作品情報
――今日から再び「お兄ちゃん」です。妹がいることは知っていた、実感はなくただ知っていただけ。2年付きあった彼女と別れ、何となく気分が乗らない、そんな日に妹に出会った。彼女と別れたモヤモヤは、妹に見せた失態で、吹き飛んだ。みんなが俺のことを「お兄ちゃん」という……。妹って何だ。吉田基已の傑作ラブストーリー、新装版にて刊行開始!
上記はAmazonの内容紹介より転載。
一般漫画。全5巻。
妹について
主人公の妹。
名前は小日向 七夏(こひなた なのか)。
兄の13歳下の15歳で、高校1年生(初登場時)。
性格は純粋で人懐っこい。
久しぶりに会った兄にもすぐに懐いて、慕ってくる。
中学生の頃に好きだった同級生に告白したが、付き合っている人がいるからということで振られている。
一人称は「私」
兄呼称は「お兄ちゃん」「耕四郎さん」「こうしろうさん」「あなた(兄と知らなかった時)」
実の妹という表現があるので実妹は確定。
兄について
主人公。
名前は佐伯 耕四郎(さえき こうしろう)。
兄は父親の姓、妹は母親の姓を名乗っているので、名字が違う。
社会人の28歳(初登場時)で、結婚相談所で働いている。
喫煙者。
家族構成は父親との2人家族。
妹の七夏が2歳の時に親が離婚。
離婚の際に七夏は母親に引き取られたので、妹とは10何年も会っていなかったが、高校進学を期に七夏が父親と兄の元にやってきて一緒に暮らすことになる。
母親とはちょくちょく会ったりしていて、仲は悪くない。
2年付き合った彼女がいたが、冒頭で振られている。
感想
この作品は兄妹描写が非常に良いですね。
久しぶりに再会した妹に戸惑う兄の描写が特に良いです。
職場にいきなり来た七夏に対し、周りに恥ずかしくなって怒鳴りつけるところ。
兄に洗濯物の下着を見られるのが恥ずかしくて自分で干すところ。
作者は女性で、実際に兄がいるらしく、こういった描写はやけにリアルです。
最初の頃は単なる微笑ましい兄妹関係だったのですが、1巻のラストに衝撃のシーンが。
脱衣所で見つけた高校生の妹の下着(ブラジャー)をクンクンする兄(社会人28歳)。
その事を思い出してオナニーする兄。
ハッキリ言ってドン引きですが、このシーンはまだ笑えるから良いですね。
ちなみに、この出来事をきっかけに兄は妹を意識しだします。
七夏の方もお兄ちゃんに懐いていて、たまに喧嘩はしますが、傍からみたらどう見てもブラコン。
兄妹二人で夏祭りに出かけたり、買い物に付き合ったりと微笑ましい兄妹関係が続いていたのですが、そんなある日ちょっとした事件が発生。
兄がうっかり七夏のことをかわいいと言ってしまい、これをきっかけに七夏の方も兄を意識し始めます。
七夏もハッキリと兄を好きだと自覚し、兄妹がお互いを意識しだした辺りから話が一気に面白くなります。
3巻ではお互いの気持ちを確かめあって両想いになるのですが、やはり兄妹ということが問題になり、一旦離れることに。
(注意:この辺からネタバレが酷くなります。未読の人はお気をつけください)
4巻では兄の七夏への気持ちを千鳥(兄の同僚)に知られることになるんですが、
きっつい……でも正論ではある。
最近の兄妹モノは、二人の関係をあっさり認められる事が多くて、なかなかこういう事を言ってくれる人はいないですよね。
こういった現実をしっかり描写するのも、この作品の特徴。
4巻では、兄妹は結婚出来ないという事実を嫌になるぐらい突きつけてきます。
そしていよいよラストの5巻。
この作品が雑誌で連載されていたのは2001年から2004年のソフ倫規制もあった頃で、当時はエロゲですら実兄妹の恋愛を扱った作品なんてほとんど無い時代。
僕も3巻が発売された辺りでこの作品を知って、リアルタイムで雑誌の連載を読んでいました。
で、最後は結局普通の兄と妹に戻る展開だと思っていたんですが、まさかの兄妹でのセックスシーンが。
これは当時の自分には、本当に衝撃的でしたね。
なんだかんだ言って二人の関係はプラトニックで終わると思ってましたから、完全な不意打ちでした。
それと同時に二人に失望しましたね。
「えーっ、なんでヤっちゃうの? この台詞は何だったの?」と。
当時の僕には二人の気持ちがまったく理解できず、あのセックスシーンには違和感や嫌悪感が先に立ちました。将来結婚も出来ないし、両親の期待や信頼を裏切ってセックスした二人が、なにか汚いものに見えたりもしました。
いやー、当時の自分は純粋だったなぁ……。
でも、新装版で14年ぶりに改めて読み返してみると、そういう気持ちは全然わかなかったですね。むしろ、将来が茨の道とわかっていながら、自分たちの気持ちを貫く二人に尊敬の念すら抱きます。
ここでの「嘘じゃないこと」というのは、「七夏を恋しいと思う気持ち」でしょう。
ここからの一連のシーンも当時はよくわからなかったのですが、今ならわかります。
さきほどのすれ違いを含め、手が離れてしまったことに二人の将来を重ね合わせて不安な表情を見せる七夏。
1話では誰かを恋しいと思う気持ちがわからず泣いていた兄が、七夏に恋することで恋しいという気持ちを生まれて初めて知り、まっすぐに好きだと言えるようになりました。
そんな兄の「好きだよ」という言葉が七夏の感じた不安を吹き飛ばし、最後の七夏の笑顔を引き出した事によって、二人の明るい未来を感じさせている、という素晴らしいシーンです。
(ネタバレここまで)
まとめ
今思うと、この作品はちょっと時代が早すぎましたね。
あの時代に兄妹恋愛を真正面からリアルに描いたのは凄かったのですが、当時はあの終わり方について、僕を含め拒否反応を示す人も多かったです。
これについては俺妹が完結した2013年でもそうでしたが(賛否両論凄かった……)、2018年の今は時代もだいぶ変わり、この手の作品に対するそういう声も少なくなってきたように思います(もちろん否定的な人もまだまだいますが)。
この記事を書くまでは『恋風』という作品に対する僕の評価ってかなり低かったんですが、感想の欄で書いたように、改めて読み返してみると評価ががらっと変わりましたね。
この作品を読んだ当時は、まだ実妹スレも出来たばかり。
地底天使も知らなかった頃で、実妹属性に目覚める前でしたからね。
14年間で、僕の好みや感性もかなり変わったようです。
兄の耕四郎も、昔は冴えないおっさんにしか見えなくて、七夏はなんでこんなのを好きになったのか理解不能でしたが、今では不器用なところがなんか可愛く見えるぐらいです(下着クンクンは今でもどうかと思いますが(笑))。
七夏の可愛らしさは今も昔も変わりませんが、当時は4巻辺りから急に大人っぽくなった七夏が別人みたいで、何となく拒否反応のようなものがあったのですが、今はそういうのも無いですね。
少し古い作品ですが、今読んでも十分面白いので、機会があったらぜひ読んでみてください。
特に、最近の作品に背徳感が足りないと感じている人にお勧めです。