P


なぜか襲い掛かってくる妹から、兄が逃げまわる話。
フォークやナイフ、野球のボールを投げてきたり、剣道着姿で竹刀で襲いかかってきたりと、ガチで襲ってくる妹ですが、兄の方は余裕であしらっています。

妹の兄に対する気持ちが恋愛感情かどうかは微妙ですが、暴力系→実は泣き虫で寂しがり屋のギャップはなかなかクルものがあります。
兄が妹をおんぶして帰宅するラストも、しんみりしてていいですね。

『よるとまひる2』 カザマアヤミ 8P


このアンソロジーで唯一の前巻からの続き物。
続きではありますが、前回の話を読んでいなくても特に問題はないです。

前回はブラコンの妹に振り回されつつも兄妹仲良くイチャイチャって感じのお話だったんですが、今回は徐々に離れていく双子の悲哀が強調されています。

前巻と今巻の内容の違いを象徴しているような作品。

『俺が姉につれない理由(ワケ)』 風華チルヲ 10P

この作品には一応マスコット的存在の妹が出てくるのですが、内容は明らかに姉弟メインなので、姉弟モノに含めています。ということで説明だけで、感想は無し。

『妹の秘肉☆オブザデッド』 昼 沖太 12P(お気に入り)


ゾンビモノのDVDを見ながらの兄妹会話がメインの話。

妹はお茶目な甘えん坊で、お兄ちゃん大好き。
兄は妹に対してぶっきらぼうでつれない態度なんですが、なんだかんだで妹に甘いというタイプ。

兄妹モノではほとんど見かけたことがない眼鏡兄妹で、容姿もよく似てるのが見所かな。
特に何という話でもないんですが、何となく気に入ってる作品です。
この感覚を言葉で説明するのは難しい……。

『おにいちゃんカメラ』 雨隠ギド 16P


5年間毎日自分の顔の写真を撮って、それをパラパラ漫画みたいにまとめる動画をネットで見た妹が、それを兄の顔でやろうとする話。

妹は兄のことが大好きなんですが、その兄は彼女持ち、そしてその彼女が明るくて優しくて、文句のつけようがないほどの良い人というのが切ない。

良作だとは思いますが、僕はこういった「自分は妹だから兄とは結ばれない、諦めなきゃいけない」という悲恋話は好きじゃないです。

『思春期♥コンプレックス』 来瀬ナオ 12P(特にお気に入り)


前巻では姉弟モノを描いていた作家さんですが、今回は兄妹モノです。

兄に対して素直になれない妹が、頑張ってバレンタインに兄にチョコを上げようとする話。

悩みながらも勇気を振り絞って兄に告白する妹が素晴らしい。
子供の頃の思い出を上手く生かしているのもいいですね。

『わたしだけのナツ』 藤屋いずこ 8P(お気に入り)


だらしない兄とそれを支えるしっかり者の妹の話。

6、7P目の妹のモノローグがいいです。
兄に対する依存と独占欲が、短い中にしっかり詰まっています。
後味の良いオチもグッド。

『影は、光を追いかけるばかり。』 袴田めら 14P


積極的で明るい兄に憧れる消極的な妹。
自立して家を出ていったはずの兄が、家に突然帰ってきて……という話。

兄がダメすぎる……。
突然家に帰ってきた理由もアレですが、妹の気持ちを全然理解してない身勝手な辺りが特に。
こんな兄を好きになってしまった妹が不憫でならないです。

個人的にはお気に入りの作家さんなんですが、今回は見事に期待外れだったかなぁ……と言わざるを得ません。

『いもうとかんさつ日記』 kashmir 6P(特にお気に入り)


内容はタイトルそのまんま。
兄からみた妹の様子を淡々とつづってあるだけなんですが、妹の様子が非常に可愛くツボを突いていて、実に面白い。
ラストのオチも秀逸です。

『恥ずかしいけど誠兄ィのためなら!』 大石中二 12P


一週間前に突然兄からおでこにキスされた妹が、もう一度キスしてほしくて頑張ろうとする話。
この本で一番エロい作品です。

妹の努力が微妙にズレているのが笑えます。
「男性の興味を惹くには視覚なんです」というTVの情報を鵜呑みにしてエロ方面で兄の気を惹こうとするのですが、棒アイスを咥えてはだけさせた胸にたらしてみたり、パンチラやパンモロを兄に見せたり、わざと水を被って透け乳首と卑猥な台詞で兄を誘惑してみたり。
兄はそんな妹を見てドキドキしますし、結果的には上手く行くので、無駄な努力というわけではないんですけどね。

ここで大事なのは妹にちゃんと恥じらいがあること。
兄を手に入れる為には手段を選ばずなりふり構わないという積極的な妹も悪くはないですが、やっぱり少しは恥じらいがないと、ビッチっぽく見えてしまいます。
そういう意味で、この作品はしっかり萌えのツボを押さえていると感じました。

妹の恥じらいは大事。
ここテストに出ますので(嘘)覚えておくように。

『お兄様は処女厨!!』 たくじ 10P(お気に入り)


妹に好きな男が出来たと知った兄が、「弱者は常に強者に従わなければならない」という天王院家の家訓を盾に妹に決闘を挑み、恋を諦めさせようとするのだが……という話。

兄がアホ過ぎる(笑)
愛する妹のために皇帝になり、兄妹が結ばれる法を作るまでは格好良いんですが、ラストページの一言で台無し。
でも、こういうアホな兄は嫌いじゃないです。

『萌えもだえ!』 みりの 12P(お気に入り)


兄の前では無愛想でわがままに振舞っているが、内心では……という妹の話。

妹の兄の前での態度と、一人でいる時の態度のギャップが凄まじい。
ベッドの上でばたばた、ゴロゴロと転がりまわりながら「お兄ちゃんカワイイ〜♥」「お兄ちゃん萌え〜」と言ってるあたりはまだいいのですが、兄にBL雑誌を買いにいかせた時の様子を想像して、よだれを垂らしながら「ぐへへ……♥♥」という擬音を発したり見開きで目をハートにしながら「マジ!!お兄ちゃん俺の嫁!!結婚するわ!」と叫ぶところまでいっちゃうとさすがに危ないレベル。
そういうところも愛狂(誤字に非ず)ですけど。

『フレーム・イン』 五十嵐電マ 17P


写真が大好きで写真部に所属している兄と、そんな兄に写真を撮ってもらうのが大好きな妹の話。

兄に写真を撮ってもらいたがる織部さんという美少女が登場し、妹が兄のために身を引こうとする展開になりかけるのですが、織部さんはあくまで当て馬なので問題なし。
この兄、結構ガチです。

『クイズ!妹一人に聞きました!』 巻田佳春 4P


なんか色々おかしい妹のボケに、常識人の兄がツッコむという会話がメインの話。

「兄のくせに可愛い妹の言いたいことがわからんのか!?」
「こっ、この世界に可愛い妹の生スパッツを欲しがらぬ兄というものが存在するとは……」
名(迷)台詞だと思います。

『たぬきねいり』 キダニエル 16P


休みの日に二人で映画を見に出かける兄妹の話。

タイトルにもありますが、狸寝入りをしたり、わざと映画の時間に遅れたりして、何かと兄に構ってもらいたがろうとする妹の策士ぶりが光る。
お姫様抱っこやおんぶ、電車内での「ふたりきり」のシーン、似た容姿に対する嫌悪感などが印象に残る作品。

『たくらんで妹』 位置原光Z 10P(お気に入り)

兄を一人の男性として好きになった妹、兄はいるがそういう対象としては見られないという妹、その2人の友達(軍師)という3人の女子が、兄を落とすにはどうすればいいかを話し合い、実行しようとする話。

妹たちの会話がメインなので、兄は出て来ません。
キャラが立ちまくった3人のボケとツッコミが飛び交う会話が、テンポ良くて面白いです。
ギャグ調とはいえ、ラストで片方の妹に義理オチがあるのが残念ですが……。

まとめ

前巻と同じく作品のクオリティは非常に高い。
バリエーションも豊かで、様々な兄妹のお話が読めます。
サブキャラの一人以外は全て実妹で、義妹がほとんどいないというのも素晴らしい。

ただ、前巻に比べると、やや小粒な作品が増えた印象。
これは作家さんが16人から24人に増えた分、1人当たりのページ数が減って、短い作品が増えたのが原因ではないかと思います。

前巻(256ページ/16人=一人辺り平均16ページ)
今巻(304ページ/24人=一人辺り平均12.6ページ)

……とはいえ、上記に書いたのは些細なこと。
前巻が気に入った人なら問題なく買っていい出来だと思います。

余談

(ここからはかなり個人的な好みや意見になります、それを踏まえてお読みください。純粋に本の感想だけを読みたいという方は、この先を無理に読む必要はありませんので、ここで引き返してくださって結構です。)

僕が凄く気になったのが、本の帯にある「叶わない。だから純愛。」「24人の作家が描く、少女たちの叶わぬ恋の物語」というキャッチコピー。これは個人的に納得いかなかったですね。
兄妹(姉弟)は決して結ばれない、結ばれてはいけないという価値観が、作品内でやけに強調されているのも気になりました。(前巻でも多少そういう傾向はありましたが、今巻は特に目立つ)

実際に数えてみると、明確に兄妹(姉弟)が結ばれないという作品はせいぜい5作品ぐらい。
それ以外は「その後の二人の関係は読む人の想像次第」という感じで終わる作品がほとんど
なのですが、この帯のキャッチコピーや、一部の作品のそういった台詞やモノローグの印象が強すぎるせいか、最初に読んだ時は、妙に悲恋モノが多いという印象を受けました。

僕は「障害を乗り越えて結ばれるという話の方が好き」なので、

「兄妹モノは好きだけど、恋愛や肉体関係まで行っちゃうと引く」
「シスコン兄やブラコン妹は好きだけど、ガチはちょっと……」
「兄妹で恋愛とかあり得ない」
「義妹ならいいけど、実妹はNG」
「やっぱり兄妹はあくまで仲良しのままで終わるのが一番ですよね」

みたいな意見や感想をネットなどで見ると、すごくモヤモヤします。

僕も仲良し兄妹自体は否定しませんし、別に全ての兄妹に恋愛を期待しているわけではありませんが、「兄妹の恋愛が叶わないのは当然」「結ばれないからこそ美しい」みたいな価値観は、どうしても合わないですね。
この本を読んでいて、どうしてもそこだけは気になりました。