『さよなら、いもうと。』の感想

作品情報

トコが死んだのは三日前のことだった。交通事故だった。大型トラックに轢かれたとだけ聞かされた、遺体は見ない方がいいと言われた。そんな死に方だった。そう、そりゃ言葉では分かっている。人間いつか誰だって死ぬってことは。自分であれ、他人であれ、事故なのか、病気なのか、寿命なのか。でも、俺は死ぬってことがまだ良く分かっていなかった。そしてもっと分かっていなかったのは、人が生き返るってことで―。由緒正しい魔法の日記に書かれていた「お兄ちゃんと結婚したい」という言葉のせいなのか、妹―トコは生き返り、また俺と暮らすことになったんだ…。新井輝が描くどこにでもいる普通の兄妹の、普通ではない数日間の物語。それは、ちょっと素敵でちょっと切なく心に染みわたっていく―。

上記はAmazonの商品説明より転載。

1巻完結のライトノベルです。

妹について

主人公の妹。
名前はトココ。皆からはトコと呼ばれている。
一人称は「私」
兄の呼称は「お兄ちゃん」
年齢は兄の3つ下で中学2年生だったが、事故に遭った後は以前より身体がちっちゃくなってしまっていて、小学4年生並の体型に。

交通事故で一度死んだはずが、なぜか生き返って兄の元に帰ってくる。
生前から兄のことが密かに好きで、本気で結婚したいと願っていた。
以前はそうでもなかったが、生き返った後は積極的に兄に甘えてくるように。
性格も子供っぽく無邪気になっている。

「だったら、なでなでして欲しい」


「いいんだよ。私、お兄ちゃんと結婚できるなら他に何もいらないって、そう思ってたし、今も思ってるから」


「わかってるよ。私はお兄ちゃんの味方だよ。いつでも、どこでも」

兄について

主人公。
高校2年生。

母と妹のトコとの三人暮らし。
父は健在だが、兄が小さい頃に母と離婚して家を出ていった。

性格は癖のない普通の常識人。
妹が死んでとても悲しんでいたが、いきなり生き返ってきたうえ、自分を本気で好きだということまで知ってしまい、戸惑っている。

トコの事は妹として普通に好きで、恋愛感情はない。
幼い頃に両親が離婚した経験があるため、家族を大事にする気持ちが強い。
なかなかの良兄。

感想

最初に結論を言うと良作な「兄妹」モノ。
この作者は兄妹というのものを実によくわかってると思いました。
妹が死んでいるということで暗い話を想像してましたが、それほど暗い雰囲気もなく意外に明るかったですね。

特に面白いのが母のシズエ。
かなりの変わり者で、トコが兄と結婚したいということを知っても普通に問題ないと認めてしまい、逆に兄に結婚してあげなさいと勧めます。
けど、決して常識がないわけでも、適当なことを言ってるわけでもないという、なかなか意味深なキャラでした。

もう一人テツマルという男友達がいるんですが、こいつもかなり味のあるキャラです。脇役ではこの二人がお気に入りでした。

妹のトコですが、とても可愛い妹ですね。
一見子供っぽいんですが、実際は結構考え方が大人な面もあって、単なる無邪気キャラではないところが気に入りました。

トコとの出来事は、お風呂場で鉢合わせ、抱きしめる、肩車、一緒に寝る、一緒に出かける、小さい頃の思い出と妹モノの基本は一通り押さえてます。
特に気に入ったシーンが、外食の時に食べてるものを交換するところ。こういう行為はとても兄妹らしいです。まあ、普通「あーん」まではしないですけど。

そしてラストのシーンですが、二人が最後に出した答えが心に残りますね。

妹>お嫁さん

兄妹での恋愛を期待する人には物足りないかもしれませんが、僕は兄妹の強い絆を感じる、いい結末だと思いました。