『虚剣』の感想

作品情報

虚剣 (コバルト文庫)

虚剣 (コバルト文庫)

両親から離れ、妹の琴とともに三河で暮らしていた少年・連也は、剣の才能を見込まれ、尾張新陰流の宗家である父に呼び戻される。妹とのつらい別れを耐え、一心に修業に励んだ彼は、「尾張麒麟児」と言われるほどの剣豪に成長する。やがてその腕が認められ、藩主義直の息子・光友の指南役として江戸に下ることとなった連也だったが、そこには尾張柳生と敵対する江戸柳生の一族がいた…。

上記はAmazonの内容紹介より転載。

1巻完結のライトノベル
本のタイトルは「こけん」と読みます、「きょけん」じゃありません。

妹について

主人公の妹。
名前は琴(こと)。
一人称は「わたし」「琴」
兄の呼称は「お兄さま」「兄さま」
年齢は兄の3つ下の15歳。

兄を一心に慕う健気な妹。
家の事情で兄と引き離された後も手紙をまめに送り、兄との再会を待ち続ける。
自分よりも剣の方を優先している(ように見える)兄に対して拗ねてみせる可愛い一面も。

「必ず戻ってきてくださいまし! 琴は、いつまででも、お待ちしております! お兄さまを待っている妹がここにいるということを、どうか忘れないでくださいまし!」


「お兄さまはいっつもそうだわ。わたしばかりが、お兄さまを好きで。お兄さまはほんとうに剣のことしか考えていらっしゃらない」


「でもね、わたしがいちばん幸せだったのは、三河でお兄さまと暮らしていた頃。まだなぁんにも知らなくて、ただ大好きなお兄さまとずっと一緒にいられた頃よ。それはきっと、ずっと変わらないの」

兄について

尾張柳生家の三男として剣の道を究めんとする天才剣士。
家族構成は父、母(妾)、義母(正妻)、兄二人(異母兄)、妹の琴の七人家族。
妾の子だったので妹の琴とともに本家から遠くに追いやられていたが、剣の才能を見込まれて柳生家に引き取られる。

家の勝手な事情で自分と妹を追い出したり、引き離したりした柳生家を恨んでいる。
最初は力をつけて妹とともに暮らす自由を手に入れるために剣に打ち込んでいくが、いつしか剣の魅力に取り付かれていくことに。
妹の琴に対しての想いは特別で、時には独占欲を見せたり、妹の許婚に嫉妬したりも。

感想

剣を取るか愛を取るか。
これがこの小説のテーマだと思います。
兄妹愛、兄弟愛、親子愛、師弟愛、同性愛、家に対する愛と、この話には様々な愛があるわけですが、それらの間で揺れ動く人々の心情が上手く書けていたと思います。
才能を持つものと持たざるものの悲哀も良かったですね。

特に好きなシーンを挙げると、最初は柳生の人々を拒んでいた主人公が、家族の優しさに触れ心を開いていく辺り。柳生家の兄たちとのやり取り、初めて父に認められて喜ぶ主人公、母に櫛を渡して喜ばれるシーンなどは心温まります。
基本的にこの小説に登場する人物は皆いい人なんですよね。

しかし、この小説のラスト。これが致命的に自分に合わなかった。
主人公の最後の選択自体は、話の流れからしてこれしかないと思うので別に構わないのですが、その見せ方が下手すぎる。
そもそも、主人公がどちらを選ぶかが見え見えすぎます。
あまりに見え見えなのでその裏をかいてくるのかと思ったら、予想通りの展開すぎて……。
ラストの対決もあっさり終わってしまうし、話の締め方もありきたりで残念。

まとめ

何というか画竜点睛を欠いたお話でした。
左門との対決までは本当に面白かったんですけどね、惜しい。

今回妹についてはあまり書いていませんが、つまりそういうことです。
僕は実妹モノとしてこの本を評価してませんし、人に勧めもしません。それぐらいこの小説のラストが嫌いです。
人によってはこの兄を評価する人もいるのでしょうが、僕は嫌いです。