神蛇 玲 『コウミガミ~嘆き嗤う蛇神、妹なる者々が紡ぎし口碑~』(キモウト系・男装、ボクっ娘、健気)

作品情報

タイトル:コウミガミ~嘆き嗤う蛇神、妹なる者々が紡ぎし口碑~
ブランド:BLACK Cyc 作品ページ
ジャンル:ネオフォークロアADV
発売日:2017年1月27日
販売価格:豪華版10,800円(税別)、通常版8,800円(税別)

あらすじ

公式サイトの物語参照。

システム

クリックで読み進めていき、選んだ選択肢によってシナリオ展開が変わるのですが、ヒロインの好感度だけでなく神の怒りゲージというのがあるのが特徴。ただし、実際は攻略に関係ない、ほとんど意味のないパラメーターなので、おそらく開発途中に仕様変更でもあったのでしょう……。

画面サイズは1280*720のワイド。
システムの設定項目はかなり少なめ。
最低限の項目は設定できますが、クリックしても音声継続の項目が無いのが痛い。
システム設定のボイスが結構充実していて、玲のボイス多めなのがちょっぴり嬉しいです。

ギャラリーやセーブデータのページを選ぶ際もいちいち矢印をクリックして1ページずつページ送りしないといけないのが面倒。ページに数字を割り振って、数字をクリックすればそのページに移動できるようにすればいいのにと思いました。

CG枚数は91枚。
ただし、作中に登場する小物や1.10で追加されるコンテンツも含まれるので、それを除くと70枚。玲の登場するCGは35枚と多いですが、零佳さんとセットだったり、陵辱シーンが大半で、そういうのがない普通の玲のCGは13枚程度。

シーン鑑賞は36ですが、Hシーン以外の単なるイベントやED鑑賞も含まれるので、実際のHシーンはもっと少ないです。これもキャラごととかHシーンごとに分かれたりはしてないので、非常に使いづらい……。

音楽鑑賞モードも一応あるのですが、ただ1曲ずつ再生できるだけで、曲を順番に再生する機能すらないですし、下の方の曲を聴くにはこれまた矢印をいちいちクリックしないとたどり着けない始末。

こんな感じで、総じてシステムは使いづらいです。
もうちょっと何とかならなかったんですかねぇ……。

Ver1.10アップデータパッチがあります。
Galleryに肉塊のCGのモザイク無しバージョン(モノクロ)が追加されますが、一体誰得なんでしょうか……。

妹について

名前 年齢
神蛇 玲(かんだ れい/あきら) 不明
一人称 兄呼称
ぼく、わたし にいさま
身長 体重 スリーサイズ
155cm 不明 不明
CV 原画 シナリオ
赤井リア 吉澤 友章 芦澤 夜呼夜
備考
男装妹、1月27日生まれ、A型

主人公の妹。
普段は元気で明るいが、情緒不安定なところがあり、やけに強情だったり、急に後ろ向きになったりと結構面倒くさい性格。

兄のことを男性として慕っていて、兄妹婚を繰り返してきた島の伝承に則り兄妹で結ばれたいと願っているが、子供の頃に兄に拒絶されたことや、母親が反対していることもあって女性であり妹である「れい」を否定し、男装をして「あきら」と名乗り弟として振る舞っている。

玲の実義に関しては、実の妹という台詞もありますし、物語の設定からしても血の繋がった妹以外あり得ないので実妹と見て間違いないです。

「いいんだ。ぼく、にいさまといっしょなら何でもできるよ」


「たったひとりのすきなひとと、ひとつになるのがどうしてわるいことなの」


「ずっと……そうしてほしかったのかも。ぼくね、この身体ににいさまとの証が、ちゃんとほしいよ」

兄について

主人公。(立ち絵とボイスあり)
巳重(みかさ)神社の宮司。年齢は二十歳くらい?

家族構成は母と妹。
父親は流行病で既に亡くなっている。
ヒステリックで自分勝手な母親の影響で、女性不信の気がある。

優柔不断で、流されやすい性格。
料理は下手でお茶も自分で淹れられないレベル。お酒にも弱いです。
昔、母親の差し金で私娼窟(現代の風俗みたいなもの)に行かされ、女を抱かされたので非童貞。

玲のことは妹として大事に思っているが、最近は女性として意識してしまい、そんな自分に戸惑っている。

ハッキリ言って褒めるところがまったく見つからないダメ兄。
シーンによっては、妹に対し、かなり酷い態度を取ったり、言葉を浴びせます。
選択肢によっては、玲の髪を掴んで膝蹴りをぶち込むことがあるのですが、このシーンを見たときは心底ドン引きしました。

なんで玲はこんな兄を好きになったのか理解に苦しみます。
玲ルートや零佳ルートの最後では、今までの自分の行いを反省し、「そこそこ」格好良いところを見せるのがせめてもの救い。

シナリオ

最初に10分ほどのプロローグがあります。
兄妹の父親が幼い二人にこの島に伝わる言い伝えを話すのですが、父親の話を聞いて兄のお嫁さんになりたいと言い出す妹に対し、兄はそっけない態度。ここの兄の妹に対する態度が、年相応に子供っぽくて微笑ましいです。

本編は共通ルートが1時間ぐらい。最初の選択肢で玲ルートと零佳ルートに分岐します。といっても、両ルートの大きな流れは共通で、途中のイベントが玲寄りになるか零佳寄りになるかという違いしかありません。片方のルートをクリアしてしまえばもう片方の大半は既読スキップが使えるので、シナリオのボリュームは少なめ。6~8時間もあればコンプできるかと思います。(おみくじ以外は)

シナリオの出来は微妙です。
間違っても『痕』や『月姫』のような伝奇モノの傑作レベルを期待していけません。それほど深い内容があるわけでもないですし、あっと驚くような仕掛けや伏線もないです。

(ここからネタバレあります。未プレイの方はお気をつけ下さい)




九鬼家側のお話、柳本と妹の話、島に流された神蛇家の始祖になった兄妹の話など、面白そうなネタは一杯あるはずなんですが、そのあたりは全然語られないか、断片的にしか触れられないので消化不良。

唯一良かったのが、玲ルートの終盤で覚醒する零佳さんの場面ですかね。神様相手にビンタをぶちかまし、説教をする零佳さんは格好良かったです。

兄の格好良いところ? うん、まあ……なんか見せ場あったっけ?
ヘタレなところしか思い出せません。

妹の玲についても、手がかかるというか、悪い意味で面倒くさいキャラなので、萌えづらい。玲ルートではこれといった見せ場がないですし、BADENDでは、急に豹変して零佳さんや兄に対して酷い言動をしたりするので、どうにも印象が悪いです。

鏡佳について

徹頭徹尾どうしようもないクズ母親。本当に良いところがまったくないです。これで、昔は優しかったとか、夫が亡くなってからおかしくなってしまったとか、そういう理由があるならまだ同情の余地もあるのですが、そういうシーンは一切無し。擁護のしようがないほどのクズで、ただただ人を不快にさせる存在です。

BADENDでは鏡佳との本番もありますが、陵辱気味の内容でまったく嬉しくないです。

コウミガミについて

鏡佳のお腹にいる赤ちゃんの肉体を器にして、現世に顕現した蛇神(じゃしん)。なので、身体は兄と玲の妹です。ただし、父親は間男なので異父妹になります。

寂しがり屋のヤンデレ蛇神様で、主人公たちの父の代で兄妹婚のしきたりが崩れたのにブチ切れ、なんとか兄妹を番わせようと試練を与えてくる。自分の意に沿わないことをしたものには厳しく残酷だが、ちゃんと敬ってあげると意外にチョロい。玲ルートの終盤ではいきなり幼女キャラとなって「ふぇぇ」とか言い出します。

一応コウミガミとの本番もありますが、おかしくなってしまった主人公が無理矢理犯したりするだけで、らぶらぶえっちなどは存在しません。(玲ルート終盤の幼女コウミガミは可愛いので、ちょっともったいない気も)

コウミガミに乗っ取られてしまいましたが、本来産まれるはずだった妹の精神もちゃんと存在していて、そちらの兄呼称は「おにいちゃん」コウミガミの見せる幻の中や玲と零佳ルートの終盤で、少しだけ登場します。(イラストは無し)ちなみに本当の妹の精神バージョンのコウミガミとのHはないです。





(ネタバレここまで)

親バレ、周りバレ

ネタバレなので隠します。構わない人は反転して読んでください。
元々兄妹婚がしきたりの島が舞台ではありますが、母親は明確に反対しています。ただ、玲と結ばれた後に母親にそれがバレるようなシーンはないです。柳本にはバレますが、特に反対は無し。零佳さんも同様です。

禁忌、背徳描写

それなりにあります。
玲は乗り気ですが、兄は兄妹で結ばれるのはおかしいという考えの持ち主なので玲と関係するのを躊躇いますし、手を出してしまった後も悩みます。ただ、兄は煮えきらずグダグダ悩むタイプなので、見ててイライラしますね。

音楽について

video.fc2.com
デモムービーでも使われている「Variant」がお気に入り。
最近は特典のサントラを通勤時間の車内でヘビロテしています。

他にも日常系の「innocent」、神秘的な「清晨」なども良かったですね。この作品ほとんど褒めるところがないんですが、音楽は数少ない褒められるところです。

特典について

僕が買った豪華版には「公式設定資料集」「BLACK Cyc 2017年描き下ろしカレンダー」が付いてきました。あと、オフィシャル通販で購入したので、サントラも。
ちなみに「Variant」のfull versionはこのサントラでしか聴けないです。個人的には、これだけでも買った価値があったなと思っています。歌詞はサントラではなく設定資料集の方に載っています。豪華版を買わないと歌詞は見られないので注意。

設定資料集は、キャラのラフが見られるのですが、主人公である丞の決定稿は凛々しくていいですね。この凛々しい兄が格好良く活躍する姿が見たかった。なんで本編はあんな情けない馬面野郎なのか……。

あと本編ではなぜか使われてない玲のマント姿の立ち絵も見られます。豪華版のジャケットイラストでもマントを身につけた凛々しい玲の姿が見られますが、なんでこれが本編で使われなかったんですかねぇ……もったいない。

おそらくコンプできる人はほぼいないと思われるおみくじメッセージの一覧も貴重かも。丞だけ大吉がないのは、わざとでしょうか(笑)

まとめ

ぶっちゃけ音楽以外褒めるところがほとんどない。

伝奇モノとしては微妙ですし、妹の玲はお世辞にも可愛いとは言えません。主人公である兄はヘタレで見ててイライラするし、選択肢によっては妹が酷い目に遭うし、BADENDは本当に悲惨で気分が悪くなるし、グロもキツイしと、とても人にお勧めできるような作品ではないです。

まぁ、文句ばかり言ってますが、実際プレイしている間はそれなりに楽しめましたし、たまにはこういう作品も悪くないかなと思いました。「2000年代前半の頃のエロゲ」の雰囲気を感じさせる作風なので、ノスタルジックな気分に浸れます。テンプレ学園モノエロゲに飽きたら口直しにプレイしてみるのも一興かと。
……楽しめるかどうかは保証しませんけどね。

今の時代に伝奇モノを出すチャレンジ精神だけは褒めたい
お気に入り度(10点満点) 7

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おまけ

攻略記事を書きました。
これからプレイする人は参考にどうぞ。