『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の伏線を改めて読み解き、「完全なる桐乃エンド」を考察してみた(11巻編、下)

注意

この記事はライトノベル俺の妹がこんなに可愛いわけがない』を全巻読んでいることを前提に書いています。
おもいっきりネタバレがありますので、未読の方はお気をつけください。

10~12巻の出来事と時間軸

10~12巻の時系列はバラバラで理解しづらいので、3巻分をまとめています。

日付 出来事 原作
10月上旬のある日 両親に桐乃との仲を疑われ、一人暮らしをすることになる 10巻、第一章
翌日の放課後 御鏡と赤城に一人暮らしについて話す 10巻、第一章
上記の2日後 京介のアパートに桐乃がやってきて、冷蔵庫と『押しかけ妹妻』をもらい、賭けをする 10巻、第二章
上記の翌日の放課後 加奈子がアパートにやってきて、桐乃と兄妹ということがバレる 10巻、第二章
上記の翌朝 あやせと黒猫がアパートにやってきて、黒猫に自分の決断を伝える 10巻、第二章
同日放課後 親父がアパートにやってきて、『押しかけ妹妻』を持ってるのがバレる 10巻、第二章
上記後の休日 京介のアパートで引越し祝いパーティ、あやせが京介のお世話をすることに 10巻、第三章
上記の翌日の放課後 あやせに桐乃がフィギュアや妹エロゲーを好きな理由について聞かれる 10巻、第三章
上記の後日の放課後 雨の日に、日向ちゃんが様子を見にやってくる 10巻、第三章
上記の後日の深夜 あやせのファンブログに異変が起こる 10巻、第三章
同日 ブログの異変について赤城や御鏡に相談 10巻、第四章
上記の翌日の放課後 女装した御鏡に遭遇 10巻、第四章
上記の後日の放課後 あやせにエッチな本を隠していたのがバレる 12巻、第二章
上記の後日の土曜日 あやせに『おしかけ妹妻』を隠していたのがバレる 12巻、第二章
上記の翌日の日曜日 アパートに加奈子が差し入れに来て、あやせとの仲を誤解されそうになる 12巻、第二章
上記の翌日の放課後 あやせと買い物に出かけ、フェイトさんから赤ちゃんを預かる 12巻、第二章
11月1日 アパートであやせに踏まれている黒猫を目撃する 10巻、第四章
11月3日 模試当日、あやせのストーカー問題解決 10巻、第四章
同日試験終了後 桐乃と一緒に病院に行く 10巻、第四章
11月のある日 麻奈実と加奈子の話し合い 11巻、エピローグ
上記以降のある日 桐乃が黒猫と沙織に、卒業したら海外に行くことを告げる 11巻、俺の妹がこんなに可愛いわけがない12 プロローグ
上記の翌日 桐乃、黒猫、あやせの話し合い 11巻、俺の妹がこんなに可愛いわけがない12 プロローグ
12月の初め 模試結果発表、京介がA判定を取って実家に戻れることに 10巻、第四章
上記後の休日 京介が一人暮らしを終えて帰宅、部屋が桐乃の私物だらけになっている 10巻、第四章
12月上旬 田村家で麻奈実、京介、桐乃の話し合い、冷戦の真相が明かされる 11巻、第一~四章
上記の後日 京介が櫻井と再会、好きなやつがいると櫻井の告白を断り、自分から告白すると決心する 11巻、第四章
12月のある日(上記のすぐ後) 桐乃をクリスマスデートに誘う 12巻、第一章
上記の後日 アパートの前で、あやせに告白されて断る 10巻、第四章と12巻、第二章
12月20日 京介が黒猫に正式に自分の気持ちを伝え、黒猫を振る 12巻、第三章
12月24日 京介がクリスマスデートで桐乃に告白、高坂兄妹が恋人同士になる 12巻、第一、三、四章
12月25日 黒猫と沙織に兄妹で付き合うことになったと話す、ゲーセンで櫻井に会う 12巻、第四章
とある休日の日の朝 起きたら桐乃が隣で寝ていて、びっくりする 12巻、第五章
正月を過ぎた頃 UDXのライブで加奈子に告白されて、断る 12巻、第四章
とある休日の日の午前中 桐乃と『恋人の儀式』をする 12巻、第五章
卒業式の日 麻奈実と対決、桐乃と結婚式を挙げ、約束通り兄妹に戻る 12巻、第五章
春休み 桐乃と秋葉原に行き、指輪を買ってあげたあとにキスをする 12巻、最終章

第三章

P.145
「さーって、これからあんたの、恥ずかしい話の続きをするわけだけど。その前に、代金ってか、あたしの恥ずかしい話も、ひとつしたげる」
「……お、おまえの恥ずかしい話だと?」
「うん。あんたさ、『三年前』の自分のこと、痛々しくてカッコ悪いって自嘲してたけど――」


『お兄ちゃんっ子』だった当時のあたしは、いつだって一生懸命な兄貴のこと……カッコいいって思ってたよ」

桐乃の貴重なデレシーン。
ところで京介お兄ちゃんは、妹の恥ずかしい話って聞いて何を想像したんですかね(笑)

P.154
「そそ。いまねー、あたし『シスゲー』にハマってるんだ」

櫻井のシスゲーに関する伏線。

P.163-164
「ねぇ、こーさか」
「なに?」
「おっぱい触らせてあげるから、帰ってくんない?」
(中略)
「ふん……櫻井、そんな誘惑に、この俺様が乗るとでも思ったのか?」
「いま乗りそうだったじゃん」
「な、なことねーよ!」
偽乳なんぞ触らせてもらっても、なんの感慨も湧かないって。マジでマジで。

京介も普通の男子高校生なので、おっぱいには興味津々ですよね。
瀬菜にはおっぱい揉むぞとセクハラしまくるし、黒猫と付き合った時も触りたそうでしたし。

P.170
「というわけで、櫻井。ここはひとつ自分がかぐや姫になったと思って、なんなりと言ってみな」
『今の俺』が間違っても言わないだろう台詞を、『このときの俺』は口にした。

『今の京介』は自分がなんでもできるスーパーマンではないと知っているので、こんな無責任な台詞は言いませんが、『中学時代の京介』はまだそういった自覚がないので、こういう台詞を平気で口にできるわけですね。

P.172
「そーそー、ラブリーマイエンジェル『きょうちゃん』を、そんなのと一緒にしないでよ」

京介がよく口にするラブリーマイエンジェルあやせたんという言葉は、櫻井の影響っぽいですね。

P.175
「うぐっ!?」
……完っ全に、資金オーバーを起こしている。妹の貯金箱を割っても足りん。
中学生ってのは、常に資金面で大きな制約を課されている生き物なのだ。

小学生の妹のお金をアテにする京介。
この頃の京介なら、「ちゃんと後で返してやるから」と言って、嫌がる桐乃から強引に貯金箱を奪ってお金を取り出しそう。
まぁ、この年頃のお兄ちゃんにとって、妹なんてそんなものでしょうが。

P.176
「この世にはなぁ、『仕方ない』で済ませていいことなんざ一個だってねーんだよ!」
宣言した。
「櫻井! 俺に任せろ!」
それは、俺の一番好きな、決め台詞だった。

この決め台詞は、アニメ俺妹の二期第13話の作者回でも効果的に使われていましたね。

P.177
「うん、三年前、超ドヤ顔で自慢された。あんときのあんた『桐乃、おまえの偉大なる兄は、これからクラスメイトの運命を救いに行くんだぜ!』とか意味分かんないこと言って、平日の朝から自転車で飛び出してったよね」
(中略)
「まさかあんなにカッコいい台詞とともに出かけていった『頼れる兄貴』が、実はぱんつを買いに行っていたなんてねー」
知りたくなかった、と、無表情で呟く桐乃。

カッコいい台詞かな? まぁ、(お兄ちゃん大好きな)桐乃にとってはそうなんでしょう。
『頼れる兄貴』とさりげなく京介のこと褒めてますし。

P.182
『最初から学校に行くつもりだった』という櫻井の妄言は、すぐに忘れてしまった。
だってそうだろう? この短い期間で、櫻井が『学校に行きたくなる』ような『超凄いきっかけ』があったなんて、どう考えても思えないっつーの。

自分の行動が櫻井の気持ちに変化を与えていたことに気づかない京介。
相変わらず、自分のことには鈍いですね。

P.190
もしかすると――今後口に出すことはないだろうが――
俺が人を助けるのは、麻奈実にこうやって褒められたいからなのかも。

この頃の京介は、明らかに麻奈実に好意を持っていますね。

P.191-193
「けど、最近はいままでとは、違う気がするんだ」
「ほう、どう違うってんだ?」
「上手く言えないけど……なんだか、焦ってるみたい」
「――――」
俺は、とっさに反論できなかった。麻奈実に言われたことが図星だったから――じゃない。
自分でも意識していなかった部分に、しっくり来てしまったからだ。
(中略)
「……おまえだから正直に言っちゃうけど、まぁ、なんか、結構前から……もやもやしてんのはあったんだよね。俺、もっと頑張らなきゃやべーんじゃねーのみたいなさ」
いつからだっただろーな。小学生時代は、そんなことなかったと思うんだが。
(中略)
本当はこの時点で、気付いておくべきだったんだろうな。
小学校を卒業してから、ロックを助けたあの時から二年と半年が過ぎて。
――もっともっと頑張らないと――
俺の熱意はいまだその勢いを弱めることなく、少しずつ空転を始めていた。

この焦りは自分が特別な人間じゃないということに気づき始めた焦りもあるんでしょうが、努力を始めた桐乃に追いつかれそうな焦りもあったのではないかと僕は考えます。京介からすると、兄が妹なんかに負けるわけにはいかない、妹には自分の格好良いところだけを見せたい、弱みなんか絶対に見せたくないという気持ちが心のどこかにあったのでしょう。P.249にそれを匂わせる麻奈実との会話があります。

P.191-192
「おいおい、はぐらかすなよ。不安じゃねぇか」
嘘だ。麻奈実と喋っているという時点で、俺は常に安心している。ぶっちゃけた話、きっと死に際でもそうだろう。きっとそれは、長い付き合いだからってだけじゃないんだろうな。
麻奈実だから、俺は安心できるのだ。他のやつが相手なら、むしろ相手のことが好きであればあるほど、弱さを見せず、強がってしまうだろう。

>他のやつが相手なら、むしろ相手のことが好きであればあるほど、弱さを見せず、強がってしまうだろう。
あやせや黒猫、桐乃などに対しては、京介はめったに弱みを見せず、強がっていましたね。だからこそ、8巻で黒猫に振られた時に、桐乃に見せたあの弱さが意味を持ってきます。あそこで麻奈実ではなく桐乃を選び、弱みを見せた時点で、京介にとってはハッキリと桐乃>麻奈実になったのでしょう。

P.195
「い、委員長! これは心の底からのお願いなんだけど、しおりの紙面に自分の写真を印刷するのはもうやめておいた方がいいよ!」
「え? なんで?」
「分かってないっ!? 去年の臨海学校んときのしおり、超不評だったじゃん! しおりはオメーの水着グラビア集じゃねぇ――から!」
「俺の家族には好評だったぞ」
「知るか!」

夏コミでマスケラのコスプレ写真を同人誌に載せて、ネットで晒された時のことを考えると、この頃からまるで成長していない……。家族には好評だったということは、桐乃も大喜びだったのでしょう。

P.205
「なんか農作業中にこけて怪我したらしくてよー、今年の夏休みは行かなかったんだよね。だからできれば秋のうちに行っておきたいわけよ」

のちの悲劇のフラグ。

P.206
その辺、同じお婆ちゃんでも麻奈実とは全然違う、ウチのばーちゃんは基本孫煩悩で、俺や妹にはめちゃくちゃ優しいのだが、キレやすさと理不尽さがマジぱない。
なんでウチの爺ちゃんは、あんな理不尽な女と結婚したのだろうと、常々不思議に思っている。ドMなのだろうか?
爺ちゃん曰く『いずれオマエにも分かる』――不吉な予言である。

高坂家はドMの家系らしいです。
考えてみると母親である佳乃さんも理不尽さやウザさは桐乃並、そんな人と結婚した大介さんはひょっとして……。
京介が桐乃を選ぶのはある意味必然だったということですね。麻奈実や黒猫のような尽くすタイプでは、ドMな京介を満足させることはできなかったと……。あやせや桐乃のような性格の方が、京介の好みには合っているのでしょう。

P.208-209
「高校生になってからも、こうやって一緒にいようね」
「そーだな。なんだかんだ言って、十年くらいこんな感じだったし――なんかもう一生こんな感じなのかもって思うよ」
「そうかな? そう思う?」
「おう」
「……そっかぁ」
ふんわりと笑う。
そういうのも、いいかもね」

ここで納得して、京介と高校生になってもゆるゆるな関係で満足してしまったのが、麻奈実の敗因でしたね。

P.209-210
「もしかしたら、普通ってのは、凄いことなのかもしれないな」
ふと、口に出してしまう。相手にとっちゃ意味の分からない呟きだ。
当然首をかしげられると思っていたのだが、違った。
「なら――きょうちゃんも一緒にやらない?」
「はは」
それもいいかも、と、思ってしまうのは、『今だから』だろうか。
それとも……。
「そのうちな。もうちょい頑張ってみるわ」
何を? 自分でも、よく分からない。分からないが――小学校を卒業したころから、ずっと胸にわだかまっているモヤモヤを、どうにかしなけりゃいけないと思っていた。
以前よりも強く、そう思っていた。きっと、自覚してしまったから。
「そっか。……でもむりしないでね」
「ああ」
「わたしはいつだって、きょうちゃんの味方だよ」
言われるまでもない。
「――知ってるよ。ずっと昔から」

京介は、この時点で心のどこかに「自分が特別な存在ではない」という自覚があり、それに気づかないふりをしているのでしょう。そして、麻奈実もそれに気づいていて、普通になるように、さりげなく誘導しています。京介の堕落への道は、もう始まっていますね。

P.212
――そんなこともあったっけ。
なんで陸上部入らなかったのって――中学に上がったときの俺は、別にそんな足速くなかったからだよ。
足が速かったのは――小学校まで。
勉強をたいして頑張らなくても百点連発当然だったのも――小学校までだ。
いまでもまぁ、成績の上では優等生だと思うけどな。
「それこそ普通だ」
妹の前で認められなかったことを、今日の俺は、自然と認めることができていた。
「麻奈実のおかげかもな……けど……やっぱもうちょい頑張んねーと」

着々と堕落へのフラグが立っていますね。

P.222
「キミってやつは、ほんと強引だよね。田村ちゃんに怒られてもしらないぞ」
「なんでそこで麻奈実が出てくるんだよ」
別にあいつが怒っても怖くはないけど。

櫻井が麻奈実の気持ちに気づいているという伏線と麻奈実の怒りフラグ。

P.224-225
「――キミって、ほんっとウザい」


「あん?」
期待していたのとは逆の台詞が来たので、びくっとした。
櫻井は、にやけ顔を俺に向けて、
「んー、ひひひ、なぁに? 超いー景色! 感動した! とでも言ってほしかったのん?」
(中略)
「その熱意はみとめるけどね。キミに色々してもらった全員が全員、感謝したり~、感動したり~するわけじゃないってことは、覚えておいた方がいーよ。秋美ちゃんからの、これは忠告」
櫻井からの口調はふざけていたが、彼女が本心で喋っているんだなというのは伝わってきた。
覚悟はしていたが……。いや、ちょっと、かなり、きついぞ。

これはもちろん櫻井の照れ隠しも入っていて、後半のは危うい京介を心配した櫻井からの忠告であり、全員に当然櫻井は入っていないのですが、京介は気づきません。

P.288
超いー景色! 感動した! 最っっ高の気分だよ! ぜんぶ、ぜんぶ、キミのおかげっ!」

この時の櫻井の本心はP.288で明かされます。

P.225-226
「……俺が、おまえにやってきたことは、全部お節介で、余計なお世話だった……のか?」
「!」
櫻井は俺の問問いにハッとし、それから、見下げ果てたとばかりに目を細めた。
「ばぁーか」
「はい?」
なんで俺、いま罵倒されたの!?
わけが分からず瞠目していると、彼女はプイッとそっぽを向いて、
「ばーかばーか。ばかばかばーか。キミって、ウザいだけじゃなくて、すっごいバカ」
(中略)
「う~~~~~~~~~~~」
唇を噛んでもどかしそうにする櫻井。
「だからぁ! あたしは、」
彼女は勢いよく俺の方を振り向き、何かを言いかけた

京介が自分の言葉を勘違いしていて、自分の京介に対する感謝の気持ちを理解していないことに気づく櫻井ですが、照れてそれをハッキリと言い出せません。このすれ違いが、のちの悲劇の一端を担うわけですが……。

P.235
ドンッ! という強烈な打撃音が、その場の全員を黙らせた。
全員が同時に音の源に振り向き、
「「――――――――――」」
同時に硬直した。
「――みんな、静かにしてくれる?」
机をブッ叩いて立ち上がったのが、麻奈実だったからだ。
「……麻奈……実?」
「きょうちゃんも、自分の席に戻って」
麻奈実の口調は、普段と何も変わりない。表情も、柔らかな微笑をたたえたままだ。
それなのに、有無を言わさぬ迫力があった。
初めて見る、本気で怒った麻奈実だった。

京介を罵倒するクラスメイト相手に本気で怒る麻奈実。
麻奈実が本気で怒るのは、京介絡みの時だけなんですよね。

P.239
『三年前の俺』が出会った登校拒否のクラスメイト、
『櫻井秋美』は『今の俺』を形作った重要な要素だ。
ただし、くれぐれも誤解しないで欲しい。
『櫻井の件』にしろ、『婆ちゃんの件』にしろ、それらの超キツい体験が直接トラウマとなって、俺の性格が変わってしまった――というわけじゃない。
そいつを踏まえた上で、続きを聞いて欲しい。

『櫻井の件』や『婆ちゃんの件』はあくまできっかけ。
後述しますが、京介の性格が変わってしまったのは、麻奈実に平凡な自分を肯定されたことが原因ですね。

P.240-241
「…………兄貴ってさ、やっぱ、凄いよね」
「何が」
「ぐすっ…………泣かないから」
「そりゃあな」
おまえの前では、そう簡単に泣けねえよ。
それに、繰り返しになっちまうが、それどころじゃなかったというのもある。
俺たちの大好きだった婆ちゃんが亡くなって、妹が泣いていて。
いまこそ俺が、絶対になんとかしてやらなきゃいけないときなのに。
――俺に任せろ!
妹に、そう言ってやることができない。
――なんてこった。
『この世にはなぁ、仕方ないで済ませていいことなんか、一個だってねーんだよ!』
本当になんてこった、だ。俺が、ずっと長いこと誇らしげに掲げていた信念とやらは――いや、信念だと思い込んでいたものは、この大事なときにクソの役にも立たないじゃねぇか。
どころか足を引っ張ってさえいる。
いまこのとき、妹を慰める言葉なんて一つしか思い浮かばないのに、それが言えない。

現実に打ちのめされ、妹を慰める言葉「――俺に任せろ!」が言えない京介。

P.243
「もしよかったら、桐乃ちゃんと一緒に、うち、泊まりに来る?」
ああ……それは、とても優しい提案だな。きっと田村家の人々は、温かく俺たち兄妹を迎えてくれ、落ち込んだ俺の気持ちを紛らわせてくれるだろう。
「いや……やめとく」
寝てる妹を起こすのに抵抗があったからというのが一つ。それと、あいつが最近、麻奈実んちを避けているようなのが二つ。二つ目の理由を、このときの俺が明瞭に意識していたかというと怪しいもんだが、いまにして思い返してみると、たぶんそれで断ったんじゃねぇかな。

こんな時でも、しっかり妹のことを考え、優先する京介。兄の鑑ですね。

P.245
「なんで全部俺のせいになるんだよ! なんで全部裏目に出るんだよ! 櫻井も……婆ちゃんも……なんで……こんな……」
唇を噛み、再び口を開くと、みっともない鼻声が出た。
「どうして、妹が泣いてんのに、なんにもできねえんだよ! 俺はあいつの兄貴なのに……! 俺に任せろって、なんとかしてやんなくちゃならねえのに……! 全然ダメダメじゃねえか! こんなの俺じゃねえよ! 俺のなりたかった俺じゃねえよ! くそっ! くそっくそっくそっ!」
本当にぐちゃめちゃだった。自分で自分が何を言っているのか――分からない。
それでも、いま口から吐き出されているすべての言葉は、俺の本音だった。
このすべてが、俺の内心をそのまま表したものだった。

櫻井が怪我したことや婆ちゃんが亡くなる前に会えなかったことに落ち込む京介。
そして、妹が泣いているのに何もできない自分に苛立つ京介。

P.245
こんなとき、『理想の俺』だったなら、無様に泣いたりはしないのだから。
あとから顧みてみれば、このとき、俺の心は、まだ折れてはいなかったのだろう。

P.246
「――きょうちゃん」


幼馴染みの、柔らかな抱擁だった。
「落ち着いて」
「――――っ」
俺は、本当に幸せ者なんだと思う。
人生の中で、『どうにもならないこと』は、いつか誰の前にも現れる。
けど、そんなとき、こうやって抱きしめてくれる人が、俺にはいるのだ。
こんなときなのに、嬉しかったよ。ついうっかり泣きそうになっちまった。

P.248-249
「きょうちゃんはいつも、誰かが困っていたりすると――『仕方ない』で済ませずに、はりきって『俺に任せろ』って面倒事を請け負ってきたじゃない? 妹さんのために、いつだって『凄いお兄ちゃん』であろうとしていたじゃない? だけどね、きょうちゃんの力が及ばない、きょうちゃんにはどうしようもないことにまで、そのやり方を通さなくてもいいんだよ」


「――きょうちゃんは、ごく平凡な男の子なんだから」


トラウマというなら、このフレーズこそがそうかもな。
――自分でいうのもなんだが、ごく平凡な男子高校生である――
三年経っても、俺は己を、そう評し続けている。
だって、あまりにも、しっくりきたから。
「……そっか、俺、平凡なのか」
「うん、わたしと同じ」
いま気付いたわけじゃない。本当は、もっと前から気付いていた。自分は特別な人間なんかじゃなく、むしろ人より劣っているくらいの、平凡なやつなんだって。
なのに、『仕方ない』を封印し、なんでもかんでも『俺に任せろ』と粋がっていた。

>「――きょうちゃんは、ごく平凡な男の子なんだから」
これこそが京介を堕落させた悪魔のフレーズ。
黒猫が麻奈実を怠惰(ベルフェゴール)と呼んだ理由であり、京介の心を折った言葉。

P.249
「……なんで背伸びしてたのかな、俺」
「いいところを見せたかったからじゃない?」
「誰に?」
「わたしとか――――あとは、妹さんとか」
「桐乃に? 俺が? いいところを見せたかった?」
「うん。違うかな?」
麻奈実だけなら、まだ頷けたかもしれない。自覚があったからな。
でも――桐乃って。
「きょうちゃん、いつも『妹に自慢をした話』ばかり、わたしにしてたよ」
「そうだった……かな」
ちょっと覚えていない。けど、麻奈実がそう言うなら、そうなのか……?

自覚のないシスコン京介お兄ちゃん。

>「わたしとか――――あとは、妹さんとか」
ここで桐乃のことをわざわざ京介に教えてあげる辺りが、麻奈実が悪者になりきれないというか、お人好しなところだと思います。まぁ、ちゃっかり自分を挙げるところは、さりげなくずるいのですが。

P.249-250
「あのね――きょうちゃん」
ぎゅっと、抱きしめる力が強くなった。
「わたしは、ありのままのあなたが好きだよ。背伸びしていなくても、凄くなくても、頼りにならなくても、足が速くなくても、勉強ができなくても、特別な人間じゃなくても、そんなことで嫌いになったりしないよ。あなたがいままでずっと一生懸命だったことは、わたしが一番よく知ってるから」
「で、でもよ……じゃあ、どうにもならねえときは……どうすりゃいいんだ?」
いつしか俺は、さっきと同じ問いを繰り返していた。
すると麻奈実は久しぶりに、俺の悪口を言った――「きょうちゃんはばかだねえ」と。
「本当にどうしようもないときは、『仕方ない』って言っていいんだよ。辛くても絶対に諦めない、弱音をはかない人は、かっこいいし、凄いけど、そんなのちっとも幸せそうじゃないよ。それにそんな生き方がきちんとできるのは、それこそ特別な人間だけだと思うな。きょうちゃんは違うよね」
これ以上ないくらい、優しい悪口だった。
「……確かに、違うな」
半ば噴き出しかけながらの台詞だった。
「でしょ?」
「ああ」
(中略)
俺はようやく、泣くことができた。
優しい幼馴染みの腕の中で。
……ったく、やれやれ――しょうがねーな、俺ってやつは。

ここで麻奈実が京介にかけた言葉は、5巻の第四章で京介が桐乃にかけた言葉とよく似ていますね。京介が麻奈実の影響を強く受けていることがうかがえます。この麻奈実の優しい言葉で、京介の心は完全に折れてしまい、1巻の最初の頃の怠惰な京介が誕生します。

第四章

P.254-255
「というかそれ……」何かを言いかけた桐乃だったが、「やっぱなんでもない」
「おい、思わせぶりなこと言うなよ」
追及すると、桐乃は凄く言いたくなさそうな顔で、淡々と続きを口にした。
「あたしって――自分の知らないところで、ある意味麻奈実さんに助けられてたんだなって、そう思っただけ」
「えっ……な、なんのこと?」
驚く麻奈実。桐乃は歯を見せて笑う。
「へへ、さーね、教えない。――三年前の京介は、麻奈実さんに心を折られて、救われたと思うよ」
何でおまえはそんなに、『当時の俺の気持ちが分かる』みたいな態度なのよ。
三年前の俺に、桐乃が感情移入する要素なんてあったかな。

ここでの桐乃の思わせぶりな態度は、5巻の第四章で陸上に挫折していた自分に京介がかけてくれた台詞が、麻奈実の影響であることに気づいたからでしょう。「ある意味麻奈実さんに助けられてたんだな」とはそういう意味です。さすがの麻奈実もそこまでは気づかなかったようですが。

P.255-256
「さっきも言ったっしょ? 『お兄ちゃんっ子』だった当時のあたしは、『背伸びしていた兄貴』のことを、カッコいいって思ってたの。頭がよくて、足が速くて、誰よりもがんばってて、自分のことを特別な人間だと思っている――そんな人にあたしもなるんだって、憧れてた」
「…………」
そう、だったのか。
「――でも、そんな人はいなかったんだよね」
「……桐乃」
「いまなら分かるよ。でも、あの頃のあたしは――分かんなかったな」
妹の目は、涙を堪えているように潤んでいた。いつかの俺のように、意地を張っているのか。
「……背伸びをやめて、あたしにいいところを見せてくれなくなった『兄貴』のことが、当時のあたしは、すごくイヤだった。すっごく、すっごく、イヤだった。堕落して、怠けて……成績だって落ちて……それなのにへらへら笑っているようなやつが、『あの凄かった兄貴』のなれの果てだなんて、信じられなかった」
やれやれ……一言も言い返せねえな、こりゃ。
桐乃の言葉に、強い感情が宿る。
「あたしが『兄貴』を見返そうとして、色々がんばってんのに――なんでとうのあんたが、怠けて、カッコ悪くなっちゃってんの! って、ムカついて……気持ち悪くて……絶対許せなくて……」
「あたしは、あんたのことが嫌いになったんだよ」


麻奈実に諭され、無理することをやめた俺。
『背伸びしていた兄』に憧れていたがゆえに、そうではなくなってしまった俺に、幻滅してしまった桐乃。
それが、俺たち兄妹の『冷戦の真相』だった。

これが、桐乃が京介を本気で嫌いになった理由であり『冷戦の真相』。
兄のことが好きだったからこそ、それが反転した時、激しく兄のことを嫌うようになった。今まで何度か言ってきましたが、好きと嫌いは表裏一体というやつですね。

P.257-258
「麻奈実さんは、ここで京介とあたしを許し合わせて、仲直りさせようとしてるんでしょう?
自分とあたしとの仲直りなんて、口実でさ」

「――――」
麻奈実が驚いたように、目を大きくした。

高坂兄妹を仲直りさせて『普通の兄妹』に戻そうとしている麻奈実の意図を、正確に理解している……ように見えてちょっとだけ誤解している桐乃。

P.263
「もちろん――口実なんかじゃないよ。わたしが桐乃ちゃんと仲直りしたいなって思ってたのは、本当」
「そ、そう――なんだ」
桐乃は意外そうにしている。

誤解というのはこの部分です。

P.259-260
「桐乃ちゃんは、どうしてそんなにめんどうくさいの? お兄ちゃんと、仲直りしたいんでしょう?」
「だ、だから……言ったじゃん。仲が悪かった時期のことを――」
なかったことにしちゃえばいいじゃない。――だってそれは仕方のないことなんだから」
とても穏やかな声色で、麻奈実は言った。かつて俺にしてくれたのと、同じように。
「そんないまさらどうしようもないことで、いつまで悩んでいるつもりなの?」
「か、勝手でしょ! つかっ――結局何が言いたいわけ?」
ようやく正気を取り戻した桐乃が、険悪さを隠そうともせずに麻奈実を睨み付けた。
対して麻奈実は、まったく怖じ気づくことなく、穏やかな微笑のままで首肯する。
「二人とも、仲直りして、普通の兄妹になりなさい」

一見、麻奈実が言っている「なかったことにしちゃえばいいじゃないというのは、仲の悪かった時期(冷戦時)のことを指しているように思えますが、麻奈実が言う「仕方のないこと」というのは二人が兄妹であるということで、「いまさらどうしようもないこと」というのは、実の兄に恋愛感情を持ってしまった桐乃のことですね。

>「二人とも、仲直りして、普通の兄妹になりなさい」
これは「お互いに、恋愛感情などなかったことにして『普通の兄妹』として仲良くしなさい」という意味です。
桐乃は兄に恋をしている。この時点ではボカされていますが、京介も妹に恋をしている。それは麻奈実にとって『普通の兄妹』ではないです。二人の気持ちを分かっている麻奈実は、過去のことを含め、(そんな感情は)なかったことにして『普通の兄妹』になりなさいという、まったくの正論をぶつけてきています。

P.261
「俺と――仲直り、してくれるか?」
「それは……」
桐乃は困ったように目を伏せて、
再び顔を上げる。
「てか、あたしたちにとっての『仲直り』って、なんだろうね? あんたとあたしが、無視し合うのをやめて、普通に喋るようになるってこと?」
それなら、俺たちはとっくに仲直りできてるってことになるが。
「違うよね? そうじゃないよね? いまここで話し合ってる『仲直り』って――そういうことじゃ……ないでしょ?」
「ああ、俺たちが、この五年間のお互いを、許しあえるかどうかって――そういう話だ」
今夜の話し合いを経て、すれ違いの原因を知って、
俺は、桐乃のことをとっくに許している。
「――なら、やっぱ無理。あたしはまだ、許せないから」
「……俺も、いまはまだ、許せそうにない」
自分自身を、だ。

ここで二人が言っている『仲直り』と麻奈実がさっき言った仲直りは意味が違うからややこしい。
桐乃はもちろんその違いを理解していますが、京介は三年前に交わされた二人の会話(P.310-311参照)を知らないので、お互いを許しあえるかどうかというのが『仲直り』だと思っているんですよね。そのことを桐乃は言えないので、途中から(「てか、~」の部分)微妙に話を反らしています。

P.262
「悪いな、麻奈実。せっかく叱ってくれたのに。俺たち、いまはまだ、仲直りはしない」
「――そっか。……じゃあ、仕方ないね」
麻奈実は、俺が『口に出して言わなかったこと』まで見透かしていそうな、優しい眼差しをしていた。

結局、麻奈実の思惑通りには行きませんでした。
『口に出して言わなかったこと』とは、自分自身の部分ですね。

P.262-263
「ごめん、だって、おかしかったから。こうして昔あったことを話し合えば、ちゃんと仲直りできるかなぁって思ってたのに――」
「無理だったって?」
「違うよ。ただ、言わぬが花かな」
「「――――」」
俺と桐乃の顔が、同時に赤面する。
「あはは、きょうちゃんのこと言えないね、わたしも。……『やれやれ、とんだお節介だったようだぜ』――こんな感じ?」

言わぬが花というのは、内心ではお互い「相手のことは」すでに許して(仲直りして)いるということですね。

P.265
「そう。あとこの際だから白状する……今年の二月、麻奈実さんがうちに来たときは、『どちら様ですか』なんてとぼけたけどさ。――覚えてたよ、本当は、麻奈実さんのこと」
「そっか。わたしはあんまり、覚えてなかったよ。桐乃ちゃんのこと」
「ちょ! 喧嘩売ってんの!?」
「そんなつもりじゃないけど。ごめんね、ずっと会ってなかったから」
そういや麻奈実のやつ、桐乃の顔忘れてたよな。
昔は一緒に遊んでたってのに、薄情なやつだ。
(中略)
「あたしにとっては衝撃的な出来事だったんだけど、麻奈実さんにとってはその程度の認識だったんだ。ちょっと数年会ってなかったくらいで、忘れちゃうくらいのさ」
「ごめんね」

ちなみに麻奈実が桐乃のことを忘れていたというのは、嘘です。

12巻 P.344-345
「いつもいつもいつもいつも邪魔ばっかして! 子供の頃からずーっとムカついてたんですケドぉ!」
「……邪魔ばっかりしてたのは、桐乃ちゃんの方でしょう?」
「あっれー? あたしのことなんか忘れてたんじゃなかったのぉ~?」
「……っ!」
「あ、やっぱ図星なんだ! この嘘吐き!」
「……ぅううう! 桐乃ちゃんさえいなければ! 全部上手く行ってたんだよ!」

なんでこんな余計な小細工するんでしょうねぇ……麻奈実は。
メタ的に言えば、麻奈実が桐乃のことを忘れているのはやっぱり無理があるということで、作者が修正を図ったんでしょうか?

P.267-268
桐乃と麻奈実はしばし無言で見つめ合い――そこで桐乃は、直前の台詞からは考えられない行動を取った。いきなり、深々と頭を下げたのだ。
「あのときは、ごめんなさい。あたしはバカな子供でした」
「うん、許すよ。わたしだって本当は……桐乃ちゃんに、偉そうなことを言えないから」
「ありがとうございます」
「いいよ。全然気にしてなかったから
にこ、と告げる麻奈実。顔を上げた桐乃のこめかみが、ピクピクしている。
「あ、あっそ。そーでしょうよ、忘れてたくらいだもんねー……つか、実はまだ怒ってるでしょ」
「怒ってるよ?」
「三年前のことじゃなくて?」
「うん、いまのことで」
「そっか。じゃあ、お互い、腹を割って話し合わないと」
「仲直りなんてできないよね」

昔のことをちゃんと頭を下げて謝る桐乃に対し、全然気にしてなかったと言って、桐乃を煽る麻奈実。麻奈実も結構性格悪いですよねぇ……。偉そうなことを言えないというのは、純粋な親切心だけではなく、(京介を自分に振り向かせたいという)下心もあるからでしょう。
麻奈実が怒っている理由は後述。

P.268-269
なんだろうな……あぁ、くそ……なんだろうな、これ。
いま、すっげー…………妹に謝りたい。
怒るだろうから、やらねえけど。
すごい兄貴じゃなくて、ごめん。
おまえのスーパーヒーローでいてやれなくて、ごめん。
普通のやつで、ごめんな。

ここの京介は、

2巻 P.347-348
あやせは何かを言おうとしていたが、言葉にならないようだった。
ごめんね、と桐乃は詫びる。
期待してくれたとおりの人間じゃなくて、ごめん。でもこれがあたしなの。
そう伝えようとしているように、聞こえた。

桐乃との対比になっていますね。
妹の期待するスーパーヒーローになれなかった京介、あやせの期待してくれた通りの人間じゃないという桐乃。

P.269
「どこまでもお人好しでお節介な『兄貴』は、いつだって無理をして、背伸びして、頑張ってくれていただけなんだ」
そんな簡単なことも、昔のあたしは分かっていなかった――。
桐乃は俯き、歯を食いしばるようにして、言葉を振り絞った。
そして顔を上げ、麻奈実を見据える。
「だから、いま、三年前に言えなかったことを言うね。――麻奈実さん、どうしようもなくなってた兄貴を助けてくれて、ありがとう」
「どういたしまして」
向かい合い、話し合っていた二人の顔が、初めて両者とも笑顔になった。
三年前――いや。五年以上前からの長いしがらみが、ほどけた瞬間なのかもしれなかった。

麻奈実の思惑は置いておいて、麻奈実が三年前の京介を救ったのは事実。
自分の否を認め、ちゃんと麻奈実に感謝の言葉を述べる桐乃は偉いです。こういったところが正ヒロインとサブヒロインの差でしょうか?

P.269-271
「ねぇ、麻奈実さん。あたしたち、仲直りできるかな?」
「できるといいね。桐乃ちゃん、わたしに言いたいことは、もう全部言ってくれた?」
「ううん、あと一つ残ってる」
「そっか。わたしもあと一つ、残ってるよ」
「先に言って。きっとそれが、麻奈実さんがいま怒っている理由なんでしょ?」
「うん――」
そこで麻奈実は、俺を見た。それにならい、桐乃も同じようにする。
――え? 俺?
麻奈実の、笑顔が消えた。
「ねぇ、桐乃ちゃん。最近のきょうちゃんって、昔に戻って来ていると思わない?」
「――――」
俺は目を見開いた。自覚があったからだ。
一方桐乃は、シニカルに苦笑して、
「やっぱそれかぁ。だとおもったんだよねー」
「『いまの桐乃ちゃん』なら、わたしが何を言いたいか、分かるでしょう?」
「うん――ばっちり分かるよ」
麻奈実は桐乃と頷き合う。
「桐乃ちゃんや、黒猫さんや、あやせちゃんの『人生相談』のせいで――きょうちゃんは、また『無理をして、背伸びして、頑張っている』んだってね。最初の一度だけなら、桐乃ちゃんだし、ことがことだし、特別なのかなって思えたんだけど、どうもそうじゃないみたいでしょ?」
桐乃桐乃黒猫あやせ桐乃黒猫桐乃加奈子あやせ――みたいな感じで大活躍っすよ、俺。
あんなことがあったってのに、麻奈実に助けられて、人生の教訓を得たはずなのに。
もうあんなのは俺のガラじゃなくなっていたはずなのに――最近の俺は、『昔の俺』以上に、『高坂京介の人生相談室』をやっているんだよな。
麻奈実が怒るのも無理ないわ、こりゃ。
「櫻井さんのときみたいに、『俺に任せろ』って『すーぱーひーろー』の真似事をしているんだとしたら、すっごく心配だよ」
麻奈実は、一見しただけでは見分けが付かない、『本気で怒っているときの笑い方』で、俺に微笑みかける。
「せっかく直ったと思ったのに、悪い癖、再発しちゃった?」

麻奈実が怒っている理由。
せっかく自分が京介を直して普通にしたはずなのに、いつの間にか元に戻って来ているのが不満なんですね。心配などという言葉で誤魔化していますが、本音は京介が自分の思い通りにならないから怒っているだけです。

P.272-273
「麻奈実さんが心配するのも分かるけど、一つだけ言わせて」
「うん、なぁに、桐乃ちゃん」
「いまの兄貴は、『昔の兄貴』に、戻ってなんかいないよ」
断言した。言葉を受けた麻奈実は、興味深そうに、微笑んで問い返す。
「どこが違うの?」
「いまの兄貴は、昔みたいに自信満々『俺に任せろ』なんて言ってくれない。いまの兄貴は、自分が平凡なやつだって分かってて、何でもできる凄いヤツじゃないんだって思い知ってて、それでも妹のために、嫌々渋々こう言うの」


「『ったく――やれやれ、しょうがねーな』」


「『桐乃、俺に任せろ』って、ね」
ニッと、歯を見せて桐乃は笑う。もしかしたらそれは、兄の真似なのかもしれなかった。

P.270で、麻奈実は京介が『人生相談』で桐乃だけでなく、あやせや黒猫のために無理して頑張っているという話をしたのに、桐乃はそれを妹を助ける兄の話にさりげなくすり替えています。これじゃ、単なるノロケじゃないですか(笑)

P.275
「――そっか、安心した」
やがて麻奈実は、深い息とともに、その言葉を紡いだ。
「きょうちゃんは、昔のきょうちゃんに戻って来たわけじゃ……なかったんだね」
「あったりまえじゃん。幼馴染みのくせに、どこに目ぇ付けてるわけ?」
「はっ……どーもそうらしいな。前と比べて、諦めがよくなって、ひねくれて……成長してるのかどうかは分かんねーけど」

いまや、麻奈実よりも桐乃の方が京介を理解しているとわかる描写。
何度も言いますが、桐乃と麻奈実の対決は、もうとっくに勝負はついているんですよね。

P.276
「昔の兄貴といまの兄貴、どっちが好き?」
「いまの方が、安心して見ていられるかな。最近はちょっと心配だけど。――桐乃ちゃんは?」
「あたしが憧れてた人は、結局どこにもいなかった。いるのは、いまのこいつだけだよ」

桐乃の方は答えになっていないように見えますが、よく読むといまの兄貴の方が好きって言ってるようなものですね。

P.276
「そっか。ねぇ、桐乃ちゃん」
「なに? 麻奈実さん」
「次は、ちゃんと喧嘩しようね」
「上等じゃん」
にこにこ笑顔の麻奈実と、不遜な笑みの桐乃が、両者一歩も引かず睨み合っている。
そんな光景こそが、今夜の『話し合い』の成果なのだろう。
一切の関わりを断っていた二人が、いまこうして『ちゃんと喧嘩』ができるようになったわけだ。
つい、思い出してしまう。
一歩前進して、離れていた二人がぶつかり合って。
その結果、俺たち兄妹がどうなったのかを。
さて。麻奈実と桐乃の仲直りが、果たして成功したのか失敗したのか。
一目瞭然の結果を前に、俺はいつものように、こうぼやくのだった。
「ったく――やれやれ、しょうがねーな」

この京介の後半のモノローグを読むと、最終的に桐乃と麻奈実が仲良くなるフラグにしか見えないんですけどね。しかし、結果は……京介は本当に信用出来ない語り部ですね。

P.278
あえて勢い良く身体を起こす。その際二人の顔が近付いて、麻奈実が慌てて距離を取った。
麻奈実はやや崩れた正座の体勢で、ぎゅっと両拳を太ももに押しつけている。
「ま、まだ起きるには早いよ?」
「ああ、でも、昨日おまえらと話して――負けてらんねーなって、思ってさ」

顔が近付いて慌てる麻奈実に対し、京介のこの淡白な反応。
京介の中では、もう麻奈実は恋愛対象ではないのだとわかる残酷な描写。

P.279-280
「――そんなの、あんたが一番よく知ってるくせに」
俺と麻奈実の会話に、面白そうな声が割り込んだ。麻奈実を『あんた』と呼んだのは、桐乃だった。こいつ……いつの間に……。
桐乃は走りやすそうな軽装で、部屋の入口で偉そうに腕を組んでいる。
にしても……『まなちゃん』『麻奈実さん』ときて、『あんた』か。……年上相手にずいぶんな態度だが、呼び方の変化は、心境と関係の変化でもあるんだろう。

昨日の「次は、ちゃんと喧嘩しようね」という麻奈実の言葉に対する桐乃の返答がこれなのでしょう。次の日から、即、朝早く起きて、身体を鍛える走り込みの準備をし、麻奈実を『あんた』と呼ぶ、この入念な準備ぶりに、桐乃の本気を感じます。

P.281
そして――
なんとその日のうちに、俺は櫻井と再会することができた。
妹と、そして櫻井がハマっていた『シスゲー』というソーシャルゲームを通じてだ。
『その櫻井って人も、「シスゲー」にハマってたんでしょ? ダメもとでユーザー検索してみれば? したらメッセージ送れるし。ま、相手が読むかどーかまではしんないケド』

シスゲー関連の伏線回収。

P.287
「『普通の女子高生』――やってます」
「そうか。なら、よかったぜ」
ホッとした。
きっと――俺にはできなかったことを、やり遂げたやつがいたんだ。
もしかしたらそれは、櫻井自身なのかもしれなかったが。

俺にはできなかったことというのは、

P.247
櫻井を説得して、もう一度学校に来させなくちゃいけない。学校が楽しいところだって、教えてやらなくちゃいけない。

このことですね。

P.288
「櫻井秋美は! 高坂京介のことが! だいっ好きだぁぁあああああああああああああぁっ!」

細かい部分が違いますが、これは12巻で京介が桐乃に再告白した時の台詞と似てますね。

12巻 P.356
「俺は! 妹が! 桐乃が! 大っ好きだぁ――――――――――――――――――っ!」

京介はこの櫻井の告白を、意識的にか無意識的にかはわかりませんが、真似してますね。

P.289-290
「三年前でも、いまでも、答えは同じだ」
泣きながら伝えた。
「ごめん、俺、好きなやつがいるんだ」


俺は今度こそ、自分から告白すると決めたんだ。
「……うん、知ってた」
櫻井は、俺の答えをまっすぐ受け止めて、
「ちゃんと振ってくれて……ありがとうね」
ぶわ、と、涙を溢れさせた。

ここは、京介の好きなやつが麻奈実だと読者に錯覚させるためのミスリード

12巻 P.270-271
「……この前キミ、あたしに『好きなやつがいる』ってゆったよねえ!」
「……言いましたね」
「相手、妹かよ!」
「はははは」
もう笑うしかない。
「あたしてっきり『あの人』のことだと思ってたよ! 『三年前もいまも答えは同じ』なんてゆーからよぉ~~~~~~~~~~~~~~! なに? 三年前から妹のこと好きだったの?」
「いや、三年前に好きだったやつといま好きなやつは違うよ?」
「だよねえ! 超紛らわしいよねえ!」
「だっておまえ、あの場面で説明したらかっこ悪くね?」
「そういう問題じゃねぇ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~んだよぉ~~~~~~~~!」
オマエを食い殺してやるぞ! みたいなポーズを取るクマ女・櫻井。
「あたしあんとき『知ってた』とか、スッゲー思わせぶりな台詞言っといて、実は勘違いだったとか超恥ずかしいじゃん! アホ丸出しじゃん! てか! てか! それはまあ別によくて! よくねーけど別によくて! 妹! 妹ってなにさ!」

これは酷い(笑)
櫻井が怒るのも無理はないです。

エピローグ

P.293-295
実は結構前から、あやせちゃんには”いめちぇん”のお手伝いをしてもらっていたのだが、
前回の”いめちぇん大作戦”は、失敗に終わっていた。
――きょうちゃん、ちっとも気付いてくれないんだもん。

これは、6巻第二章(P.70-72)の時のことですね。

P.296-297
「……わたしは、きょうちゃんとお付き合いしたいわけじゃないんだ。……ううん、できればお付き合いしたいんだけど、もっと大事なことがあって」
「それってなに?」
「きょうちゃんが、幸せになることだよ」
微笑んで答えた。
これはわたしの、心の底からの本心だ。

麻奈実は心の底から京介の幸せを願っていますが、残念ながら麻奈実の考える幸せと京介の考える幸せは違うんですよね……。

P.301-302
「そこはね、わたしも黒猫さんと同じ気持ち。……わたしは、きょうちゃんにも、桐乃ちゃんにも……みんなに幸せになって欲しいんだ」
「はあ? これ、恋愛ごとっすよ? そんなん無理っしょー、ハーレムでも作るつもりっすか?」
けらけらとばかにしたように笑う加奈子ちゃん。
わたしはにっこりと笑って答えた。
「無理じゃないよ。だって桐乃ちゃんは、妹なんだから。というか、」


「お兄ちゃんに恋する妹なんて、気持ち悪いでしょう?」


「もちろん逆も同じ。これは現実で――えっちなげーむじゃないんだから」
わたしが言うのもなんだけど……これって普通の考え方だと思うけど、どうかな?
黒猫さんは、こんな言い草を聞いたらきっと桐乃ちゃんのために怒るだろうけど。
いまの桐乃ちゃんなら、きっと同意してくれると思うな。

>「お兄ちゃんに恋する妹なんて、気持ち悪いでしょう?」
気持ち悪くないです。気持ち悪くないです。気持ち悪くないです。
大事なことなので3回言いました。

いまの桐乃ちゃんなら、なんて台詞があるのと『話し合い』が終わった後に書かれているので勘違いしそうになりますが、この麻奈実と加奈子の会話は『話し合い』が行われる前にされたものです。時系列がシャッフルされているので紛らわしい……。

>「もちろん逆も同じ。これは現実で――えっちなげーむじゃないんだから」
>わたしが言うのもなんだけど……これって普通の考え方だと思うけど、どうかな?
一般的な社会常識に照らし合わせれば、その通りでしょう。
兄妹での恋愛は法的に禁止されていないとはいえ、日本の社会全体の価値観から見れば、認められている状況とは言い難いですから。

>いまの桐乃ちゃんなら、きっと同意してくれると思うな。
桐乃はゲームと現実をちゃんと分けて考えているし、兄妹恋愛に関する一般常識も弁えているので、麻奈実と考え方は同じです。それがわかっているからこそ、自分の気持ちを素直に認めることができないのですが……。

P.302
「加奈子ちゃん。わたしにだって、企んでることくらいあるんだよ?」

これは京介と桐乃との『話し合い』で高坂兄妹を普通の兄妹に戻すことですね。結局11巻の『話し合い』ではうやむやになりましたが。

P.306-307
「結局京介って、いま、誰が面倒見てんの? あやせがあいつんち通うのって、模試までって約束だったじゃん? あやせに聞いたら、ムズカシー顔で『わたしじゃない』としか言わねーし」
「きょうちゃんのお母さんが、毎日じゃないけど行っているみたいだよ。本当はね、きょうちゃんが引っ越しをする前に、わたしが頼まれてたんだけど――」
「え? まじで? 京介の親に、京介の面倒見てくれーって、頼まれてたってこと?」
「うん。『あたしは理由を作って行けないことにするから、京介をお願いね』――って」
これは、きょうちゃんも知らないことだ。
桐乃ちゃんは――どうかな。いまはもう、知ってるのかな。
(中略)
「お膳立て?」
「そーそーそれそれ! お膳立てってやつでしょ? 一人暮らしの息子んとこに行かせるとかさー。京介の親ってぇ、師匠が息子の彼女になったらいいなーって思ってんのかな」
「あはは……どうだろうね。それはきょうちゃんのお母さんに聞いてみないと、分からないかな」

この佳乃の行動は不思議です。
10巻のP.329-330では「あんたが妹に手を出したなんて最初から疑ってない、ああいう条件を付けて引き離したらシスコンパワーで勉強頑張ってくれるかしらって思ってただけ」みたいなことを言ってましたが、裏ではこんな風に麻奈実を京介のところに送り込んでお膳立てしようとするあたり、本当は兄妹の仲を疑っていて、京介が麻奈実と付き合うように仕向けたのではないか? という風に考えることもできてしまいます。実際のところは、これ以上描写がないので、分かりませんが。

P.307-308
「いまの桐乃ちゃんなら、もう、ちゃんと分かってると思うんだ。昔、わたしが言ったことの意味。だから、いまなら話し合えば仲直りできるはずだし……わたしがやりたいことにも協力してくれると思う」
「協力って?」
「みんなが幸せになれるように、協力」
わたしは一旦目をつむり、開き、微笑みとともに決意を告げる。
「安心して、加奈子ちゃん。わたしが卒業までに……桐乃ちゃんがいなくなっちゃう前に……」


「あの二人を『普通の兄妹』にしてみせるから」

この描写も謎。
なぜ麻奈実はこうも自信満々なのか? 桐乃が麻奈実のやりたいことに協力する? 12巻の結果を見ると「一体、麻奈実は何を言ってるんだ?」としか思えません。

P.310
『そっか……でもね、桐乃ちゃん』


『そういう風な意味で、お兄ちゃんのことが好きだなんて、おかしいと思うな』
(中略)
『その気持ちは、絶対に誰にも言っちゃだめだよ』


『早く忘れて、諦めて、ありのままのお兄ちゃんと仲直りして――』


『普通の兄妹に――なりなさい』

麻奈実としては、この言葉を桐乃が今では理解してくれたと思っているようですが、まったくの的外れですよね。兄妹の冷戦の原因は自分にもあるから、それを自分の手で何とかしようと思っているのでしょうが、京介も桐乃もそんなことは頼んでないし、望んでもいないので、余計なお世話以外の何者でもないです。

俺の妹がこんなに可愛いわけがない12 プロローグ

P.328-329
「――この前ね、ずーっと悩んでいたことが、一つ解決したの」
「それって……先月あったっていう『ストーカー事件』のこと?」
(中略)
「……違うよ。それとはまた、別の――もっと大事なこと」
「…………」
「すごくすっきりして……それで……心境の変化があって……いまなら、桐乃のことがもっと理解できるかもって……」

ずーっと悩んでいたことというのは10巻 P310-313の、京介についていた嘘の件ですね。

P.330
来月、模試の結果が出た後に、桐乃とお姉さん――麻奈実さんの『話し合い』が行われるらしいが――それに先だって、わたしと黒猫さんの『話し合い』も行われていたのだ。
わたしと加奈子の『話し合い』もあったし、加奈子と麻奈実さんの『話し合い』もあったらしい。議題はもちろん、お兄さんと、桐乃のこと。

この時間軸で気になることが一つ。

P.324
そんな桐乃+二人の羨ましいやり取りがあった翌日――。

とあるように、この桐乃と黒猫とあやせの話し合いは、桐乃が黒猫と沙織に、卒業したら海外に行くと告げた翌日の話なのですが、じゃあ、麻奈実はいつ桐乃がいなくなることを知ったのでしょうか?(P.307)

P.331
「加奈子からのまた聞きなんだけど……お姉さん、こんなことを言っていたらしいの。『桐乃ちゃんのことを泣かせちゃう予定だよ』『卒業までに、あの二人を普通の兄妹にしてみせる』――って」

上記の描写を見る限り、加奈子と麻奈実の『話し合い』は、桐乃が卒業したら海外に行くと黒猫と沙織に告げる前の出来事のはずなのですが……おかしくないですかね?

P.333
「へぇ――――っ、良かったね! あやせってそういう浮いた話とかちっともないから、男の子に興味ないのかと思ってたよ。へぇ~、へぇ~、そっかそっかー。ついにあやせにも、春が来たか! 付き合ったら絶対紹介してよね!」

P.335
「……ていうか、あやせってあいつのこと嫌いだったんじゃなかったの? だからあたしは、あんたにあいつの世話をお願いしたのに……全部嘘だったわけ?」

桐乃はあやせの京介への気持ちにまったく気づいていなかった模様。

P.337
「私も、口に出して宣言しておきましょう。――あなたが卒業するまでに、私はあの人から告白されてみせる

桐乃を焚きつけるためとはいえ、こんな自信満々に言っておいて振られてしまう黒猫さん。
ご愁傷様です。

P.337-338
「――どうしてそんなこと言うわけ……!? あんたも、あやせも……。言っとくけどね! あいつにいま告白したって、絶対上手く行くわけないっつーの! どうしようもないシスコンなんだから!」
「そんなことは分かっているわ。わたしも、彼女も。だからこそいまなの。――ねえ?」
黒猫さんがそう振ってきたので、こくりと頷く。
「黒猫さんから聞いたけど――桐乃、もう自分の気持ちに嘘を吐くのはやめたんでしょう? なのにいまもまだ、嘘を吐き続けている。それは駄目だよ。ケリを付けるっていうなら、嘘を吐かずにケリを付けて欲しいな
「私たちは、田村先輩ほど優しくはないのよ。妹だからって、特別扱いはしてあげないわ」

桐乃に嘘を吐かないように迫る黒猫とあやせ。
嘘とは当然、京介に対する気持ち(恋愛感情)のことですね。
だからこそというのは、このままでは妹とのことが解決するまで誰とも付き合わないと決めている京介への告白が、いつまでも先延ばしになってしまうからです。嘘を吐かずにケリを付けて欲しいなというのは、京介へ桐乃の正直な気持ちを伝えて、この中途半端な状態を終わらせて欲しいということですね。

要するにお前がいつまでも正直になってくれないので、私たちはさっさと動くことにした。だからお前も早く兄に告白しろと言っているわけで、なかなか強引ですね(笑)

P.340
「あたしだって卒業までに、エロゲーよりすっごいことしてやるんだから!」

これ、結局何だったんですかね?
兄妹二人だけの結婚式? 誓いのキス?
どちらもエロゲーではとっくにやられてますよね?
12巻で桐乃が京介と「エロゲーよりすっごいこと」をやった描写ってありましたっけ?
これに関してはマジでわかりません。結局、単なるブラフだったんでしょうか? 誰かわかる人がいたら教えて下さい。

2019年5月13日補足

ゲームではなく「現実」で実の兄と恋人になるという意味なら、「エロゲーよりすっごいこと」と言えますね。読者の視点から見ると俺妹はラノベの話ですが、桐乃や京介から見ると「現実」の話なので。まぁ、ちょっとすっきりしない感じではありますが……。

11巻のまとめ

アニメで11巻の過去編が丸々省かれたことからもわかるとおり、11巻って実はあまり重要なポイントってないんですよね。
一応高坂兄妹の過去が明らかにはなったわけですが、長々とやったわりにあまり中身はなく、麻奈実と桐乃の『話し合い』も中途半端に終わります。
櫻井の存在なんて、アニメでは円盤のおまけと予告で出ただけで、本編では存在ごと抹消されちゃいましたからね。

最終巻である12巻に向けて、10巻は仕込み、11巻は繋ぎという感じで引き伸ばしぶりが酷く、リアルタイムで読んだ時は「俺妹にはもう期待できないな」と思ったものです。

考察のために改めて読み返してみても、9巻の頃までのテンポの良さに比べると冗長で、伏線の貼り方もあまり上手くないし、ぶっちゃけ面白くないんですよね……。アニメやゲームの脚本を書いたり、脅迫事件などもあって、この頃の伏見先生は小説の執筆に集中出来てなかったんでしょうか?

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