エロゲ業界の衰退に関しては、もういろいろなところで既に語り尽くされていて今更語るまでもないのですが、とりあえず自分の頭の中の整理という意味も込めて記事にしてみます。
衰退の原因
エロゲユーザーの減少
ウインドウズ95の発売からすでに20年以上経過し、かつてのエロゲユーザーが高齢化。仕事や家庭の事情などで、エロゲを卒業する人が増えたにも関わらず、少子高齢化によって若年層の新規ユーザーが減り、その結果、市場規模が縮小している。
コンテンツの多様化
漫画、家庭用ゲーム、ライトノベル、アニメ、同人誌、ソシャゲ、ブラゲ、ニコニコやyoutubeなどの動画サイト、pixiv、まとめサイト。これらの多様なコンテンツによって、今までオタクと呼ばれる人たちが今までエロゲにつぎ込んで来た時間やお金が分散し、エロゲの衰退に繋がっている。
同じエロコンテンツ系に絞っても、成年漫画、18禁同人ゲーム、18禁同人誌、pixiv(18禁)など競合するコンテンツは多い。
エロゲの8800円という価格が高すぎる。
アニメ、ソシャゲ、ブラゲ、動画サイト、pixiv、まとめサイトの閲覧などは基本無料。
同人誌は200円から800円ぐらい。
マンガやラノベなどは400円から900円ぐらい。(電子書籍ならセールを使えばもっと安く手に入れることが可能)
新作の家庭用ゲームは4800円から8800円ぐらい。
エロコンテンツ系なら、
Pixiv(18禁)は無料。
エロ同人誌は200円から800円ぐらい。
成年漫画は800円から1200円ぐらい。
同人ゲームは1000円から3000円ぐらい。
対して、エロゲの新作は基本8800円か9800円。
通販サイトや店舗の値引きなどを利用しても、フルプライスなら7000円が限界と言ったところでしょうか?
中古やダウンロード版、セールなどを利用すればもっと安く購入出来ますが、他のコンテンツに比べて圧倒的に高いです。コストパフォーマンスじゃ、まったく太刀打ち出来ません。
もちろん、エロゲーにもミドルプライス(4800円から6800円)や低価格ソフト(1500円から3000円)などの中、低価格帯のゲームが存在しますが、それでもエロゲが高いという印象は否めません。
エロゲはプレイに時間が掛かり過ぎる。
(時間の数値は分量や内容によって個人差があります、目安程度に考えてください)
アニメは1本5分(5分アニメの場合)から30分。
(1クール単位なら*13で、5分アニメは65分の約1時間、30分アニメは390分で6時間半)
動画サイトは1動画、15秒から30分。
Pixivはチェックに3分から15分。
まとめサイトは3分から15分。
同人誌は1冊、3分から20分。
ソシャゲ、ブラゲは1日、5分から2時間。
漫画は1冊、20分から1時間。
ラノベは1冊、1時間から2時間。
対するエロゲは、低価格ソフトでもコンプに2時間から6時間。
ミドルブライスなら5時間から10時間。
フルプライスなら10時間から30時間。(大作なら50時間から70時間にも)
目当ての女の子だけクリアや、ネットで拾ったセーブデータだけ当てて回想でエロシーンだけ見る、などのプレイスタイルもありますが、他のコンテンツに比べてプレイにかなり時間がかかるのは確かです。
エロゲは空いた時間に手軽にプレイというのが難しい。
昔のように競合コンテンツが少なかった時代はそこまで問題にならなかったのですが、今のようにコンテンツが多様化し、限られた時間しか娯楽に時間を取れない人にとっては、敷居が高いのが現状です。
学園モノ、紙芝居ゲー乱造によるマンネリ化
主人公は学生で、ヒロインは5人。
学園のアイドル的存在の正統派ヒロイン、幼馴染み、ツンデレ系、おっとり系かしっかり系の先輩、年下の後輩。
ゲームはノベル系でクリックして読み進めるだけ。
共通ルートが2時間から4時間ぐらい。いくつかの選択肢を経て、各キャラのルートに分岐。ヒロインの悩みや問題を解決して恋人になったら、Hを何回かしてエンディングへ(プレイ時間は1ルートあたり2時間から5時間ぐらい)。これを5人分繰り返して、総プレイ時間は12時間から30時間ぐらい。
2000年あたりから、15年以上変わらない、学園モノエロゲのテンプレです。
ヒロインはもちろん全員処女じゃなきゃ駄目。うっかり挑戦的な内容を目指し、元彼氏持ちや非処女なんて設定にしたら、怒り狂った一部のユーザーに叩かれます。今では20代の女教師ですら、ユーザーのそれらの反応を恐れて年齢=彼氏無しで処女にされる始末。
当然シナリオの幅は狭められ、ライターは個性や実力を発揮することなど出来ません。
こんなテンプレに沿った内容のゲームをずっとプレイしていたら、当然飽きます。
もちろんエロゲはそんなゲームばかりではありませんが、昔に比べれば多様性が減り、どこかで見たようなキャラや展開ばかりで特徴的なゲームが生まれにくくなっているという印象を受けます。
ゲーム制作費の高額化
anond.hatelabo.jp
news.yahoo.co.jp
昔のエロゲは音声や主題歌やOPムービーなど無かったし、CGも640*480や800*600サイズだったので今ほど塗りの手間もかからなかったのですが、今はフルボイス、主題歌、OPムービー付きは当たり前。CGサイズもワイドになり1280*720、1920*1080とサイズアップし、CG1枚辺りの作業量やコストも増大。立ち絵を動かすスクリプトも複雑になり、ボリュームは増えるばかり。
ただでさえエロゲが売れなくなっているのにコストがどんどん増えていけば、エロゲ制作のリスクは高まる。結果、企業は確実に売り上げが見込める安易な作品ばかり作ることに……。
大手の衰退と人材の流出
Leaf、TYPE-MOON、Keyなど、かつてエロゲで一世を風靡した大手は、既にエロゲ業界からほぼ撤退し、現在は家庭用ゲームやソシャゲ、アニメなどに力を入れています。
1998年頃までは東のelf、西のアリスなどと呼ばれていたこの2社も今では……。アリスソフトの方はまだ頑張っていますが、残念ながらエロゲ業界を主導していた頃の勢いは既にありません。
また人材の流出も深刻で、虚淵玄、丸戸史明、田中ロミオ、麻枝准(敬称略)など、かつてエロゲのライターとして名を上げヒット作を生み出した人物は、軒並みラノベやアニメの脚本の執筆など他業界で活躍しています。
こうした流出に歯止めがかからず、かといって新規で有望なエロゲーブランドやライターさんが出てきたという話も聞かない。何とも深刻な状態です。
発売日延期やバグ、未完成品販売などが珍しくない業界体質
エロゲ業界というのは発売延期が日常茶飯事です。
1度や2度の延期ならともかく、3度、4度も珍しくなく、ソフトによっては10度以上延期されることも……。SNOW、LOVERS~恋に落ちたら…~、サクラノ詩あたりが有名ですが、これらはまだ発売されただけマシ。おまかせ!とらぶる天使に至っては、いまだに発売されていません。
また、ネットでのパッチ配布が容易という事情もあって、細かいバグや誤字、脱字などをパッチで修正するのも当たり前になっています。
悪質なバグとしては、みずいろのハードディスクが初期化されるバグ、おたく☆まっしぐらのパッチですら修正されないバグ、宇宙麻雀と呼ばれた『いただきじゃんがりあん』、『サマーデイズ』のギガパッチなどが有名でしょうか?
更に、定期的に未完成品が発売されたりもします。
『Dies irae』、『Garden』、『魔法少女アイ参』、『銃騎士 Cutie☆Bullet』など。
こういったいい加減なエロゲ業界の体質は昔からたびたびユーザーの間などで問題にされてきて、今ではだいぶ改善されましたが、まったく無くなったわけではありません。こんなことを繰り返してきたエロゲ業界が衰退するのは、ある意味必然と言えるでしょう。
割れの蔓延
www2.accsjp.or.jp
本来ならお金を出して購入しプレイするはずのゲームを無料でダウンロードしてプレイされたら、メーカーやブランドにとってはたまったものじゃありません。
漫画やラノベなども同じように被害に遭っていたようですが、それらと違いエロゲは単価が高いし購入ユーザーの数も全然違う(エロゲの方が規模が小さい)ので、特に被害が大きかったようです。
こうした違法ユーザーの現状に嫌気が差して業界を離れた経営者や、やる気を失ったクリエイターも少なくないと思われます。
今では規制が進み被害が減ったようですが、エロゲ業界の衰退に繋がった一要因であることは間違いないでしょう。
レビューサイトやブログの衰退により、エロゲの情報が手に入りにくい現実
上記の理由で魅力的な作品が減少しエロゲユーザーが減っていけば、当然レビューも減り、その結果レビューサイトやブログも衰退します。購入のための参考になる情報が減り、ますます売り上げの減少に歯止めがかからなくなるという悪循環。
そもそも、新作エロゲの情報というのが手に入りにくい。
僕はTwitterをやっていますけど、フォローしてる人で新作エロゲの話をしている人ってのがほとんどいません。(これは僕のフォローの仕方にも問題があるのかもしれませんが)
エロゲ雑誌も、昔は『PC Angel』や『E-LOGIN』などを毎月買って新作エロゲの情報収集をし、良さ気なゲームを見つけたら買うというサイクルがあったのですが、ネットが普及するといつの間にか買わなくなり、気がつけば休刊してましたね。
『TECH GIAN』『BugBug』『メガストア』などはいまだにエロゲ雑誌として頑張っていますが、値段が軒並み1200円を超えているとなると毎月買う気にはとてもなれません。(昔は700円から1000円ぐらいだったのですが……)
じゃあ、ネットで公式サイトや情報サイトをチェックをすればいいとなるのですが、個人的には、そのチェック自体がもはや面倒くさい。
以前はお気に入りのブランドというのがあって、そこの公式サイトを定期的にチェックしていましたが、一時期仕事が忙しくなってからはエロゲを全くプレイしなくなったので、情報にもかなり疎くなっています。そもそも、今のエロゲユーザーって新作の情報をどこで手に入れているんでしょうか?
ErogameScape -エロゲー批評空間-もガックリと投稿数が減り、以前に比べるとあまり役に立たなくなっているように感じます。
まとめ
もう、書いてて段々鬱になってくるぐらい酷い状況ですね。
正直匙を投げたくなるレベルです。
エロゲ業界が衰退していると言われ始めてから数年以上経過していますが、状況はどんどん悪くなるばかりで、明るい材料がまったく見えません。
とはいえ、このままエロゲ業界が衰退していくのを黙って見ているのも忍びないので、次回の記事ではエロゲ業界の再生について真面目に考えてみます。
2018年5月9日追記
データ元
---法人概要/審査実績--- EOCS/一般社団法人コンピュータソフトウェア倫理機構オフィシャルウェブサイトより。
さすがにエロゲ業界やユーザーも危機感を持ったのか、一応、底は脱したようです。
まだまだ、油断は出来ませんが。
2018年12月30日追記
※2016年8月より、アイドルビデオ、同9月より、着エロビデオを審査開始。
2016年度、1,459本(ゲーム739本・ビデオパッケージ720本)
2017年度、1,842本(ゲーム719本・ビデオパッケージ1,123本)
いつの間にか注記がついています。
審査本数が増えたのはアイドルビデオや着エロビデオの影響で、エロゲ自体は減っていますね……。