注意
この記事はライトノベル『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』を全巻読んでいることを前提に書いています。
おもいっきりネタバレがありますので、未読の方はお気をつけください。
10~12巻の出来事と時間軸
10~12巻の時系列はバラバラで理解しづらいので、3巻分をまとめています。
日付 | 出来事 | 原作 |
---|---|---|
10月上旬のある日 | 両親に桐乃との仲を疑われ、一人暮らしをすることになる | 10巻、第一章 |
翌日の放課後 | 御鏡と赤城に一人暮らしについて話す | 10巻、第一章 |
上記の2日後 | 京介のアパートに桐乃がやってきて、冷蔵庫と『押しかけ妹妻』をもらい、賭けをする | 10巻、第二章 |
上記の翌日の放課後 | 加奈子がアパートにやってきて、桐乃と兄妹ということがバレる | 10巻、第二章 |
上記の翌朝 | あやせと黒猫がアパートにやってきて、黒猫に自分の決断を伝える | 10巻、第二章 |
同日放課後 | 親父がアパートにやってきて、『押しかけ妹妻』を持ってるのがバレる | 10巻、第二章 |
上記後の休日 | 京介のアパートで引越し祝いパーティ、あやせが京介のお世話をすることに | 10巻、第三章 |
上記の翌日の放課後 | あやせに桐乃がフィギュアや妹エロゲーを好きな理由について聞かれる | 10巻、第三章 |
上記の後日の放課後 | 雨の日に、日向ちゃんが様子を見にやってくる | 10巻、第三章 |
上記の後日の深夜 | あやせのファンブログに異変が起こる | 10巻、第三章 |
同日 | ブログの異変について赤城や御鏡に相談 | 10巻、第四章 |
上記の翌日の放課後 | 女装した御鏡に遭遇 | 10巻、第四章 |
上記の後日の放課後 | あやせにエッチな本を隠していたのがバレる | 12巻、第二章 |
上記の後日の土曜日 | あやせに『おしかけ妹妻』を隠していたのがバレる | 12巻、第二章 |
上記の翌日の日曜日 | アパートに加奈子が差し入れに来て、あやせとの仲を誤解されそうになる | 12巻、第二章 |
上記の翌日の放課後 | あやせと買い物に出かけ、フェイトさんから赤ちゃんを預かる | 12巻、第二章 |
11月1日 | アパートであやせに踏まれている黒猫を目撃する | 10巻、第四章 |
11月3日 | 模試当日、あやせのストーカー問題解決 | 10巻、第四章 |
同日試験終了後 | 桐乃と一緒に病院に行く | 10巻、第四章 |
11月のある日 | 麻奈実と加奈子の話し合い | 11巻、エピローグ |
上記以降のある日 | 桐乃が黒猫と沙織に、卒業したら海外に行くことを告げる | 11巻、俺の妹がこんなに可愛いわけがない12 プロローグ |
上記の翌日 | 桐乃、黒猫、あやせの話し合い | 11巻、俺の妹がこんなに可愛いわけがない12 プロローグ |
12月の初め | 模試結果発表、京介がA判定を取って実家に戻れることに | 10巻、第四章 |
上記後の休日 | 京介が一人暮らしを終えて帰宅、部屋が桐乃の私物だらけになっている | 10巻、第四章 |
12月上旬 | 田村家で麻奈実、京介、桐乃の話し合い、冷戦の真相が明かされる | 11巻、第一~四章 |
上記の後日 | 京介が櫻井と再会、好きなやつがいると櫻井の告白を断り、自分から告白すると決心する | 11巻、第四章 |
12月のある日(上記のすぐ後) | 桐乃をクリスマスデートに誘う | 12巻、第一章 |
上記の後日 | アパートの前で、あやせに告白されて断る | 10巻、第四章と12巻、第二章 |
12月20日 | 京介が黒猫に正式に自分の気持ちを伝え、黒猫を振る | 12巻、第三章 |
12月24日 | 京介がクリスマスデートで桐乃に告白、高坂兄妹が恋人同士になる | 12巻、第一、三、四章 |
12月25日 | 黒猫と沙織に兄妹で付き合うことになったと話す、ゲーセンで櫻井に会う | 12巻、第四章 |
とある休日の日の朝 | 起きたら桐乃が隣で寝ていて、びっくりする | 12巻、第五章 |
正月を過ぎた頃 | UDXのライブで加奈子に告白されて、断る | 12巻、第四章 |
とある休日の日の午前中 | 桐乃と『恋人の儀式』をする | 12巻、第五章 |
卒業式の日 | 麻奈実と対決、桐乃と結婚式を挙げたあと、別れる | 12巻、第五章 |
春休み | 桐乃と秋葉原に行き、キスをする | 12巻、最終章 |
第一章
P.12
「え? おまえの『はあ? ばっかじゃないの?』って、『いいよ。ちゅっ?』って意味なんじゃないの?」
「違う! 誰がそんなこと言った!」
「おまえが神ゲーだと押しつけてきたエロゲーの妹がそー主張してたぞ」
「くっ……りんこりんのことか……りんこりんのことかあ――!」
京介はいつの間にか『しすしす』のりんこりんルートをプレイしたようです。
ただ、どういう内容だったのか、それをプレイしてどう思ったのかは、描写がないので不明。
P.13
「あいつはそーかもしんないけど、あたしは違うっつーの! てか、百歩譲ってあたしの『はあ? ばっかじゃないの? 死ねば?』が、りんこりん同様のツンデレ台詞だったとしても、時と場合によってその台詞の意味はいかようにも異なってくんの!」
「たとえば?」
「た、たとえばぁ……りんこりんシナリオで、りんこりんがお兄ちゃんに三回目のデートに誘われたときの『ばっかじゃないの?』は『ほんとは行きたいけど、素直になれない』台詞だけど、みやびちゃんシナリオでバカ兄貴がみやびちゃんから逃げたときの『ばっかじゃないの?』は『本気で叱って励ましてる』台詞なわけ!」
「じゃあやっぱりオーケーってことじゃないの?」
いまの喩えだと、桐乃も『ほんとは行きたいけど、素直になれない』から『ばっかじゃないの』って罵倒してきたんでしょ?
「だから違うっつーの! ゲームと現実を一緒にすんなっ! つーか、りんこりんとあたしは別の妹なんだから、同じようなシーンでも違うこと考えてるかもでしょ! なんでそんなこと分かんないわけ!?」
えー、要約すると、同じ『ばっかじゃないの』でも時と場合によって台詞の意味は異なってくる、りんこりんと桐乃は別の妹なんだから、同じようなシーンでも違うことを考えてるかもしれない、ってことですね。エロゲキャラであるりんこりんのパターンを現実の桐乃にそのまま当てはめた京介に対して、ゲームの妹キャラと現実の妹を一緒にすんなと怒っています。
メタ的に言えば、伏見先生からの「桐乃の言葉をそのまま鵜呑みにしないでください」という読者に対する説明とも取れますね。これはインタビューなどからの推測ですが、俺妹はラノベを初めて読むという読者が多かったらしく、伏見先生が意図したように読んでくれる読者が思ったより少なかったので、わざわざこういった説明を入れたのではないかと思われます。
ちなみに、これまでの考察記事で、僕がわざわざ書かなくてもわかるだろうことまで、細々と説明して解説してきたのも、そういう読者層に向けてのものです。(もちろん、僕が読み取ったのがすべて正確という保証もないですよ? あくまで僕の解釈にすぎないです)
P.14
「う、薄着の妹に欲情するとか、マジキモいんですけどぉ!」
ちょっと寒くないの? って聞いただけでこのリアクションだよ。
マゾの資質を試されている気分になるぜ、ったく。
つまり……さっきの『ばっかじゃないの?』には、ゲームとは違う桐乃さまならではの意味が込められているので、ちゃんと察して対応しなさいよ、ってことか。
分かっちゃいたけど……
めんっどくせえ女だなぁ~~~~~~~~~~~~!
本当に、なんでこんなめんっどくせえ女を京介は好きになったのか……ドMだからしょうがないんですが。
P.15
「てかさー、なんであたしがあんたなんかとクリスマスデートしなくちゃいけないワケぇ? しかも二年連続で。ばっかじゃないの? マジで、ばっかじゃないの? ほんっと、ばっかじゃないの?」
まさかの三連発『ばっかじゃないの?』だった。
追い詰められたベジータのような連続攻撃である。
いまの『ばっかじゃないの?』、それぞれどういう意味だか、分かるやついる?
ちなみにこいつの兄貴である俺の翻訳によると、
『……とりあえず、当日のプランを説明して。本当に楽しませてくれるのか、採点してあげるから。ふん、できるもんなら、あたしを説得してみなさいよ』
ってところじゃねーかと思うんだけど……どうだろうか。俺よりも桐乃語の翻訳に長けているやつがいるなら、是非とも教えて欲しいもんだ。
な、難易度高すぎでしょ……。
この『ばっかじゃないの』三連発を正確に訳すには、読心術並の翻訳能力が必要だと思うんですが。僕も、これまで散々桐乃語を翻訳してきましたが、これはさすがに無理です(笑)
P.18-19
あーくそ! ダメだダメだ! 今年のクリスマスは、どっか妹をいいところに連れてってやるか――なんて殊勝なことを考えた俺がバカだったぜ。
結論――俺の妹はマジでクソ、誰も異存はないよな?
異存はないです(笑)12巻の桐乃はマジでクソと思える描写が多いので。
P.21
「――うし、じゃあ……行くか」
「ん」
俺が右手を差し出すと、素直にバッグを渡してくる。
「で?」
このムカつく『で?』は、たぶん『どこから行くの?』という意味……のはず。
「まずは買い物からだな。俺の服、見繕ってくれるんだろ?」
「それがいーかな。ダサいカッコのままでとなり歩かれたくないし」
「へいへい、すいませんね」
これくらいの罵倒では、もう痛くないぜ。むしろこいつらしくて微笑ましくさえある――って、こんなことを考えているから、俺は御鏡からドMとか言われるんだな。……反省だ。
桐乃とのデートも三回目とあって、桐乃の扱いにも、だいぶ手慣れてきた京介。
桐乃の可愛げのないクソでかい態度は、見てるこっちがムカつくんですが、ドMの京介にはご褒美なんですかね?
P.23
「やれやれ……俺たちも周りからはカップルに見られてんのかな?」
「ば、ばっかじゃないの!?」
これ、さっきから何度目の『ばっかじゃないの』だよ。連発しすぎて、いちいち意味を解釈すんのも疲れたぞ。当たってんのかどーかも分からんし。
京介が疲れちゃったので僕が代わりに解説すると、この『ばっかじゃないの』は照れ隠しでしょう。
「は、はぁ? 妹相手に、何言っちゃってんの!?」って感じでしょうか?
P.23
「つか、加奈子が言ってたじゃん。――あたしたちが並んでても、恋人になんか見えないってさ」
「そーだっけ」
よくそんな細かいことを覚えてるもんだ。感心しちまうぜ。
桐乃がよく覚えてるのは、それだけ印象的な言葉だったからでしょう。
加奈子にそう言われたことを、桐乃は内心、相当気にしていたと思われます。
P.24-25
「か、彼氏ヅラすんなっての」
「してね――――よ!」
街中だってのに大声出しちゃったよクソ。
「はあ? してたっしょいまァ」
「してねえって」
「チョーしてましたぁ~~、『俺たちカップルに見られてんのかな』とか、『恋人に見えなくて残念』とかぁ、ちょーしこいてたじゃーん。超カワイイ妹相手に!」
「そういうつもりで言ったんじゃねーよ」
揚げ足取りやがって。政治家の気持ちがちょっと分かったぜ。
「じゃーどーいいうつもりで言ってたワケ?」
「どういうつもりもなにも、単なる雑談だろうが。おめーこそ意識しすぎなんだっつーの」
「!? い、意識なんてしてないし!」
「はあ? してんだろ?」
「してない!」
「超してましたぁ~~、自意識過剰になって俺の発言を深読みしまくってましたぁ~」
どうみても痴話喧嘩です、本当にありがとうございました。
この後、二人とも、相手に告白するつもりでいるので、お互い意識し過ぎているのでしょう。
P.28-29
「桐乃、写真撮っとくか」
「お、あんたにしてはいいアイデア」
「よし、んじゃツリーの前に立て。撮ってやる」
桐乃から小さなデジカメを受け取って、言う。
「あー……うん、でもなぁ」
と、何故か逡巡している様子の桐乃。
ん? ノリ気だったんじゃねーのかよ。
『おい、どーした?』と聞こうとしたら、俺たちのやり取りを見ていた若いカップルが話しかけてきた。
「よかったら、僕が撮りましょうか?」
「その代わりに、あたしたちのツーショットも撮ってください」
――――なるほど。
「じゃあ、お願いしてもいいですか?」
――ぱしゃ。
そうして、思い出の一枚がメモリーに刻まれた。
写真を撮ってくれたカップルと別れた後で聞いてみた。
「ひひ、なにおまえ、俺とツーショットで写真撮りたかったのか?」
「ばーか、キモいこと聞くなっつーの」
ツーショットで写真を撮りたかったことを否定しない桐乃。
否定しないということは、京介の言う通りということです。
P.35-36
「あんとき、俺、おまえにオタクの友達ができて――安心したんだぜ」
「…………そ」
ぷいっとそっぽを向いてしまう桐乃。いつもならそのまま歩いて行ってしまうのに、今日は一言だけ返事があった。
「…………あたしも、あの日は嬉しかった」
「そうかい」
そんなら――女子中学生三人に、アキバの街を連れ回された甲斐が、あったってもんだ。
一年と半年前の俺に教えてやりたい。
おまえが渋々やってきたことは、ちっとも無駄じゃないんだぜってよ。
ここの桐乃の嬉しかったは、「オタクの友達ができて嬉しかった」というのと、「京介が自分のために色々してくれて嬉しかった」の2つの意味があるのでしょう。京介がそこまで察しているのかどうかは、この描写からはわかりませんが。
P.37
「ちくしょう……結構みんな彼女いるんだな……」
俺は実の妹と来てるってのに。
桐乃の実妹描写。
桐乃が実妹であることに異論を挟む余地はないので、もういい加減、この手の描写を拾う必要はないかもしれませんが、うちは実妹キャラ専門ブログなので、最後までしつこく拾わせていただきますよ。
P.37
「堂々としてろっての。――――あんたが一番、羨ましがられてるんだからさ」
――――。
はっと耳を澄ませてみれば、
「マジか……」「あいつ、冴えねーのにあんな可愛い娘と……」
桐乃の言うとおりだった。まあ、考えてみりゃ確かに、俺が一番可愛い『彼女』を連れてきてる――周りにはそう見えるわけで。
サラッと桐乃が一番可愛いと語っちゃう京介。
桐乃の容姿への評価は、1巻の頃から変わらず高いですね。
P.38-39
バカップルどもをガン見する俺と桐乃。
「な、なに赤くなっちゃってんの!?」
「う、うっせ! 人のこと言えんのかよ!」
「キモッ、キモキモキモっ! ばかじゃん!?」
「……お、お前のほうがキモいっ」
「…………つ、つかなんなのこのバカップル……家でやれっつーの……」
両拳を、ぎゅ、と握りしめ、真っ赤な顔で俯く桐乃。
ここの桐乃の『キモッ』も照れ隠しですね。
……っていうか桐乃の『キモッ』と『ばかじゃん!?』は、ほとんど照れ隠しです。
それにしても、両拳を握りしめ、真っ赤な顔で俯く桐乃は可愛いですね。いつもこうならいいんですが……。
P.39
そんな妹に、俺は――
「ほらよ」
着ていたジャケットを、羽織らせてやった。
「――」
桐乃は一瞬、びくっと肩を震わせてから、キツい眼差しで俺を見上げる。
「……ふん、余計なことすんなっつの」
俺は、ぴ、と前を指差し、
「……さすがにアレの真似はできんからな。これで勘弁しろ」
「あ、あったり前でしょ……」
ここの『……ふん、余計なことすんなっつの』は桐乃語で「ありがとう」という意味でしょう。
最後の『あ、あったり前でしょ……』は7巻 P.42の偽デートで、カップル用のパフェを頼もうとしていた時にも出てきましたね。つまり、本当はバカップルみたいにやって欲しかったと。
P.43-46
一方その兄貴はといえば、悠然とした態度で、妹の肩を抱き、
「兄妹ですがカップルですよ。――お姉さん、何か問題が?」
「…………ないです」
赤城かっけぇ――!! 店員さんもそう言うしかないわなそりゃ。
なんだこの兄貴、超キモいんですけど。でもかっけぇ――!!
(中略)
「お、おう」
やや引き気味に、そう答えるしかなかったよ。
……いや、だってさ。俺も大概、やむを得ない状況で変態的な言動をしてきた自覚があるけども、赤城と比べちゃうと可愛いもんだもん。
妹と一緒にカップル限定の列に並べちゃうとか、まずその神経が信じられないし、カップルを装うためとはいえ、妹とバカップルのごとくいちゃいちゃいちゃいちゃ――なんなのこの兄妹!? 爆発しろ! ケッ、言っておくが、羨ましくって言ってるんじゃねーぞ!
(中略)
「今日発売の新作18禁ゲーム『くりすます聖夜(ほーりいないと)』をください! 『クリスマス限定、ちょっぴりエッチな聖夜たんフィギュア』も忘れずに!」
もちろん俺は、堂々と言い放った。
ここの京介は、赤城を羨ましがって、対抗心燃やしまくりですね。
この辺の京介の本音は、9巻の「俺の妹はこんなに可愛い」で赤城から見た京介の超シスコンな態度を見てれば丸わかりですね。
P.49
「ほんとだって。へっ、この前とは違うってところを見せてやんよ」
「へーえ。自信ありげじゃん」
「まあな」
この日のために必死こいて準備をしたのだ。もちろん勉強の方もおろそかにせずにな。
この前とは、7巻第一章の偽デートの時ですね。
妹のために必死こいて準備する京介。このマメさには頭が下がりますね。
P.50-51
「ホテル取ってあるから」
「あんた正気!?」
桐乃がとんでもない声を出しやがった。
「おいおい、でけー声出すなよ。空いているとはいえ電車の中だぜ?」
しかし桐乃はさらに興奮した様子で、力を込めて叫ぶ。
「う、うっさい! あんたがいきなり超ありえないこと言い出すからでしょ!?」
「どこがありえないってんだ。荷物多いし重いから、一旦ホテルに置いてから出かけようぜって当たり前の提案をしているだけだろ?」
「こ、口実乙ぅ! 二年連続でイブに妹をラブホに誘う兄の、どこがありえるって!?」
「ら、ラブホじゃねーよ!」
「は、はあっ?」
「俺が予約したのは普通のホテルだ!」
「そ」
言葉に詰まった桐乃は、顔を真っ赤にし、
「それを先に言え――――っ!」
掴みかかってくる。俺は「ぐえっ」と情けない声を上げて、
「な、なにキレてんだ! 勝手に勘違いしたんだろ!」
「か、勘違いするような言い方するからでしょ!」
「普通は勘違いしねえよ! このエロ! エロ妹! さすがはイブに兄貴をラブホに連れ込む妹だな!」
これは京介の言い方も悪いですが、勘違いする桐乃も桐乃ですね。いくらクリスマスとはいえ、普通に考えたら高校生の兄が中学生の妹をラブホに誘うだなんて、ありえないことですし。
このクリスマスデートでは、桐乃が京介のことを意識しまくってるのがよくわかります。
P.52
三十分後――俺たち兄妹は、スカイツリーから少し歩いた位置にあるホテルの一室にいた。
もちろん一室しかない安部屋である。家具はシングルベッドとやや広めのデスク、椅子が二脚くらいしかない。
ベッドはシングルベッド一つだけです。
大事なことなのでもう一度書きます。
ベッドはシングルベッド一つだけです。
のちの考察で出てくるので覚えておいてください。
P.52-53
「ふー……あー、重かった」
肩をぐるりと回してから、妹を見た。桐乃は部屋の入口付近に突っ立ったまま、複雑そうな顔をしている。
「? なにやってんだ? さっさと入れよ」
桐乃は腕で自分の身体を抱いて、
「…………変なことしないでしょうね」
「なんだ変なことって、するわけねえだろ」
お袋みたいなこと言いやがって、自意識過剰にも程があるぞ。警戒しすぎだっつーの。まあ、そう言ったらまためんどくさいから、口に出しては言わねーけどよ。
「な~んか最近のあんたは、あたしのことをエッチな目で見ているような気がすんだよねぇ……」
……本気で心配している口調で言いやがった。どうしたもんかな、これ。
参考までに、妹がいるやつに聞きたいんだけど、妹からこんなこと言われたらどうする? 弁解するのも嫌になると思わないか? 俺はなってる。
露骨に京介を警戒する桐乃。
明らかに自意識過剰……と言いたいところですが、実際のところ、この時点で京介は桐乃を恋愛的な意味で好きなわけで、桐乃の警戒はまったくの的外れというわけでもないんですよね。
>参考までに妹がいるやつに聞きたいんだけど、妹からこんなこと言われたらどうする? 弁解するのも嫌になると思わないか? 俺はなってる。
仮に僕が妹からこんなこと言われたら「アホか、こいつは? 兄妹で一体何があるっていうんだ?」って思うでしょうねぇ。僕はこんなブログやってますし、リアル妹もいますけど、二次と三次はキッチリ分ける派です。
P.53-54
「最近のおまえこそ自意識過剰すぎじゃないか?」
「――――」
会心の一言! 桐乃はまん丸に目を見開いた。俺の台詞が、思い切り急所に炸裂したらしい。
「そっ……! そそそ、そそそそそそ!」
「落ち着け。最後まで言えてないぞ」
動揺のあまりバイブレーションモードに突入していた桐乃は、さらに数秒間の「そそそそ!」を続けてからようやく、
「なことないしっ!」
そう言い切った。
「いや、あるだろ」
いまの激しすぎるリアクションから見ても、最近の桐乃が自意識過剰なのは図星で、そこにはなんらかの理由があるに違いない。
この桐乃が自意識過剰な理由は、のちに明かされますが、京介に告白するつもりだからですね。
P.55
「正直言うとね、あたしが自意識過剰になってんのは……自覚ある。……あくまであたしの勝手な理由だから、あんたは気にしないでいいよ」
P.241
「もしもあんたが告白してこなかったら――今日、あたし、あんたに告白するつもりだったんだよね」
先に説明しておくと、ここです。
P.55-56
「でも、最近のあんたがあたしをエッチな目で見てるってのはマジだよね?」
「またそこに戻ってくんのかよ!」
前言撤回! 俺たちは一生分かり合うことなどできん!
「気付いてないとでも思ったわけ? あたしがソファで寝転んでるときとかさー、エロい目で見てたっしょ。肩のあたりとか」
桐乃はこの問題をうやむやにする気はないらしく、ずずいと顔を近づけて、据わった瞳で追及してくる。
「どーなの? はっきりして!」
「…………俺がおまえの、服から露出した肩をエッチな目で見ていたって? フッ……残念だったな桐乃、そいつは大いなる誤解だぜ」
俺は余裕綽々の態度と、凛々しい声でこう言った。
「俺が見ていたのはケツだ」
「死ねえ――!!」
(中略)
「くぅ……さ、最近のあんたは妹にセクハラしすぎ!」
「兄妹なんだから、別にケツくらい見たっていいだろ?」
「いいわけないでしょッ!」
そうかなあ。
このやり取りを見る限り、京介が桐乃のことをエッチな目で見ているのは間違いないようです。
最後のやり取りを見ると、どうも京介はこれをセクハラとは思ってなくて、それぐらい兄妹なら別にいいだろ? と本気で思っているような節があります。桐乃による京介の妹エロゲ教育は、効果を発揮し過ぎてますね(笑)
P.57-58
「この場所と状況を考えれば、俺がおまえを、どうやって楽しませようとしているかなんて――容易に予測できると思うがな」
「っ!?」
桐乃は後方、つまり自分が腰掛けているベッドを意識したらしく、全身を硬直させた。
「あ、あんたまさか! ここであたしを……!」
「ちっげーよ! どーして今日のおまえはそういちいちエロい勘違いをするんだっつーの!」
もしかして誘惑してんのか! 絶対押すなよ系のフリかと思っちゃうだろ!
桐乃の自意識過剰描写。
京介が考えているようなフリではないでしょうが、意識し過ぎなのは確かですね。
P.59-60
「は? なにばかなこと言っちゃってんの? 二次元で素敵なイブを過ごすのも、現実で素敵なイブを過ごすのも、突き詰めれば同じことじゃん」
「……同じじゃないと思うよ」
俺、こんなに素でツッコんだの初めてじゃないの?
ばんっ! 桐乃がベッドを平手で叩いた。
「同じだって! よーするに、あたしが幸せだって感じることができれば、それでいいんだから! イブを過ごす相手は、あんたでも、聖夜たんでも――」
桐乃はそこで言いかけた言葉を止め、ボッと真っ赤に茹で上がった。
「こ、この言い方だと変な誤解されそうじゃん!」
「知るかよ!」
自分で自分にツッコんで怒ってやがる。
聖夜たんと二次元で素敵なイブを過ごすのも、京介と現実で素敵なイブを過ごすのも突き詰めれば同じで、桐乃は幸せだって感じることができる。
つまり、京介と現実で素敵なイブを過ごすのに幸せを感じると桐乃は言ってしまったも同然なわけで、それに気づいた桐乃は、顔を真っ赤にして誤解だと必死に否定しています。
P.68
もうヤケクソだった。ていうか、俺の『予定』を遂行するためには、天望回廊に行かなくてはならんのだ! ……まぁもっとも、当初の予定など、空が曇った時点でかなり狂ってしまっているのだが。
『予定』というのは、桐乃への告白ですね。
P.71
「おまえの――進路のことなんだけどさ」
本題のうち一つを、切り出した。
俺も桐乃も、相手ではなく地上を見つめ続けている。
「……ああ、聞いたの?」
「おう……聞いた」
「誰? ……あやせ?」
「――ああ、当たり」
描写はないですが、桐乃が海外に行くことはあやせから聞いたようです。
これを京介は、一体いつ聞いたんでしょうか?
10巻 P.339-340
「一月ぶりだな」
「そうですね」
試験が終わってから、あやせは俺の家に来なくなっていた。
10巻 P.344
「ありがとうございます。気を遣ってくださっていたんですよね、この一ヶ月。わたしがまた、自分に都合のいい解釈をして、折り合いを付けられるようになるまで――待っていてくれた」
「…………」
「だから、わたしに連絡をしてこなかったんでしょう?」
あやせが桐乃から海外に行くと聞いたのは、おそらく11月のどこかでしょう。
11月初めにあった試験が終わってからあやせが京介に告白するまでに、京介とあやせは一度も会っていないし、連絡も取り合っていない。
ということは、描写されていないだけで、この時に聞いたのでしょうか? 振られた後にメールで教えてくれたという可能性もなくはないですが……。
P.72-73
「あのさ……桐乃」
「……えっ?」
「俺、好きな人がいるんだ」
そうして俺は、決定的な言葉を口にした。
俺の大切な人に、後戻りできない決意を伝える。
俺の好きな人が、誰なのかを。
「…………」
それを妹は、最後まで呆然と聞いていた。驚きすぎて固まっていたのかもしれない。
「……ごめんな」
話に区切りを付け、まっすぐ彼女の顔を見つめる。桐乃はいまだ表情を変えない。
――――数秒の後。
妹の頬を一筋の涙が伝った。
「っっ!」
踵を返し、駆けていく。
その背中を、俺は呆然と見送った。
ここの描写は、好きな人=桐乃以外の人物であると読者に思わせるためのミスリードで書いたのでしょうが、かなり苦しいですよね。後から読めば大切な人と好きな人は桐乃で、「……ごめんな」は「(びっくりさせて)……ごめんな」という意味だとわかるし、話に区切りを付けという部分も、桐乃の気持ちが落ち着くのを待つためだという意味だとわかりますが、ミスリードにしても反則ギリギリの描写で、読者を納得させるような上手い書き方とは言えないです。
第二章
P.87
何故なら、加奈子と親父に見つかって以来、あのゲームは超厳重に隠してあるのだ(もちろんプレイなんてしていないぞ。一回しか!)
結局『おしかけ妹妻~禁断の二人暮らし~』をプレイしたんですか(笑)。妹から貰ったものとはいえ、大事な試験前にも関わらずちゃんとプレイするとは、京介も律儀ですね。
P.90
「…………桐乃って……やっぱりお兄さんと……こういうことしたいんでしょうか?」
「お、おい! 何とんでもないことを言い出すんだよ!」
「あ! そ、そういう意味じゃなくて……! わ、わたしじゃなくて、自分でお兄さんのお世話をしたかったんじゃないかなって、このタイトルを見て思ったんです!」
「――――」
俺は一瞬、大きく目を見開き、
別にもう帰って来なくてもいいよ。超! せいせいしたし!
あたしが、一個だけ、言うこと聞いてあげる。
「…………そうだったら、いいな」
心からの笑みを浮かべるのだった。
わざわざこんな描写を入れるということは、桐乃の本心はおそらくあやせの言う通りなのでしょう。それをしなかった理由は、(家事なんてロクにしたことがない)自分が行っても、京介の勉強の邪魔になるというのと、両親に疑われている自分が京介のお世話をするわけにはいかないという事情があったからでしょう。
あと、「こういうこと」とあやせに言われて、即エッチなことを思い浮かべる京介は、桐乃のことを性的に意識していると見て、間違いないでしょう。そう思い浮かべた理由には、もちろん黒猫や自身の問題発言(10巻 P.140-141)「私は京介が実妹と■■■■(ピー)していても構わないわ!」「桐乃って、俺と■■■■(ピー)したがってるの?」も関係しているでしょうが。
P.92
「いまのオマエは天使じゃねぇ! 下着ドロだ!」
「誤解ですーっ!」
ぎゅーっと拳とともに俺のぱんつを握りしめるその姿には、カケラほどの説得力もありはしなかったよ。俺は深刻な口調で顎をさわる。
「そうか……やっと分かったぜ。最近――まだこっちに引っ越してくる前からだが――俺のぱんつが少しずつ減っているような気がしていたんだ。――犯人は貴様か!」
「それは本当に誤解ですっ!」
P.94
「そうか……ほっとしたぜ。かぶったり嗅いだり舐めたりするつもりじゃなかったんだな」
「当たり前です! 何を想像しているんですかこの変態!」
『押しかけ妹妻』に、そういうシーンがあったんだよ。
俺が変態なわけじゃなくて、あのゲームを作ったやつと、俺にむりやり貸してきた桐乃こそが変態なんだよ。分かってくれ。
この描写は……。
4巻 P.152で黒猫が制作した漫画に出てきた、桐乃の「兄のぱんつくんくん疑惑」が更に深まってしまうのですが……。これはもう「桐乃は兄のぱんつを盗んで、くんくんしている」と解釈していいんですかね? もし、違うというなら「なぜ作者はわざわざこんな描写を入れたのか?」「4巻に続いて、なぜ作者はこの描写に執拗にこだわるのか?」という疑問に対する説明ができないのですが。
P.102
鬼教官の監視の下、再び受験勉強に取りかかった俺。
正直、かつてない捗りっぷりである。まさか俺って、虐げられて伸びるタイプなのではと不安になってしまう。だとしたら桐乃の人選はまさに神がかっていたってことになるが――。
京介のドM描写がこんなところにも。
10巻で桐乃があやせを指名したときは、桐乃は人を見る目がないものだと思いましたが、実際は効果大でしたね。まぁ、桐乃がそこまで考えてあやせを指名したわけではないでしょうが。
P.106
「うーん。大胆すぎるし、中学生には、まだ早いかな」
あやせがこんな格好してくれるのが嬉しくないわけじゃないんだが、心配な気持ちもある。
「この際だから本音を言うけど、桐乃にも、水着とか、そういうなんか露出多い仕事は……やめて欲しいんだよな。いや、かわいいとは思うし……おまえらの仕事を軽んじてるわけじゃなくてさ。ただ、俺は」
なに言ってんだ俺。あやせ怒っちゃうだろ。
ところがあやせは「ぷっ」と噴き出した。
「お兄さん、なんだかお父さんみたいです」
これは、兄として心配という部分と独占欲が半々ってところでしょうか? 兄や男なら何となくわかる感覚だと思いますが。
さりげなく桐乃のことをかわいいと言っちゃってるのもポイント。
P.109-110
「このヘアピンは、昔――桐乃が『ある人』からもらったものを、大切にするあまり毎日着けるわけにはいかなくて。それで同じデザインのものをたくさん買ってお気に入りにしていたんだそうです」
「へえ」
「譲ってもらうの、大変だったんですよ」
「そっか。でも、なんでそれがヒントになるのか、わかんねーな」
「へえ、そうですか。ちなみにお兄さん」
「なんだ?」
「なんだか幸せそうな顔をしていますね?」
……………………。
「んなことねーよ」
ところで。
まったく脈絡のない、ちっとも関係のない、どうでもいい話なのだが――
遥か昔、中学生の頃の高坂京介が、珍しく妹にプレゼントをしたことがあってだな。
確かそれが、たった500円のヘアピンだった。
まぁ……全然関係のない話だけどな。
桐乃が身に着けているヘアピンは、中学生の頃の京介からもらったもので、桐乃はそれをとても大切にしている。そして、そのことをあやせから聞いた京介は、嬉しくて幸せそうな顔をしている……と。
余談ですが、あやせが京介との買い物に行く時に、その大切なヘアピンを身に着けているのは、それぐらい京介が特別ということですね。
P.110
「さてと、さっそく食材を買いに行きましょうか」
あやせがカゴを持ったので、俺はそこに向かってごく自然に手を伸ばした。
「俺が持つよ」
「え……は、はい」
自然とあやせのカゴを持ってあげる京介。
ここだけ見るとイケメンな仕草ですが、これが妹の調教の賜物だと思うと、なかなか複雑な気分です。
ちなみにこういう状況で女性にカゴを持たせるような真似をすると、十中八九気の利かない男だと女性に思われて好感度が下がりまくるので、男性諸氏は、京介を見習って自分から進んで持ってあげるように。僕も昔は、妹から散々文句言われました……。
P.113
「というわけで、まずはお肉を選びましょう♪」
指を一本立てて片目をつむる。いまの俺じゃなかったら、一発で惚れてしまうだろうと確信するくらい、それは魅力的な笑顔だった。
「いまの俺」は桐乃に彼氏ができるまで彼女を作らないと決めているし、この時点で桐乃への気持ちも自覚しているのでしょう。だから、あやせの魅力的な笑顔も、今の京介には効かないと。
P.126-127
「お兄さん……返事を」
「ああ。――あやせ」
「はい」
「ごめんな、俺、好きなやつがいるんだ」
俺の答えは決まっていた。彼女もきっと分かっていた。
あやせを振る京介。櫻井に続いて二人目ですね。
好きなやつとはもちろん桐乃のことなんですけど、この時点では、読者に黒猫とミスリードさせようとしていますね。
P.128
最低男の台詞みたいだが、してないもんはしてない。
叙述トリックの入る余地もない! 信じてくれ!
叙述トリックという単語が出てくるということは、京介自身も読者を騙しているという自覚はあるようですね。
P.128-129
「うるさいうるさいうるさい! わたしと付き合ってくれないとブチ殺しますよ!」
「あ、あやせっ!」
勢いづいた流れを断ち切るように、俺は声を張り上げた。
それから、声のトーンを落とし、できうる限り真剣に、相手に想いが伝わるように。
「――だめだ。おまえとは付き合えない。もう、決めたことだから」
嬉しいし光栄だが、答えを変えることはできない。
京介の決心の固さが伝わる描写。
P.132
強烈な別れの一撃を見舞ってくれた彼女は、最後に笑ってこう言った。
「さよなら、お兄さん。あなたのことなんか、大嫌いです」
あやせ完全終了のお知らせ。
あやせの出番は、これで最後です。
あやせの最後の言葉が本心なのか嘘なのかについてですが、最後にわざわざ京介の頬にキスをしたのは自分の気持ちに区切りをつけるためで、大嫌いというのは京介(と桐乃)に負担をかけないための優しい嘘だと僕は解釈しました。
10巻 P.345-346
「ずっと嘘を吐いてて、すまなかった」
「こちらこそ」
お互いに、ぺこり、と、頭を下げる。しばしの間があってから、彼女は囁くような声で、
「…………わたし、嘘は大嫌いですけど。こんな嘘も……あるんですね」
「そうかもな」
嘘だって、悪いもんばかりじゃない。
この解釈の根拠はこれ。
嘘が大嫌いなあやせですが、相手のためを思って吐く嘘もあるということを、彼女は既に知っているはずですから。
第三章
P.134
いますぐ叫びだしそうなほど、俺のテンションは高まっていた。
何故なら――
これから俺は、大切な人に、想いを伝えに行くのだから。
ミスリード描写。
今度の告白は自分からすると決めていた京介のこんなモノローグを見たら、黒猫に告白しに行くのではないか? と勘違いしそうになりますよね。正直、これは酷いなぁと今でも思います。黒猫ファンはキレていい。
P.136
色々あって、別れることになったけれど。
俺はいまも、黒猫のことが好きだった。
恋愛的な意味で、彼女のことが好きだ。
ここで――
俺と黒猫の物語を終わらせるために、思い出話をしようと思う。
これはきっとどこにでもある――
花火のようにささやかな、俺たちだけの、青く燃える恋の話だ。
>恋愛的な意味で、彼女のことが好きだ。
ここは何度読んでもよくわからないです。
この時点(12月20日)で京介は桐乃のことが好きで告白すると決めているはずなんですが……二人同時に好きになっているということでしょうか?
黒猫との恋愛を花火のようにささやかと例えているのは、花火のように一瞬だけ咲いて終わった恋という意味だと思います。
P.144-145
「意外と厳しいのね。あなたの妹は、水着写真を雑誌に載せているというのに」
「うっせ。あれだってな、あんまり嬉しくはねえんだよ。つーか、俺が言っても聞かないだろうしな」
「……そんなことはないと思うけれど」
「は?」
「あなたが『他の男に妹の肌を見せたくないから、水着の仕事はやめてくれ』と本気で頼めば、たぶんやめると思うわよ」
「そうかねえ? 簡単に意志を曲げるようなやつじゃないぜ?」
「そうね、簡単に意志を曲げるような女ではないわね。でも、やめると思うわ」
「なんだその、謎の自信は」
結構独占欲強めな京介。
黒猫の言うとおり、京介が本気で頼めば桐乃は水着の仕事をやめるでしょう。根拠は5巻の第四章。あの時も京介が泣きながら本気で頼んだら、留学をやめて日本に帰ってきましたからね。
P.176
あの頃、俺は、五更瑠璃という女の子に恋をしていたから。
彼女の欠点を何もかも含めて愛おしかった。
8巻の考察の時にも書きましたが、あの夏の一時期、京介が黒猫に恋をしていたということは間違いないでしょう。
P.177-179
本当は、もっと早くに告げるべきだった。
ここまで引き延ばしてしまったのは、あの夏があまりにも楽しかったから。
無邪気に恋をしている日々が、とてもとても刺激的で、喜びに溢れていたから。
終わらせてしまうのが惜しかった。失敗ばかりの拙い恋を、もっと続けていたかった。
いまもそう思っている。思わないはずがない。
……それでも、認めないと。
他の誰でもない俺自身が決めた時点で、あの夏の日々は、もう二度と帰って来ないのだと。
彼女が夢見た“理想の世界”を、壊さなくてはいけない。
前世からの約束も、来世での運命も、永遠の愛も、すべてを裏切らなくてはいけない。
(中略)
俺たちは最後になって初めて、恋人らしく呼び合った。
きっともう、お互いの名前を呼ぶことはない。もしかしたら、二度と会うこともないかもしれない。
「瑠璃……俺……俺は……!」
すべてを覚悟して、俺は叫ぶ。
「俺は、おまえと付き合えない! 好きなやつが、いるんだ!」
しかし、あれはあくまで一時期の話。
今、京介が好きなのは間違いなく桐乃であって、黒猫ではないのです。
P.184-185
俺たちが二人で遂行してきた儀式の数々が、出会ってからいままでに積み重ねてきた日々が、ばらばらになって消えていく。
その様子を――俺は、呆然と見つめていた。止める権利などなかった。
実行している黒猫は、自分が何をやっているのかを完全に理解した上で、びりびりと、びりびりと、淡々と、淡々と……想い出を切り裂いていく。
やがてすべては終わった。
「――呪いは解けたわ」
俺たち二人の宝物は、未来は、濡れた地面に落ちて、しめって、読めなくなって……
それでおしまい。
「あなたはもう自由よ。今世も……来世も……もはや永遠に私たちが結ばれることはない。それで――いいのでしょう?」
「……黒猫」
呼び方が――以前のものに戻っていた。
“運命の記述(デスティニー・レコード)”は黒猫自身の手で粉々に破かれ、黒猫が京介にかけた呪いは解けました。わざわざ「今世も……来世も……もはや永遠に私たちが結ばれることはない」とつける念の入れよう。ゲームや漫画などのIFはともかくとして、原作では京介と黒猫が結ばれる可能性はありません。
黒猫の言うとおり、これで京介は自由。京介の呼び方も先ほどの瑠璃から黒猫に戻っています。
P.185
「そう……最初から……っ……」
ぽつり。
「こんな……こんな結末なんて……」
ぽつり、ぽつり、と、涙が零れる。
「分かって……っ……」
嗚咽は段々と強まって――
「……ひっ、うっ……あああああ……ああああ……っ」
予言書に描かれていたとおりの、慟哭。
黒猫は最初からこうなることを薄々わかっていたのでしょう。
予言書にわざわざ慟哭の描写を描いていたということが、その表れです。
黒猫は桐乃の京介への気持ちに気づいていて、それを引き出すために、京介に告白した(麻奈実が指摘したとおり、もちろん自分を選んでくれたらいいなという気持ちはあったでしょうが)。その結果、見事に桐乃の本音を引き出すことに成功し、京介も桐乃の気持ちとしっかり向き合うことによって桐乃への気持ちに気づき、桐乃に告白することを決断しますが、黒猫自身は京介から振られてしまう。何とも残酷な結末ですが、これは黒猫の自業自得でもあります。
9巻のP.76でも桐乃が指摘していますけど、黒猫がやりたいことはわかるのですが、やはりやり方がまずかった。結果的に、黒猫の希望通り、高坂兄妹が仲良くなることはできましたが、それはあくまで結果論であって上手く行くという保証はなかったですし、結局黒猫や京介、桐乃も深く傷ついたわけで。
重ね重ね言いますが、8巻のラスト時点でちゃんと黒猫が振られていれば、こんな後味の悪い結果にはならなかったと思うんですけどねぇ……。
12巻が読者に低評価なのも、この辺りに理由があるように思います。意味の無い先延ばしをしたあげく、京介が次々と女の子を振っていくというこの展開は、どうしても振られた女の子たちが気の毒過ぎて、モヤモヤしたものが残るんですよね。
P.194
「おまえは……どうして」
「見届けに来たのよ。あなたの顛末を」
「……そっか……だよな」
彼女の言葉に得心する。
俺が、当たって砕けるところを見れば――少しは黒猫の溜飲も下がるかもしれない。
もちろん怒りなんてなかった。
ここは京介が勘違いしていますね。(これで、一体何回目だろう……)
黒猫は京介が当たって砕けるところが見たいわけではなく、手伝いに来たわけですから。
P.199
「――俺はおまえが好きだ。だから、どこにも行くな」
「――っ」
桐乃は眼を見開いて硬直した。真っ赤になって、けれどいまにも泣きそうな顔で。
まったくな……まるで妹モノのエロゲのクライマックスシーンだ。
それを――俺たち兄妹が、やるなんてな。
――事実はエロゲーよりも奇なり、ってやつだよ。
京介の告白。
初めて読んだ時は、本当に驚きましたね。
「京介が桐乃のことを恋愛的な意味で好きなのではないか?」と思われる描写は確かにいくつもありましたが、多くの人は「あくまでそれは妹としてであって、恋愛感情ではないだろう」と思っていたでしょう。僕自身も、正直半信半疑でしたからね。そう思わせる描写はあっても、実際に確定された描写は何一つなかったですし、「千葉県とコラボし、アニメ化までした作品でさすがに実妹エンドはやらないだろう」という常識に縛られていましたから。
P.199-200
『俺は! 妹が好きだぁぁぁぁぁぁぁっ! だから! おまえとは付き合えなああああああああああああああああああああああいっ!』
『誰よりも好きなんだ! 手放したくないんだ! そばにいて欲しいんだ!』
『その気持ちを、伝えに行くと決めた! だからおまえの気持ちには応えられない!』
『好きで好きでしょうがねえんだよ! 俺は妹を愛しちゃってる変態なんだよ!』
京介が黒猫に向かってした告白。
一つだけ残念なのが「妹を愛することを変態と表現するところ」ですね。ここはどうしても引っかかりました。
P.202
それでも、伝えようと決めたのだ。
あんな最悪な振られ方をしたってのに、いまもグレた振りして俺の背中を押し続けている――どこまでもお人好しな誰かさんのように。
これは黒猫のことですね。
P.202
「拒絶されるって分かってても! 受け容れられないかもって不安でも! 振られたら超傷つくって分かってても! 想いってのは、伝えなくちゃなんねえんだよ!」
「――――」
自分に吐き続けてきた嘘を、嘘だと認めようと決めたのだ。
勇気を出して見本を見せてくれた――かっこいい誰かさんのように。
嘘を吐き続けてきたことを、ようやく認める京介。
一体今までどれだけの嘘を吐いてきたんですかね? あまりに多すぎて、僕も検証するのが大変でしたよ。
>勇気を出して見本を見せてくれた――かっこいい誰かさんのように。
これはあやせのことですね。
12巻のプロローグ(11巻の巻末)で黒猫とあやせが桐乃を焚きつけるシーンがありましたが、京介もまた、黒猫とあやせ、桐乃の親友二人による後押しによって、桐乃に告白しています。
P.203
「どこにも行くな! 俺と、結婚してくれえええええええええええええええええええええっ!」
それを聞いた妹は、
「はい」
京介の告白を桐乃が受け入れた瞬間。
何度読んでもいいですね。素晴らしい。