『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の伏線を改めて読み解き、「完全なる桐乃エンド」を考察してみた(2巻編、上)

注意

この記事はライトノベル俺の妹がこんなに可愛いわけがない』を全巻読んでいることを前提に書いています。
おもいっきりネタバレがありますので、未読の方はお気をつけください。

2巻の時系列

日付 出来事 原作
とある7月の土曜日 京介が自宅で『シスカリ』をプレイ 第一章
翌日 桐乃の友達が高坂家にやってくる、京介が事故で桐乃を押し倒す 第一章
7月のある日 麻奈実の家に遊びに行く、ロックが五厘刈りに 第二章
翌日 麻奈実と図書館で勉強 第二章
翌日以降 麻奈実との下校途中にあやせに会う 第二章
3日後 麻奈実の様子がおかしくなる 第二章
翌日 麻奈実に彼氏疑惑発生 第二章
翌日 麻奈実が学校を休む、ロックに休んだ理由を聞くも教えてもらえず 第二章
数日後 麻奈実について、桐乃に人生相談する 第二章
翌日 麻奈実が帰ってきて、うさぎの抱き枕をプレゼントする 第二章
翌日 桐乃にエロサイトを見てるのがバレて、お詫びとして夏コミにつれていくことに 第三章
8月中旬の日曜日 桐乃、黒猫、沙織と夏コミ三日目に参加 第三章
同日 コミケからの帰り道で、あやせに桐乃の秘密がバレる 第四章
上記の翌日以降一週間ほど 桐乃が陸上部の合宿に参加 第四章
9月1日 あやせとのことで落ち込んでいる桐乃を見て、人生相談を最後まで終わらせる決意を固める 第四章
上記後 電話であやせに桐乃との仲直りを持ちかけるも、断られる 第四章
同日夜 あやせを説得するために父親に相談 第四章
翌日 あやせとの対決、桐乃を抱き締めて妹が大好きだと絶叫する 第四章
1週間後 桐乃の偽告白に騙される 第四章

第一章

P.13
『いえにかえるんだな。おまえにも、おにぃちゃんがいるのだろう』

dic.nicovideo.jp
ストリートファイターⅡ』(ストⅡ)のキャラ、ガイルの勝利台詞が元ネタですね。

P.13-14
「チクショ~ッ、またコイツに負けたよっ! いくらなんでも強すぎだろ!? 勝てるかこんなもん!」
妙にムカつく勝利台詞をフルボイスで聞かされた俺は、コントローラーを放り出し、机をバンバン叩いて悔しがった。そして、
「はっ」
はたと正気に立ち返る。催眠術から解き放たれたような気分で頭を抱える。
――お、俺はいったい、何をやっとるんだ……
休日の朝っぱらから、部屋に閉じこもって妹もののエロゲーに熱中している十七歳。
それが俺・高坂京介の現在の姿であった。いや、いやいや。違うんだって。これは違うの。
俺はごく普通の男子高校生なのであって、別にオタクとかじゃないんだからな。
妹がいるのに、こんなふうに妹もののエロゲーばっかやってるのには、ふかーいわけがあるんだよ。なにを隠そう、これは俺の持ち物じゃなくて……妹のもんなんだ。
妹に、むりやり『やれ』と脅されて、仕方なくエロゲーをプレイしているんだよ、俺は。
……ウソじゃないぞ。とうてい信じられないような話だが、俺の妹は、妹もののエロゲーを愛し、子供向けアニメを好んで視聴する、とんでもない女なのだ。

P.16
つい先日も、この『シスカリ』を強引に押しつけられ『いいから、速攻でクリアして。絶対だかんね』みたいなことを言われたのだ。意味が分からない。
それで諾々と従っちまう俺も、情けないっちゃ情けないんだが……。
「っあ――やめだやめだ! やってられっか!」
もうダメだ。限界だ。妹を持つ身でありながら妹もののエロゲーをプレイするという重圧がどれほどのもんなのか、想像できるか? 実際に妹がいる兄貴諸君ならば、分かってくれるかもしれないが――なんかも~段々とやるせない気持ちになってくるんだよ。

シスカリ』を熱心にプレイする京介。
妹にむりやり『やれ』と脅されて、仕方なくエロゲーをプレイしていると言っていますが……。

P.17
いつもの定位置・ソファに深く腰掛け、超短い短パンで足を組んでいる。太ももを見せつけるようにしたラフな服装だが、別に妹の色っぽい姿を見たって、どうってことはない。
いくら見てくれが良かろうと、妹はそういう対象にはなりゃしねえのである。

この頃は「まだ」妹に対して、性的なアレを向けることはない京介。

P.19
くぁ――っ! こ、この、この女だきゃあ……ほんっっとかわいくねえ!
この間、ちらっと見せたあの笑顔は、やっぱり俺の見間違いだったのかもな!
俺の妹が、あんなに可愛いわけがねえし。
クラッ。い、いかん、ムカついて目眩してきた。

目眩がするほど京介がムカついているのは、1巻のラストの桐乃の笑顔で少しは兄妹の仲が良くなるかと思っていたのに、その期待を裏切られたからですね。

P.21-22
ようやく分かってきた。そうかおまえ、自分が勝てる程度の対戦相手が欲しかったんだな?
対戦はしたい。でも負けるのはヤダ。ハンデつけたり、手抜きされたりするのもヤダ。
あくまで本気の相手と対戦して、勝ちたいという……。
くぅ~っ、どんだけわがままなんだよこの女……。

京介はこう考えていますが、本当のところは大好きなお兄ちゃんと、自分の好きなゲームを一緒にプレイしたいからでしょう。

P.22
「ふーん、バカなんだ?」
にやぁ……と嗤う桐乃。
兄をムカつかせる才能なんてもんがあるとしたら、こいつは天才だな。

京介に対する態度がくだけた分、ムカつき度もアップ。
この巻の桐乃の京介に対する態度は全体的に酷いです。

P.22
「時間ないなら、さっさとクリアしちゃえばいいだけじゃん。どうしてもっていうなら、あたしが教えてあげてもいいケドぉ~……でも今日はあいにく忙しいからダメ」
こいつは人の話を聞いているのか? やりたくねーんだってばよ。
眉間に縦ジワを刻んだ俺に向かって、桐乃はこう言った。
「……ったく。攻略サイトでも見れば? せっかくアンタの部屋からでもネットに繋げるようにしてあげたんだからさ」
「……攻略サイト?」
「そ。『シスカリ@wiki』ってサイトが大分詳しいかな。あたしもそこ見てクリアしたし」

眉間に縦ジワを刻んだ京介を見て、さすがに言い過ぎたと思ったのか、攻略サイトを勧める桐乃。
お兄ちゃんと一緒にゲームをするために必死ですね(笑)

P.23
桐乃からアドバイスを受けた俺は、それならもうちょっとだけやってみてもいいか、という気分になっていた。妹ゲーなんざやりたくないってのはもちろん超本音であるが、中途半端なところでやめるのも気分が悪い。それに格ゲー部分だけに限定してみりゃあ、あのゲームも、わりと……その……面白いしな。

チョロすぎる京介。
なんだかんだ言い訳してますが、かなり『シスカリ』にハマっている模様。

P.24
「そんなことになったら、今度こそほんとに他人のふりしなくちゃね、一生」

わかりづらい桐乃のデレ。
裏を返せば、今はちゃんと家族(兄)と認めているということです。

P.25
「とにかく――友達くるからさ。家にいるんだったら、部屋で大人しくじっとしてて」

わかりづらい桐乃のデレ、その2。
外に出かけろと言わず、家にいてもいいという桐乃の気遣い。
妹様の優しさに感謝するんだぞ、京介お兄ちゃん。

……という、冗談はさておき、この桐乃の提案は単なる話(作者)の都合でしょう。
京介と友達を絶対に合わせたくないなら、京介に外に出かけてもらうのが一番なんですが、実際に京介に外に出かけられたら、話的に困りますしね。

P.26
「そーいうコト。くれぐれも、あたしに迷惑かかんないようにね。かわいい子いっぱいくるけど、話しかけたら殺す。見るのもダメ、穢れるから」

この桐乃語を翻訳すると、
「そーいうコト。くれぐれも、あたしに迷惑かかんないようにね。かわいい子いっぱいくるけど、話しかけたら(友達が兄貴に興味持つかもしれないから)殺す。見るのもダメ、穢れる(友達を見て兄貴が好きになっちゃうかもしれない)から」
となります。
一見ムカつくこの台詞には、桐乃のお兄ちゃんに対する独占欲が表れています。

「くれぐれも、あたしに迷惑かかんないようにね」の部分は伏線なので、忘れずに覚えておいてください。

P.27
机に座って、ノーパソをスタンバイから復帰させる。
えーっと……どこでもいいからボタン押しゃーいいんだよな?
最近桐乃からノーパソを借りっぱなしなので、少しずつ手慣れてきたような……。
「……むう」
一瞬、自分が少しずつ何かに侵食されてきているような錯覚に陥ってしまったぜ。
気のせいだといいんだが。

気のせいではありません。
桐乃の「京介シスコン(オタク)化計画」は着々と進んでいるんですから。

P.26-27
「……ったくよ。何様のつもりなんだあいつは……」
そんなこんなで、俺はむかむかしながら部屋に戻った。
ついさっきまでは昼寝でもしようかと考えていたのだが、妹様と喋って眠気がすっ飛んでしまったので、いまさらそんな気にもなれない。
(中略)
俺はとりあえず、ブラウザを起動してみた。(あまりパソコンには詳しくない俺であるが、ブラウザくらいは分かるさ。使い方もな。ホームページを見るソフトのことだろ?)さっき桐乃が言っていた『シスカリ@wiki』とやらを見てみようと思ったからだ。ちなみにこのノーパソでブラウザを起動するのは初めてである。

文句言いながらも、部屋に戻ったら即『シスカリ@wiki』をチェックする京介。
やっぱりハマってるじゃないですか(笑)

P.29
だが、だからこそ、凄いと思う。
同じエロゲーが好き――たったそれだけの想いが集まって、こんなに上等なデータベースを造り出しちまうんだよな……。
俺は先月の事件で触れた『あの感覚』を、このサイトからも感じ取った。

『あの感覚』というのは「オタクに対する親近感」ですかね?
段々とオタクに染まっていく京介。

P.32-33
「……うぉっと」
参照していた動画が、ややエロいシーンに差しかかった。
これはwikiページ内からリンクが張られていた、シスカリの基本的な立ち回りを解説する動画らしいのだが、この動画を作成したヤツの茶目っ気なのか、ラスト付近に、戦闘終了後の『ご褒美CG』を一部収録してあったのだ。
……ううむ……くそう。やっぱ、こういう妹もののエロには馴れんな……。
ゲームとはいえ、妹がエッチなことをされているシーンというのは、見ていて気が滅入るというか、精神的に辛いものがあるんだよ。
桐乃あたりにしてみれば、ゲームと現実はあくまで切り離された別物であり、妹がいるからといって妹ゲーを楽しめないというのはおかしな話であり、二次元と三次元を一緒にするのは甚だキモいということなんだろうが……俺はその辺、いまだに割りきることができないでいる。
この件については、無理なものは無理としか言いようがないんだ。妹がいるのに、妹を攻略するゲームなんかやってられん。妹キャラがエロいことになってるシーンなんざ見たくもない。

妹もののエロに抵抗を感じる京介。
12巻の頃には、自分から妹にエロいことをするようになるんですけどね(笑)

P.46
あいつの部屋には、エロゲーその他のオタクグッズが大量に隠されているのだ。
アレが友達に見付かったりしたら、親バレ以上にとんでもない事態になるよな……。
いや、別に、アイツのことを心配してるわけじゃないぜ。
あんなヤツはどうでもいいし、どうなろうが構いやしない。だってカンケーねえもんよ。
ただ……その、なんだ。テスト前だってのに、また騒ぎを起こされたらイヤじゃんか。
だから俺は、あくまで自分の心配をしているんだ。

「桐乃の秘密が桐乃の友達にバレないか心配だ」
素直にそう言えば一言で済むものを、長々と言い訳ご苦労さまです(笑)

このくだりは、第四章であやせに桐乃の秘密がバレる伏線にもなっていますね。

P.47
するとちょうどニュース番組がやっており、『違法改造を加えたスタンガンで、女性を感電死させようとしたとのことです。男の部屋からは、他にも成年漫画や――』と、ろくでもない報道が流れてきたもんだから、余計に苛立つ。

第四章であやせとの会話に出てくる『シスカリ殺人未遂事件』の伏線です。

P.48
結局俺は、リビングの掃除を手伝ってやり、妹の友達のためにアイスコーヒーを作ってやり、しかるのちにリビングから追いやられ、とぼとぼと自分の部屋へと戻った。

恐ろしく妹に甘い京介。
妹のためにここまでしてあげる兄なんて、なかなかいませんよ。
口ではなんだかんだ言ってても、結局は妹が可愛いという京介の気持ちが伝わってきますね。

P.55
ちょ、ちょっと待て! 桐乃に彼氏だあ!? ウソだろ!?
そんな菩薩のような男がどこに!? 神か? 神なのか?
目を見開いてかぶりを振る。俺の十七年の生涯でも、最大級の衝撃だった。どのくらいかっつーと、ハンドルネーム“沙織"さんの正体を見てしまったときより驚いたわ!
あんなのを彼女に出来るわけねえだろ。精神が保たねえって。

1巻のP.201で母親と桐乃の彼氏について話してた時に比べると、慌てすぎ(笑)
明らかにシスコン度が上がっています。
菩薩のような男はそこにいるぞ!!

P.55-56
『えー? だって桐乃、ガッコーですっごいモテるじゃん、男の子たちからさー』
『そ、それは! そうかもしんないけど!』
そうなのか……ま、まぁ黙ってりゃかわいいからな。学校では猫被ってるみたいだし……見てくれに騙されちゃうかわいそうな男も、そりゃあいるだろう。
いや、待てよ……? 意外とアイツ、好きな男の前じゃ、ちゃんとしてるのかも。
ひねくれた性根を引っ込めて、健気な彼女をやっているんだとしたら。……想像してみた。
「うえ」
吐き気がした。うっげ、ぺっぺっ! しゃれになんねーわコレ。気色悪りい。

なかなかに酷い京介の反応。
この時の反応は素っぽいですね。7巻の偽彼氏の頃とはえらい違い。

P.60
『あはは、言えてる言えてるーっ。なんていったらいっかなぁ……あ、アレアレ。十年後とかぁ、フッツーにしょぼい中小企業とかに勤めて、課長とかやってそうじゃね?』

27歳で課長って、かなり凄いですよ。中学生じゃ、その辺わからないかもしれないですが。
ちなみにこの台詞を言っているのが加奈子だというのが、合本版に掲載されている読み切り『或る結末の続き』で明らかになっています。

P.61
『あれ? 桐乃ぉ……なに黙り込んでんの?』
『……別に?』

大好きなお兄ちゃんを悪く言われて不機嫌な桐乃。
これはわかりやすいから説明不要でしょうが、一応。

P.61
……勝手なことばっか言いやがって。いい加減にしろって怒鳴り込んでやろうかい。
と、俺は非常に不愉快な気分で憤慨していたのだが――そんな真似はできやしない。
どうせ、俺は、腰抜けのへたれだからな。妹の友達に言いたいこと言われたからって、どうしようもないんだよ。……それだけだ。他に理由なんて、ないんだからな。
妙な勘違いするんじゃないぞ。

そんな真似が出来ない理由は、桐乃に迷惑がかかるから。
P.26で桐乃が言った「くれぐれも、あたしに迷惑かかんないようにね」という言葉をちゃんと守る京介。
つくづく妹想いの良い兄貴ですね、京介は。

P.63-64
桐乃は慌ただしくだんだん音を立てて階段を駆け下り、俺の手からダンボールをひったくるや、嬉しそうな声を上げた。
「“エタナー”の箱じゃん! ウソ、なんでなんで? なんであるのっ!」
桐乃は俺の方を見て、困惑と期待が入り交じったような表情になる。
「え? なに? これ……あたしに?」
「は? あ、いや……」
「すごー! これ、あたしでもなかなか手に入らないんだよ!」
なんのこっちゃ分からんが、何やら勘違いが発生しているようだな。どうやらコイツ、このブツを俺からのプレゼントだとでも思ったらしい。よく考えろよ、どうして俺がおまえに化粧品なんざくれてやんなくちゃなんねーの?
「しょうがない、もらっといてあげてもいいよ」

“エタナー”の箱を見て京介からのプレゼントと勘違いし、舞い上がる桐乃。
よほど嬉しかったみたいですね。

P.64
なんてやつだ、誤解を解く気がどんどん失せていくな……。ところで“エタナー”ってのは、メーカーの名前っぽい。ダンボールに英語でエターナル・ブルーなんとかって書いてあるのが見えた。

この“エタナー”は7巻で登場する御鏡に関係するアクセサリーブランドです。

P.64
「しかもこれ……今年の新作じゃん! さっきからアンタがヘボいせいで溜まりまくってた怒り、これでチャラにしてあげるから!」

この溜まりまくってた怒りというのは、さっき桐乃の友達が京介の悪口を言っていたことによるものです。

P.69
八畳ほどの広さに女子中学生が、桐乃を含めて四人いた。桐乃は勉強机の椅子に座っており、その他二人は猫の座布団を敷いた床に座り、最後の一人はベッドに腰掛けている。

沙織から桐乃が持っていったダンボールの中身がエロ同人誌と聞いて、慌てて桐乃の部屋に飛び込む京介。部屋にいる四人は、桐乃、あやせ、加奈子は確定として、残りの一人はランちんですかね?

P.70
くっそー、俺を追い出したら泣くのオメーなんだぞ? 分かってねーんだろうけどよ。なんだって俺はコイツの世間体を護ろうとしてるんだろうな! ったく報われねえ話だぜ!

京介が桐乃の世間体を護ろうとする理由は、「桐乃の秘密が友達にバレて泣くところを見たくないから」「京介が桐乃の兄だから」ですね。口では何と言っていても、京介は妹想いのシスコンですから。

P.70-71
「は? 手違い? いいから出てって。早く。いますぐ」
ずんずん部屋を横切って俺に肉薄するや、両手でぐいぐい押し出そうとしてくる。
「ちょ、待て……そうじゃないんだ! 話を聞いてくれ……」
「うるさい! 出てけって言ってるでしょ!」
取り付く島もない。これは桐乃にしてみりゃ、ごくごく自然な行動だろう。こいつは俺のことが大嫌いで、バイ菌の温床か何かだと思っているフシがある。しかもさっきの会話からすると、俺の評価はこの女子中学生軍団の中でボロボロらしいしな。
一秒たりとも、俺と友達とを接触させたくねーってのは、分かるよ。分かるんだけどな……。

ここの京介の認識は間違っていますね。
桐乃がここまで必死に京介を追いだそうとする理由は、P.26の考察でも説明したとおり、京介と友達が接触してお互い興味を持たれると困るからです。

P.71
「……くっ」
気付け……! 兄の意図に気付くんだ桐乃……! その中身はエロ同人誌なんだって……!
(ちなみに同人誌とやらについては、、先日のアキバ巡りで不本意ながら学習させられたんだぜ。女三人連れてエロ本売り場を見て回るとか、なんの拷問かと思ったもんよ)
「キモいからこっち見んなっ!」
兄妹同士で通じ合うテレパシーとか、昔テレビでやってたけど、ウソだなありゃ。
俺の願いなんざ、何一つ伝わってねぇ。

巻数が進めば目線でお互いの意図を通じ合えるようになる高坂兄妹ですが、この時点ではまだそこまで理解し合ってないのと、桐乃が逆上しているせいで、まるで通じてないですね。

P.71
「くっ……スマン!」
俺は桐乃の手をやや強引に振り払い、逆に二の腕あたりを掴んで、上手く体勢を入れ替えた。
その際、妹からの即座の反撃がくると思っていたのだが――少なくとも即座にはこなかった。
「ひゃっ」という女の子みたいな悲鳴を漏らし、自分の身体を抱きかかえるようにしただけだった。腕に触っただけだろ! 妙な反応をするんじゃない!

京介がちょっと腕に触っただけでこの反応。
桐乃が京介のことを異性として意識しているのは、確定的に明らか。

P.77
「危ねえ!」
俺は前のめりに倒れながらも、咄嗟に手をのばし、桐乃の後頭部に差し入れた。
言っておくが、あくまでこれは無意識の行動だった。別に妹を助けようとしたわけじゃない。

こんな時にまでわざわざ言い訳しなくても(笑)
無意識で妹を庇おうとするって、そちらの方がシスコンレベル高いし、言い訳になってないんですけど。

P.77-78
どしんっ! 俺たちは重なりあって倒れこんだ。桐乃の後頭部と床に挟まれた掌に、鋭い痛みが走る。
倒れこんだまま目を開けると、すぐ間近に妹の顔があった。何が起こったのか分からない――そんな呆然とした表情をしている。たぶん俺の方も同じだろう。
痛みはあるが、桐乃も俺も、たいした怪我はなさそうだ。
……ってて。
「………………」
「………………」
ぴったり密着して、折り重なるように倒れたまま、俺たちは数秒間見つめ合った。
お互いに、事態を認識する時間を必要としていたのだろう。
俺の右手は、あたかも妹の顔を自分の顔に引き寄せようとしているかのような形で、桐乃の後頭部を押さえており。
俺の左手は(断じてわざとではないが)妹の、大きくめくれあがった服から覗くブラジャーを、いまにも引き毟ろうとしているかのようであった。。
そして俺たちの下半身は、もつれ、互いのふとももを密着させる形で絡まり合っている。

ブコメではお約束のトラブル。
京介は断じてわざとではないと言っていますし、実際そうなんでしょうが、隠された欲望が無意識という形で表れたという可能性は排除できませんね。

P.78
「――――――」
この窮地にあって、俺の脳は以下のようなことを考えていた。
……エロゲーだったら、このシーンには絶対イベントCGがあるよな……。
しょ、しょうがねえだろ! つい最近やったゲームで、まったく同じシチュエーションがあったんだよ! と、誰にともなく心中で弁明していたときだ。

エロゲ脳が進行する京介。わずか1ヶ月でこれとは才能ありますね。
倒れた時の京介の反応は、このゲームに影響されたのかもしれません。

P.78-80
「こ、この変態っ! シスコン! 強姦魔ッ!」
「わざとじゃねぇ――!? それと俺は断じてシスコンではない!」

シスコンという単語が出たのは、ここが初めてですかね。
京介はシスコンであることを否定していますが。傍から見るとどう見ても……ね。
ちなみにこの時の挿絵は、俺妹にしては珍しくお色気路線でサービス満点です。
何度見てもエロい。

P.80
「き、桐乃……?」
「うっわ~……ちょっとコレは引くよ~~ぅ?」
「まさか禁断の恋っ!? 二人はそういう関係だったの!?」
女子中学生どもは、俺の想像の斜め上を行く誤解をしていた。
なんでそうなるんだよ! このマセガキどもめ!

台詞的に、あやせ、加奈子、ランちんの順番ですかね?
この時点では単なる誤解でしたが、まさか12巻で誤解じゃなくなる日が来るとは……。

P.80
「「違っっが――――――――――――う!!」」
俺と桐乃は、声を揃えて同じ台詞を叫んだ。
ある意味では、兄妹の気持ちが強固に繋がった一瞬だったさ。

仲が良い兄妹ですね(笑)

P.81
しかし、妹は事情を理解したあとでも怒りが収まらないらしく、俺にさんざん理不尽な制裁を加えた上で、こう言いやがったのだ。
『追放追放追放ッ! みんなが帰るまで、絶対家に入ってこないで! この変態!』
どうやら誤解云々よりも、俺に胸を触られたことをお怒りになっているらしかった。
別に触りたくて触ったわけじゃねーのにさ……。

桐乃が激怒しているのは、恥ずかしさや照れ隠しもあるのでしょう。
京介の方は触りたくて触ったわけじゃないと言っていますが、12巻では明らかに妹の胸を触りたくて触ってましたし、どこまでこの言葉を信じていいものやら……。

P.85
「だけどっ、本気でお兄さんのこと嫌ってるわけじゃないと思うんですよ!」
「そ、そうかぁ?」
「絶対そうですって! 勘ですけどっ!」
簡単に断定するけどな、俺にはそうは思えん。兄貴のこと、めちゃくちゃ嫌ってるだろアイツ。幾らなんでもそりゃあおまえの読み違いだって。つーか、ほんとお人好しなんだな。
それに加えて、結構思い込みが強い娘なのかもしれない。

桐乃は本気でお兄さんのこと嫌ってるわけじゃないと断言するあやせ。
あくまで勘とはいえ当たってますね。
あやせが思い込みが強い娘というのは、第四章の伏線です。

P.87-88
妹の友達。あやせとの出会いは、我が家の庭に、あまやかな余韻を残していった。
あるいはそれは、彼女が付けていた香水の残り香のせいだったのかもしれないが――
ともかくこのとき、俺は、眠り薬でもかがされたように、ぼーっとしたような気分で突っ立っていた。……なんというか、あれだな。年の近い妹がいるやつなら分かってくれると思うが、妹の友達というのは、やたらとかわいく見えるんだよ。妹と同い年の――ガキのはずなのに。
……まあいまの娘に限っては、マジで超美人だったけどさ。だから余計に……むう。
頭をぽこぽこ叩いていると、背後のリビングで、鍵の掛かっていた窓が開いた。
そこから桐乃が、ぬっと姿を現す。
「…………………………」
超無表情。冷たい視線が、俺の眼球をぐさりと貫いた。
妹は、人差し指でくいくいと『こっちに来い』とやっている……。
「はぁ…………そうだったな。おまえ、まーだご機嫌斜めなんだったっけな……」

あやせに心を奪われて、ぼーっとしてしまう京介。
桐乃がご機嫌斜めなのは、まだ怒っていたからではなく、京介とあやせのやり取りを見ていたからでしょう。
桐乃からしてみれば、あれほど京介と友達が接触しないように気をつけて釘まで刺しておいたのに、結局京介とあやせが電話番号とメルアドまで交換することになってしまったのですから、怒るのも無理はないですね。

P.88
さーて。よそん家の美少女はもう帰っちまったし。
数時間ぶりに、我が家の美少女とのご対面といきますか。

京介は、桐乃を美少女と認識しているんですね。
桐乃の容姿についての評価の高さは相変わらずです。

第二章

P.95
「ほーう。それじゃあ、恋愛感情っつーか、そういうのはない?」
「……………………」
俺が眉をひそめると、赤城が急かすように言う。
「ねぇの?」
「………………ああ」

京介と麻奈実の関係について、問い詰める赤城。
京介のこの反応からして、恋愛感情がまったくないわけではないんでしょうねぇ……。
少なくとも、この時点では京介が麻奈実のことを大事に思っているのは確かでしょう。

P.96
「たとえば……他の男が田村さんに言い寄っても、おまえは構わないっての?」
「は? そりゃ構うよ。ダメに決まってんだろ。誰だその物好きは。ぶっ飛ばすぞ」

P.96-97
「じゃあ何か? 高坂……おまえは、こう言うわけか? 田村さんとは単なる幼馴染みであって、付き合っているわけじゃない。惚れてるわけでもない。でも田村さんが他の男と付き合うのはぜってーイヤだと」
「………………悪いかよ」
くそ、どーして俺がこんな台詞を言わなきゃならんのだ。まるで幼馴染みへの秘めた想いに、自分でも気付いていない鈍感主人公みたいじゃねえか。そんなんじゃねーってのによ。
まあでも、この答えは俺の本心ではある。
あの垢抜けない麻奈実の魅力に気づくような目ざといやつがそうそういるとは思えんが――もしもそんなやつが現れたなら、俺は全身全霊をもって妨害してやる。
いいか、俺はあいつのとなりにいるのが一番落ち着くんだよ。色恋とか抜きにしてもな。
それを邪魔しようってんなら、誰だろうと許さん。

P.97-98
「……ふん」
俺はごく自然な動作で、幼馴染みの姿を探す。
するとふと目が合った。麻奈実は『どうしたの?』という眼差しで俺を見つめる。
俺は『なんでもねえよ』という意味で、鼻を鳴らす。
俺と麻奈実との関係は、つまり、そういうものだった。

麻奈実フラグ。
ここまで、京介が素直に自分の心情を吐露するのは珍しい。
言葉を交わさなくても、目と目で通じ合う描写も二人の絆を感じさせます。
巻数が進むごとに幼馴染み(笑)になるんですが、この時点では、まだまだ麻奈実優勢です。

P.98
俺は畳の上に足をのばし、自分の家のようにくつろいだ。ああいや、桐乃がいない分、この家の方が気が休まるかもな。

P.104
俺が求めている生活というのは、こういうものなのかもしれない。
うるせー妹もいないしな。

事あるごとに妹をディスる京介。
もう少し先の巻なら京介の照れ隠しという解釈もできるのですが、まだ、この時点では普通にそう思ってる感じです。しかし、京介は他の人と話してても、すぐに妹を引き合いに出しますね。どこまでシスコンなんだか。

P.106
だから、まぁ、俺はこれでいい。
変わり映えのしない、いまと同じ未来こそが、俺が常に望み、望んできたもんなんだ。
中学時代の俺が望んだ自分が、いまここにいるんだから、何も文句なんてないぜ。
そりゃ、何もかも思い通りってわけじゃねーけどさ……。
妹の事とか、妹の事とか、妹の事とかな。

ここにも過去編の伏線が。
桐乃の人生相談さえなければ、麻奈実の思い通りの未来がやってきていたのでしょう。

P.110
先日知り合った桐乃のクラスメイト、新垣あやせだ。制服を着ているから、学校の帰りなんだろう。同じ美少女でも、セーラー服姿の桐乃は、いかにも小生意気なコギャルという感じなのだが、あやせの場合は清楚な女学生という風情。

サラッと桐乃を美少女と形容する京介。
京介は、誰かを妹と比較しないと生きていけない病気にでもかかってるのでしょうか?(笑)

P.122
麻奈実に彼氏ができるなんて、桐乃のそれと同じくらいに想像ができん……。

ここは非常にわかりやすい比較。
この時点では、俺妹という作品は幼馴染みと妹のバランスが拮抗しています。

P.122
明日も明後日も、俺が望んだとおり、おそらくはいままでと似たような日が続くだろう。
だが、五年後も十年後もまたそうだろうと考えるのは、いささか楽観すぎるってもんだ。
居心地のいい、いまの日常は、いずれ違う日常にすり替わっていくかもしれない。
俺は自分の信条に従って、できる限り長続きさせるよう頑張っていくつもりだが――

P.123
そう、麻奈実と俺の関係が、そんなに簡単に変わってしまうとは思えない。
そうならないよう、普通のままでいられるよう、俺は俺なりに頑張ってきたつもりだ。

京介は平凡な日常に固執するあまり、今の麻奈実との関係が変化することを恐れています。
京介が麻奈実に恋愛感情らしきものを抱いているのに、それを表に出さずあくまで単なる幼馴染みとして扱っているのは、平凡な日常を守るために頑張って意識してやっていることなのでしょう。

しかし、改めて読み返してみると、この部分は崩壊フラグにしか見えないですね。

P.131
「あーそうすっと……五日くらい前か? ちょっと待ってろよ……」
新聞で特番をやっていた日付を確認してみると、やはり五日前である。
思い返してみると、麻奈実の異変の兆候が出始めたのは三日前の朝くらいからだった。
その前に麻奈実と会ったのは……えっと……休日を挟んじまうから……そうそう、下校中にあやせと会った日だ。

ここ時系列おかしくないですかね?
何度読み返してみても、麻奈実の異変の兆候が出始めたのは二日前の朝になるはずなんですが……。

P.133
俺がついつい世界の真理を叫ぶと、壁がドカッと向こう側から叩かれた。
妹様が『うるせー黙れ』とおっしゃっている……。俺は気まずい視線を壁へと向けた。
ちなみにこいつとの関係は相変わらずだ。たまーに、エロゲーの進捗状況を問いただされたり罵倒されたりする以外は、いっさい喋らないし、目も合わせない。
もっとも妹に嫌われているのは前々からだし、俺だってこんなクソ生意気で面倒きわまりない女なんか大キレーだから、喋らないのはむしろ大歓迎だ。

妹様の壁ドン。
今ではすっかり意味が変わってしまいましたが、これが本来の意味の壁ドンなんですよね。
深夜の0時以降にも関わらず桐乃が起きているのは、テスト前でテスト勉強を頑張っているからだと思われます。京介との関係が相変わらずなのは、テスト勉強やモデルの仕事などがいろいろと忙しくて一緒にいる暇が無いから、というのもあるのでしょう。

P.135-136
と……すると、だ。残る候補は……――
「……………………………………フ~」
俺は一分ほど沈思していたが、やがてきわめて複雑な心境で、目を細めた。
――いる。たった一人……いるっちゃいる、な。真剣に相談に乗ってくれそうで、女心に長けていて、死ぬほど口が固くて、有効なアドバイスが期待できそうなやつ……。
だが……こいつは。こいつはなぁ………………ふぅむ……。
俺はうってつけの人材に思い当たっていながら、決心が付かず……
眉間に深い縦ジワを刻み、しばし唸っていた。
……もしかしたら、先月のあいつも、こんな気持ちだったのかもな。
何しろ、幾ら悩んでいたとはいえ、こんなにも嫌っている相手に自分の秘密をさらけ出して、相談してみようってわけなんだからさ。

様子のおかしい麻奈実について、桐乃に相談しようか悩む京介。
先月のあいつとは、もちろん桐乃のことで、京介に秘密がバレそうになって、人生相談をするかどうか悩んでいたときのことを指しています。ここの京介はその時の桐乃との対になっていますね。

P.136
そう考えると、迷いが少しずつ薄れてきた。
何故ってホラ、あいつにできて、俺にできんわけがないだろうよ。

極めて兄的な京介の思考。兄とは妹の上に立ちたがる生き物なんですよ。

P.137
それで妹のお願いを聞いてあげる優しい兄貴は、世界でも俺くらいのもんじゃねーの?
マジいい男だよ。俺が妹だったらとっくに惚れてるよ。グッドエンド一直線だよ。

京介のエロゲ脳化は2巻の時点で、この有様。
桐乃先生のスパルタ妹ゲー教育の成果は凄いですね(笑)

P.137
というわけでレッツゴー。俺は問答無用で、妹の部屋のノブを回した。
がちっ。
鍵がかかっていた。

部屋に鍵をかけている桐乃。
京介に対しての心の壁はまだまだ厚いようです。
これが8巻(P.234)になると……。

P.141-142
「頼むよ! 聞くだけでもいいんだ! もうおまえしか頼れるやつがいないんだって!」
「………………」
必死の嘆願が功を奏したのか、足に掛かる圧力が弱まった。いまの台詞は、相談に乗ってもらうための方便ではなく、かなりの部分、俺の本心だ。
「……なに、その、もしかして……アンタ、あたしに悩みを相談するつもりなワケ?」
「そうだよ。さっきっからそう言ってるつもりだったんだがな。……悪いか」
「悪い」
即答かよ。しかし桐乃の台詞はそれで終わらず、さも忌々しげな口調で、こう続いた。
「悪いんだけどね……チッ、もうめんどくさいから、五分だけ聞いてあげる。感謝しなさいよ」

口調は相変わらずですが、なんだかんだで話を聞いてあげようとする桐乃。
この妹様、兄と同じくチョロいですね(笑)

P.142
先月のことを思い出す。
親父に問いつめられたとき、桐乃は頑として俺との共犯関係を漏らさなかった。
モデルの仕事を、遊び半分ではなく、こいつなりのプロ意識をもってこなしていたように見えた。親父との約束を遵守し、学業スポーツともに優秀な成績を修めていたことを知った。
そういった内面の硬さは、あの厳しい親父譲りのものかもしれない。
誰よりも口が固く、一度決めたことに対しての責任感があり、女心にも長けている――。
なんだかんだ言って、先月の出来事を経て、俺は桐乃にある種の信頼を抱いていたのだ。
もちろん大キレーだってことは、変わらないけどな。

桐乃のことをよく見ていて、ちゃんと理解している京介。

P.142
妹の部屋には灯りが点いていた。どうでもいいが、明るいところで見ると、俺の妹はやはりかわいい顔をしていやがるな。かわいいのは顔だけだけど。

どうでもいいとか、顔だけとかいうノイズに騙されがちですが、普通の兄は、妹をこんな風に頻繁に褒めたりしません。こういうのを世間ではシスコンと言います。

P.142-143
桐乃はベッドにちょこんと腰掛け、地べたを指差す。
「ほら、座れば?」
だからこの位置関係は、罪人と奉行みたいだと……。
言ってもどうせ聞きゃしねえんだろうけどさあ。
俺は素直に妹の言うことに従い、床に敷かれていた猫の座布団に腰を下ろした。その瞬間、桐乃は不快そうに眉をひそめる。こいつは自分の持ち物を俺に触られるのが嫌いなのだ。

1巻の人生相談の時と同じ構図。
京介が猫の座布団に腰を下ろしたときに桐乃が不快そうに眉をひそめた理由は、京介に自分の持ち物を触られるのが嫌いなのではなく、

P.69
八畳ほどの広さに女子中学生が、桐乃を含めて四人いた。桐乃は勉強机の椅子に座っており、その他二人は猫の座布団を敷いた床に座り、最後の一人は、ベッドに腰掛けている。

京介が座った座布団は、前に友達が使っていたものだからだと思われます。
自分でそこに座れと言った手前、文句は言えないけど、友達が使った座布団に京介が触れるのは気に入らない。
この描写には、桐乃の京介に対する独占欲が表れています。

P.143
「ちょっと……なに口ごもってんの?」
「いや……その……あのさぁ……聞いてもバカにしないか?」
これは別に妹の台詞の真似とかではなく、自然に出てきたものだった。
嫌な話だが、やっぱ俺らは兄妹なのかもな。

高坂兄妹の似たもの兄妹描写。

P.144-145
「じゃあなに? ……まさかその顔で恋愛相談とでも言うつもり?」
「それも違う。俺とあいつは、そういう色恋とは無縁だからな」
「……ふぅん? あんなに、キモいぐらいベタベタしてるのに?」
嫌な言い方すんなあ。よく知りもしねえくせに。俺は、ついムッとして言い返した。
「おまえに俺と麻奈実の何が分かんだよ」
「相変わらずあの女のこととなると、すぐむきになるんだから…………」
忌々しげに言う桐乃。
……おまえ、やっぱり麻奈実のことが嫌いだろう? 意味がわからん。おまえと麻奈実はほとんど会ったことすらねーじゃねーか。どうしてそんな目の仇にすんだよ。

桐乃の台詞から推察するに、興味無い振りをしつつも、京介と麻奈実のことはよく見ているようです。「大嫌いな」京介と麻奈実の関係を見て、ますます二人に敵意を募らせる桐乃。悪循環ですね。

P.146-147
「……というわけなんだが……どう思う?」
「死ねばいいと思うよ」
即答でそんな言葉のナイフを投げてきたので、さすがに俺は「おいっ……」と咎めようとした。しかし桐乃は「真剣に考えた回答だけど?」と悪びれない。
「家庭の事情ってのはなんだか知らないけどさ――これだけは分かった。アンタは死ぬべき」
眇められた妹の瞳は、その温度を、際限なく低下させていく。桐乃はさらに、こう続けた。
「幾らなんでもそれはナイでしょ。なんで気付かないワケ? 一緒に歩いてた男に、自分の顔をばかにされてさー、他の女と比較されたら、落ち込むに決まってんじゃん」
「バカになんてしてねーよ! ちゃんとあとでフォローしたし、俺は、」
「アンタがどういうつもりで言ったとか、カンケーないって。大事なのは相手がどう思ったかなんだからさ。あと何度も言うけど、あたしはアンタらの関係なんて知ったこっちゃないの。これはあくまで、あたしだったらどう思うかって話。いや、あたしだったらもちろん、落ち込む前に、ふざけた口を利いてくれた男に身の程を教えるけどね。ていうか、なに? フォロー? 一度吐いた台詞が、あとで取り消せるとでも思ってるワケ? んなわけないでしょクズ」

この章の桐乃は本当にキツイ。
京介と麻奈実のことで苛ついているから口調が厳しくなったんでしょうが、それにしてもキツイです。

P.148-149
「おまえだったら……どうする? たとえば……俺がおまえを怒らせちゃったとして、どうしたら許してくれるんだ?」
「絶対許さない」
「許すっつー前提で考えてくれよ!」
「えっ……だって、何をされても許さないし……」
きょとんと目をぱちぱちさせる桐乃。
当たり前のように言いやがって……。
こういうときだけかわいい表情してんじゃねぇよ。絶対ダマされねーぞ?

当たり前のように妹かわいい描写を入れてくる京介。

P.152
そんなド派手なアクセサリーを身に付けて、砂浜でカッコいいポーズを決めている水着姿の茶髪モデルは、目の前にいる俺の妹であった。となりには青いビキニ姿のあやせもいる。
先日、あやせが言っていた見本誌というのは、どうやらこれのことらしい。
……実にイマドキの女子中学生が好みそうな記事ではあるな。
かわいいじゃん。

前回から3ページしか空いてないのに、またもかわいい描写。

P.153
「だいたい――喧嘩するほど仲がいい男からもらったもんならさあ。それがなんだって、嬉しくないわけないよ」
「……それって、おまえの話か? それとも、一般的な女の子の場合か?」
「さあ?」

桐乃は答えをはぐらかしていますが、桐乃の話が含まれているのは確かでしょう。
この伏線は、3巻での京介から桐乃へのクリスマスプレゼントに繋がっています。

P.153
小馬鹿にするような口調ではあったが――たぶん、そうじゃない。
こいつは心底兄貴を嫌っていて、ムチャクチャむかつく性格をしちゃあいる。
しかし、自分を頼って相談してきた相手に、適当な回答をしたりはしない。こんな見てくれとは裏腹に、厳しくしつけられたせいか、妙に硬いところがあるやつなのだ。
それは先月の事件で、なんとなくだが分かったことだった。
だからこそ俺は、こいつに悩みを吐露したんだよ。

「心底兄貴を嫌っていて」の部分以外は、妹のことを的確に理解している京介。
京介の桐乃に対する信頼具合が窺える描写です。

P.159
そうやって、ときおり「ふぅ」と汗を拭う仕草を見ていると――
「――――」
一瞬で色々な想いが胸を過ぎった気がした。
心配、寂寥、苛立ち、郷愁、親愛、それに――……まぁ、なんだ。
混沌としていて、ちょっと一言では表せないが……安堵というのが一番近いかな。
こいつのそばにいると、たまらなく安心する。
避けられているかもしれないという不安を抱えているいまでさえもだ。
それは、何年もかけて少しずつ俺の心に深く刻まれてきた、もう取り外しの利かないルールなのかもしれなかった。条件反射といってもいい。
――は、まったく。俺って、こいつがいないとホントしょうがねえやつだよ。
ちゃんと仲直りしなけりゃな。改めてそう思う。

今では考えられないほどの麻奈実推しの描写。
まぁ、結局人気では桐乃や黒猫、あやせに勝てなくて段々出番が減っていくうえに、最後は汚れ役まで押しつけられるんですけどね。いつから幼馴染みは負けフラグになってしまったのか……。

P.163-164
「それは、だって……きょうちゃんのこと、ほっとけないもん」
「知ってる。なにせおまえは、俺のお袋よりもお袋みたいなやつだからな」
「……それって、大好きって意味?」
少し落ち込んだような口調で、麻奈実はそう口にした。
以前とは違う返答が、自然と俺の口を衝いて出てくる。
「おう」
「え、ええっ――!?」
麻奈実はびくっと身体を震わせた。
「あ――ち、違うぞっ。いまのはそういう意味じゃなくてだな……ああクソ……ええっと……売り言葉に買い言葉っつーか、家族的な意味というか……だな……その……」
バカか! なに言っとんだ俺は!
クソ暑い中、二時間も突っ立ってたもんだから、脳味噌ゆだってんのか!?

京介が幼馴染みと典型的なラブコメみたいなことをやっている、俺妹にもそういう時代がありました。

P.177
――やれやれ。俺たちの腐れ縁は思いの外、頑丈なのかもしれねーな。
この天然地味眼鏡な幼馴染みとの付き合いは、ずいぶんと長いものになりそうな予感がする。
俺と麻奈実がお互いに、そうしようと心がけていく限り、俺たちの望みは叶い続けるからだ。
その望みさえ、いずれ変わるとこがくるのだとしても。
いまはこれでいい。なに一つ問題ねえ。
ふん、今後ともよろしくな。

こんなフラグを立てておいて、まさか1年半後にあんなことになるとは。
京介の感じた予感とは一体何だったのか……?

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『恋愛教室』体験版~人気投票用紹介編~の感想

製品版の感想

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作品情報

タイトル:恋愛教室
ブランド:UnN/A(アン・エヌ・エー)
発売日:2017年6月30日(金)発売予定2017年8月25日(金)発売予定
販売価格:8,800円+税

あらすじ

昨年まで女子校だった学園に転入してきた主人公が、女の子ばかりの学園で様々な女の子たちと交流を深めていく学園恋愛モノ。

体験版の内容

体験版のサイズは1.28GB。


システム設定項目はやや少なめで、必要最低限のものはそろっています。
うちの環境では、デフォルトだとボイスが小さめで聞こえにくかったです。
誤字がちょこちょこあったり、台詞だけでボイスが入ってない部分があったりと、開発が間に合って無さそうな感じがチラホラ……。

体験版は主人公が学園に転入してきて、自己紹介したり、質問攻めにあったり、学校の案内をしてもらったりしながら、合間にちょっとエッチなイベントがあったりという感じで進んでいきます。体験版は転入三日目が終わるところで終了。
プレイ時間は大体2時間程度です。

この作品はキャラがかなり多いのですが、僕は事前に人気投票やらサイトやらをチェックしていたせいか、特に戸惑うことはなかったです。眼鏡、チビッコ、メイドなど、特徴があるキャラは、覚えやすいですね。

テキストについては、変に間延びしたところもなく、サクサクと読みやすいです。
ゲーム内で3日間、プレイ時間2時間の内容で16人(ヒロイン以外を含めると17人)ものキャラを登場させ、それぞれのキャラの個性を出しながら出番のバランスを取っているというのは、なにげに凄い。ライターさんの技量を感じます。

妹について

名前 年齢
月島 和羽(つきしま かずは) 兄の一つ下、高◯1年生?
一人称 兄呼称
和羽 お兄ちゃん
身長 体重 スリーサイズ
不明 不明 不明
CV 原画 シナリオ
藤咲ウサ 雪路時愛 大生直夜
備考
病弱

主人公の妹。
和羽は病弱ですが、家事は普通にできます。
寂しがり屋で甘えんぼ、独占欲も強めと個人的にかなり好み。
兄にしがみついてマーキングしようとしたり、腕を甘噛みしたりと、結構大胆です。
病弱で家に籠もっているせいか、考え方はややネガティブで、自己否定しがち。

和羽は学校には通っていないので出番は少なめ。
二学期からは通う予定ありとなっていますが、本編でそこまで行くかは不明。


実の妹描写あり。

兄について

主人公。
学園の2年生。

容姿は銀髪に赤い目でイケメンらしいですが、立ち絵は無しで、イベント絵にも登場しません。
性格はこれといって特徴のない普通のエロゲ主人公。
真面目すぎず、ふざけすぎずという無難なタイプです。
周りは女の子だらけの環境ですが、戸惑いの方が大きめで、ガツガツした感じはなし。
といっても、別に女の子に興味がないわけではなく、年頃の男の子らしくエッチなことは嫌いじゃないです。

引っ越してきた理由や兄妹の過去については何やら重そうな設定がありそうですが、体験版では明かされません。まぁ、和羽の実妹設定がひっくり返されることはないでしょう。

和羽のことはかなり大事にしていて、シスコンレベル。
兄妹同士のやり取りも通じ合っていて、絆を感じます。
家事は和羽だけに任せず、自分でもちゃんとやるところに好感が持てますね。


この台詞に同意するお兄ちゃんは結構多いと思う。(正しくは、日本国憲法じゃなくて民法ですが)

Hシーンについて

この体験版にHシーンはないです。(パンチライベントはあり)
最後までプレイするとわかりますが、~ラブラブ教育編~という第二弾の体験版が予定されていて、おそらくそちらでHシーンが体験できるのだと思われます。発売まであと2週間ちょっとしかないんですが、間に合うんでしょうか?

まとめ

ゲームの設定やテキスト的には問題無し。
キャラの多さが気になっていましたが、普通に面白いです。

兄妹描写は良いですし、和羽についても実妹なのは、ほぼ間違いないでしょう。

一番気になるのは開発の遅れですね。
本当に6月30日に発売されるのか? 発売されたとして、バグ満載だったり、未完成品だったりしないのかが気になります。
6/17修正 案の定延期になりました。
今のところはとりあえず買うつもりなので、マスターアップ報告が来たら、予約しようと思っています。

『イモコン』第35話「ピンポイント」の感想

ganma.jp

感想はネタバレありなので、先に35話を読んでから読むことをお勧めします。

感想

白石兄妹VSデュプリー兄妹戦開始。

ヨーヨーで防御しつつ、遠距離攻撃を仕掛けてくるデュプリー兄妹。
白石兄妹のことを調べ上げ、投げキャラ対策をしっかりしてきたデュプリー兄妹に対し打つ手がない白石兄妹ですが……

デュプリー兄妹の絆艶舞「10Atomic Winder」は「10の原子爆弾ヨーヨー」って感じの意味かな?

漫画の終わりに、月3回更新のお知らせが載っています。
3月ぐらいから更新間隔が変更になっていたのは気づいてましたが、公式の3週連続火曜日という表示の意味がよくわからなくてスルーしてたんですけど、月3回更新という意味だったんですね。

蕨がコメント欄のハートを押して応援よろしくお願いしますと言っていますが、これはPCからはできず、スマホのアプリ版のみの機能です。
play.google.com

僕も最近ようやくガラケーからスマホに機種変更したので、これからはスマホでポチポチハートを押して応援しようと思います。ちなみに、これを書いている現在イモコンのランキングは50位ぐらいで、ハートが計100万ぐらいと微妙な位置です。(トップクラスはハートが計1000万以上で文字通り桁が違います)
もっと応援しよう!!

そういえばスマホのアプリから見て初めて知ったのですが、スマホだとイモコンのトップページの蕨のバナーがムービーになっていますね。日高兄妹VS杵島兄妹戦が謎の技術によりアニメーションで再現されています。演出も格好良いし、グリグリ動くので必見。

jitsumai.hatenablog.com
デュプリー・カレルの項目に追記。

『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の伏線を改めて読み解き、「完全なる桐乃エンド」を考察してみた(1巻編、下)

注意

この記事はライトノベル俺の妹がこんなに可愛いわけがない』を全巻読んでいることを前提に書いています。
おもいっきりネタバレがありますので、未読の方はお気をつけください。

1巻の時系列

日付 出来事 原作
6月上旬(京介高校2年生(17歳)、桐乃中学2年生(14歳) 京介が玄関付近で桐乃とぶつかり、メルルのDVDを見つける 第一章
2日後 桐乃が深夜に部屋に押しかけてきて、初めての人生相談を受ける 第一章
6月中旬(上記の一週間後) 麻奈実と下校中に、友達と下校する桐乃と遭遇する 第二章
数日後の日曜日 2回目の人生相談、『妹と恋しよっ♪(18禁版)』を桐乃と一緒にプレイさせられそうになる 第二章
翌日 『妹と恋しよっ♪(全年齢版)』を桐乃と少しだけプレイ、桐乃がオタク友達を作るためにコミュニティ『オタクっ娘あつまれー』に参加表明メッセージを送る 第二章
翌日 『オタクっ娘あつまれー』の管理人“沙織”から承認の返信、桐乃がコミュニティに正式参加 第三章
6月下旬(上記の次の日曜日) アキバで行われる『オタクっ娘あつまれー』のオフ会の二次会に参加、沙織と黒猫に出会う 第三章
翌日 麻奈実と放課後の公園で過ごしている最中に、モデル仕事中の桐乃と遭遇 第四章
数日後 母親と会話、桐乃の凄さを聞かされる 第四章
数日後 『妹と恋しよっ♪(全年齢版)』をコンプリートする 第四章
上記後の日曜日 父親にメルルのDVDケースの中身を見られ桐乃の秘密がバレそうになるが、京介が父親と対決し、桐乃の秘密を守る 第四章
翌日 桐乃に人生相談の続きがあると聞かされ、笑顔で感謝される 第四章

第三章

P.133
「まぁ……ね。清楚なお嬢様系? ……なーんか想像つかないな。あたしのクラスには、そういうタイプいないし」

明らかな矛盾、その5。
重箱の隅をつつくようで申し訳ないですが、あやせは清楚なお嬢様系だと思うんですけど……。
まぁ、あやせの登場は2巻からですし、1巻を書いた時点では、おそらくそこまで考えていなかったのでしょう。

P.137
「分かってるって。ってか、あんまそば寄んないで。デートしてると思われたらヤじゃん」

12巻P.249の秋葉原でまったく同じ台詞を使っていますね。

P.138
でもな……。もう遅いから言わないけど。おまえ……今日の集まりに、その格好で出るのかよ……確かにかわいいんだけどさあ。……ったく、大丈夫かな。

京介の妹かわいい描写6回目。

P.147-148
俺が目線だけで訴えると、
「…………ふんっ」
アイコンタクトが通じたのかどうなのか、桐乃はふいっとそっぽを向いた。

このアイコンタクト描写は、今後頻繁に出てくるのですが、これは通じてるのか通じてないのかよくわからないですね。二人の関係も、1巻の時点ではまだまだということでしょうか?

P.153
「……何も言うな。……おまえはよく頑張ったよ」
ぽん、と頭に手を置いてやると、すぐさまバシッと払いのけられた。

京介が桐乃にやる、頭に手をぽん、と置く仕草。
これも今後頻繁に出てきますが、原作で初めて登場する場面がここです。

P.154
「彼氏でござるな?」
「「違ぁ――う!?」」
同時に反論する俺&桐乃。よりによってなんつー勘違いしてやがる!?

12巻のP.255で兄妹が付き合うことになった話を聞いた沙織が、この時のことを回想しています。

P.156
「ほほう。なるほどなるほど、きりりん氏の……似てない兄妹ですな」

この高坂兄妹が似ていないという設定が、桐乃義妹説をなかなか捨てきれなかった理由の一つ。
聞くところによると「PSPのゲームの桐乃義妹ルートでフラグを回収したらしい」のですが、僕は未プレイなので詳しくはわかりません。俺妹という作品はこの手のノイズが本当に多くて、12巻が出るまでは考察に本当に苦労しました。

P.158
一見同年代にしか見えない妹ではあるが、たまにこういう歳相応のところを見せられると、かわいいもんだと微笑ましくなる。

京介の妹かわいい描写7回目。

P.161
率直に言うが、黒髪のゴスロリ女はどえらい美人だった。
といっても桐乃とはだいぶタイプが違う。
前髪を揃えた長い黒髪。真っ白な肌。切れ長の瞳。左目の下に泣きぼくろ。
ドレス姿の女を、こう表現するのはどうかと思うが、どこか幽霊じみた和風美人である。
赤いカラーコンタクトを嵌めているのは、コスプレの一環だろう。
見るからに性格がキツそうで、陰気で――いまにも黒魔法とか使いそうな雰囲気。美人ではあるが、桐乃のような華やかさはまるでなく、マイナスベクトルの黒いオーラが全身からゆらゆら立ち上っている感じ。

京介の黒猫評。
どえらい美人と評してはいますが、あまり褒めている感じではないですね。
いちいち妹と比べる京介のシスコンぶりにも注目。

P.173
「では、改めて。拙者は“沙織・バジーナ”と申すものでござる。『オタクっ娘あつまれー』コミュの管理人を務めております。プロフィールページにも書いてはありますが、歳は十五――中学三年生ですな。確か黒猫氏とは同い年であったはず」

沙織の自己紹介。
結構忘れがちですが、沙織と黒猫って同い年なんですよね。
沙織は黒猫や桐乃に比べると大人なので、京介(17歳)>沙織(16歳)>黒猫(15歳)>桐乃(14歳)というイメージがあるんですが、実際は京介(17歳)>沙織=黒猫(15歳)>桐乃(14歳)です。

P.180
夕方になって、二次会を解散した直後のいまだってそうだ。あの二人は一応別れの挨拶もすませたってのに、依然として喧々囂々、邪気眼VS魔法少女をやっている。

毎度重箱の隅をつつきまくって申し訳ないのですが、喧々囂々の使い方が間違っていますね。この場合、侃々諤々を使う方が適切だと思います。

第四章

P.191
「あ~あ……眠くなってきた……」
ここで昼寝したら気持ちよさそうだ。枕があればいいんだが……なんて思っていると、肩をつんつん突っつかれた。
「きょ、きょーちゃんっ」
「……あ? なに?」
俺が寝ぼけ眼で振り向くと、麻奈実は、何やら両手を左右に広げており――
緊張の面持ちで、恥じらうように頬を染めて、こう囁いた。
「ど、どうぞっ?」
………………なに言っとんだこいつ?
何が『どうぞ』なのかサッパリなので、俺はいぶかしげに首を傾げる。

どう見ても膝枕フラグでしょう……。
前章の第三章では、あれほど桐乃の心情を慮ったり、沙織の気遣いにも気づいていた京介が、麻奈実に対しては、いかにもラノベの主人公のような鈍感っぷり。この扱いが麻奈実は京介にとって特別な人というフラグに見えて、8巻ぐらいまでは麻奈実が真ヒロイン説を捨てきれませんでした。

P.194
と、そこで麻奈実がベタ褒めしている女の子に、俺の視線は自然と吸い付けられた。
ふーん。あの茶髪の娘、確かにスゲー見てくれはいいな。
脚はなげーわ、背はすらっと高いわ、でもって顔も――
「桐乃じゃねえか!?」

京介の妹かわいい(見てくれはいい)描写8回目。
視線は自然と吸い付けられたというあたりに、京介の桐乃に対する容姿の評価の高さが窺えますね。

P.194
「ええ――っ!?」
俺と麻奈実は、ビックリ仰天しちまった。特に、事情をまるきり知らなかった麻奈実の驚愕は、大きかったらしい。何度も瞬きしながら、桐乃と俺を見比べている。
「え、ええと……桐乃……ちゃんって……妹さんだよね? きょうちゃんの……」

これが麻奈実の演技だったら凄い。
僕にはどう見ても素で驚いているようにしか見えません。

P.196
「うちの弟、妹さんと同じ学年なの。学校は違うけど。でね、この前、共同テストっていうのがあったんだって。それで――県の成績優秀者のランキングに、載ってたって言ってたよ。」
「誰が?」
「だからぁ、きょうちゃんの妹さん。桐乃ちゃん」

12巻 P.344-345
「いつもいつもいつもいつも邪魔ばっかして! 子供の頃からずーっとムカついてたんですケドぉ!」
「……邪魔ばっかりしてたのは、桐乃ちゃんの方でしょう?」
「あっれー? あたしのことなんか忘れてたんじゃなかったのぉ~!」
「……っ!」
「あ、やっぱ図星なんだ! この嘘吐き!」

12巻で麻奈実は桐乃について、知ってて忘れた振りをしていたという描写がありましたが、何度1巻を読み返してみても、僕にはこれらすべてが麻奈実の演技だとは、どうしても思えないんですよね。伏見先生は、1巻を執筆した時点で、1巻で終わるつもりで書いていたということなので、1巻の描写は、後の描写と辻褄が合っていないことが多いです。
ですので、1巻の描写については真面目に考察してもあまり意味がないので、おかしな部分はノイズとして切り捨てた方が良いと思います。

P.200
「えー?」
俺は思いっきり眉をひそめたが、お袋はガン無視して話を続行。
人の話聞かないところはソックリだなこの親娘。

非常に珍しい、桐乃の母親似描写。
桐乃が父親似と言われることは多いんですけどね。

P.201
「そういえば、最近あの子、表情がイキイキしてるのよねー。ま、あたしにしか分からないくらいの変化だから、だーれも気付かないだろうけど」
「はぁ?」
俺が眉をひそめると、お袋は、さらに突拍子もない台詞を吐いた。
「きっとアレよ……男ね! 京介、あんた何か知らない?」
「お、男?」
「そう、男ができたに違いないわ。だからあんなに笑顔が煌めいているのよ!」
ねーよ。あんなのと付き合える男が、そうそういてたまるか。いたら俺はそいつのことをゴッドと呼んで讃えてやる。

案外鋭い佳乃さん。しかし、まさか笑顔の原因であるその男が京介のことだとは気づかなかったようです。
桐乃の男についての、京介の反応にも注目。
7巻の御鏡の時と違って、大した反応を見せません。
この時点では、まだ京介がそこまで桐乃のことを意識していないのが、よくわかります。

P.202
――桐乃の表情がイキイキしてる、ねえ……。
……心当たりは、あるっちゃあるよ。まさかとは思うけど……もしかしたら。
ビックリ仰天の趣味を見せられたり、さんざん罵倒されたり、エロゲーやらされたり、オフ会に連れて行かれたり、アキバを引き摺り回されたり――空回りばっかだった俺への人生相談が、ちっとは役に立ったのかもな。
ははっ、ガラでもねー。なに言っちゃってんだか。アホらしい。

桐乃の表情がイキイキしてる理由は、言うまでもなく京介ですね。

P.217
それにアイツ、確か今日、友達とオフ会行くって言ってたもんなあ。
俺がついて行かなくても、自分一人で仲間と会って――きっと、とても楽しい時間を過ごしてきたんだろう。黒猫と喧嘩したり、沙織に毒舌吐いて平気な顔されたり……想像できるよ、なんとなくな。俺も、この前、そばで見てたからさ。
最近桐乃がイキイキしてる――この状況で、皮肉にもお袋の言葉を思い出した。
それってたぶん、ずっと隠してた趣味を分かち合える相手ができたから、なんだよな?

この京介の推察は半分しか当たってないです。
桐乃がイキイキしてる理由は、もちろん黒猫や沙織というオタク友達ができたからというのもあるでしょうが、もう半分は長らく疎遠だった兄と秘密を分かち合って、いろいろと話すようになったからでしょう。

P.202
「ほんっと、使えない子ねえ! あんたもちょっとはしっかりしなさいよ――妹は出来がいいんだからさあ! 血統は悪くないはずなのよお」

1巻の描写はあまり当てにならないのですが、一応実妹フラグ。

P.203-204
「はぁ――――」
勉強机に座っていた俺は、思いっきり背筋をのばして息をはく。
「…………ふぅ」
そうすると……達成感の余韻が、じわじわと、なんとも言えない虚無感に変わり……俺の胸をきりきりと締め付ける。さっきまでのハイテンションが、ぐわ――っと急降下していく。
初めて知ったが、ギャルゲーを全クリした直後の虚しさは異常だ。
だめだこれ、どうにもならん。なんだろうな、この、悟りを開いた賢者のような気持ち。
ふぅ……なんで俺は数秒前まで、あんなに舞い上がっていたのだろう……。

さっきまで興奮で上がっていたテンションが、急降下する京介。
これらの描写ってぶっちゃけオ○ニー後の描写(賢者タイム)ですよね?
まぁ、実際していたわけじゃないでしょうが、なんでこんな描写にしたのか……伏見先生のお遊びでしょうか?

P.204
ったく、コレだよ……。はぁ……やっぱりリアルとゲームは違うよな。イベント積み重ねたって、ちっとも好感度なんざ上がりゃしねえ。なにこのバグってるとしか思えない攻略難度。

P.205
フッ……そうか……俺はいま、ゲームでいう『選択肢分岐』にいるってわけだ……!
だが、目の前にいる『妹』の好感度は、マイナスに振り切れている。
よって下手な選択肢を選べば、命はない……そして人生というゲームには、セーブもロードもない……。一発勝負ですべてが決まる。デッド・オア・アライブ

桐乃から渡された妹ゲーの影響で、早くもエロゲ脳になりつつある京介。
妹相手に好感度や攻略難度とか言い出すあたり、染まっているとしか思えません。
桐乃による京介攻略は順調に進んでいますね。

P.206
くだらねえぇぇぇぇぇえぇぇぇえ! 冗談じゃねーよ! なんで実妹と妹ゲーについて語り合わなくちゃならんのだ!

よく読むと、1巻から桐乃の実妹描写ってちゃんとありますね。

P.212
「京介……あんまり驚かないのね」
「そりゃあな。アイツのことなんざ知ったこっちゃねえし」
本心だ。ウソは言ってないぜ。

P.214
お袋が出て行って、それから十分ほど、俺はリビングの扉の前でハラハラしていた。廊下を落ち着きなくうろついたり、爪を噛んだり……耳を澄ましてみるが、中の二人は小声で話しているらしく、会話の内容は聞こえてこない。
秘密の趣味が親にバレちまった桐乃は、果たして何と言い訳しているのだろう。

「アイツのことなんざ知ったこっちゃねえし」といった2ページ後にこれである(笑)
妹のことなんざ知ったこっちゃねえなら気にせずさっさと自室に戻ればいいものを、思いっきり妹の心配してるじゃないですか……どこが本心でウソは言ってないのか教えてほしいものです。京介は本当に信頼できない語り部ですね。

P.218
桐乃はあれで頑固なところがあるから、俺の名前を出しちゃあいないんだろうが、親父ならそのくらい言質を取らずとも察する。トボけるだけ無駄ってもんだ。

京介の桐乃への理解と信頼がわかる描写。
口ではなんだかんだ言いつつも、桐乃への評価は高いんですよね。

P.228
公園、商店街、ゲーセン、学校、駅前――美麗で目立つ妹の姿はどこにもない。

京介の妹かわいい(美麗)描写8回目。

P.229
まるで妹から借りたゲームの主人公みたいに、高坂京介は、飛び出していっちまった妹を捜して、
夕焼けの町を駆けていく。頭ん中はかわいい妹のことでいっぱいだ。

京介の妹かわいい描写9回目。

P.231-232
「うっせえよ。それよかオマエ、俺に感謝しろよな」
「……は? なんでそんなことしなくちゃなんないワケ?」
「あのあと大変だったんだかんな? 親父が、おまえの部屋に入ろうとして――」
「……な、え……」
桐乃は泣き腫らした目を見開いて、俺の襟首を締めあげてきた。うげげ、超苦しい。
「………………ちゃんと止めたんでしょうね」
てめえ、なんで俺が止めるのが当たり前みたいな言い草なんだよ。俺は、おまえの兄貴であって、下僕じゃねえんだからな? おい、分かってんのか、ああ?
「も、もちろん止めたっス……身体張って」
「よし」
よくやったワンころ。そんな感じの『よし』だった。半分自業自得とはいえ、俺の尊厳は跡形もないぜ。

身体を張って桐乃のコレクションを守った京介に対し、この言い草。
こういう桐乃の言動を見て、腹を立てる人たちの気持ちはよくわかります。桐乃好きの僕でも、たまにそう思いますし。

でもね、僕は桐乃が京介に対してこういう行動を取るのは、京介を信頼しているからだと思うんですよね。
京介(兄)なら自分を助けてくれる、わがままを受け止めてくれるという信頼感があるから、桐乃は京介に対して遠慮なしにこういう態度が取れるわけで、見方を変えれば、わがままを言うことで(それを許してもらうことで)桐乃なりに兄に甘えているとも言えます。
これは、子供が親に対してわがままをいうのと同じようなもので、桐乃はまだまだ子供なんですよ。

桐乃のこういう部分を許容できるかどうかが、桐乃に対する評価の分かれ目になっているように思います。

P.233
「……分かんない」
だろうな。家に帰ったら、親父がいるし。どうしていいか分からないだろうよ。
実際、桐乃はそう口にした。「……どうしたらいいと思う?」と。
妹の口からその台詞を聞くのは、これで二度目だった。
俺は、自分でも、頼れる兄貴なんかじゃないと思う。そんな俺に頼らざるを得ないほど、こいつは悩んで、追い詰められているってわけだ。あんときと同じさ。

一度目はP.71で桐乃のオタク趣味について相談された時のことですね。
京介自身は否定していますが、桐乃は京介のことを頼りにしているからこそ、こう聞いたのでしょう。わかりづらいですが、ここで桐乃は、京介に甘えているんですよ。

P.233
一つ残らず捨てろ。そう言われたことは、まだ伏せておくか。親父の台詞は、ウチじゃあ絶対だ。大事なコレクションが死亡確定だと知ったとき、こいつがどう想うか――。
ふん、ここでキレられても厄介だしな。とりあえず聞くこと聞くのが先だろうよ。

一見突き放したような言い方ですが、これは京介なりの気遣いでしょう。
オヤジの台詞を伝えたら桐乃がショックを受けるのはわかりきっているし、そんな桐乃を見るのは忍びないので先延ばしにしているんですね。

P.234
かわいい顔はぐちゃめちゃだ。俺はすぐに目を逸らしたが、それでも、こいつの胸中で荒れ狂っている激情がなんなのかくらいは、嫌になるほど分かった。

京介の妹かわいい描写10回目。
ついに2桁突入です。しかし、まだありますよ。

P.235-236
ここしばらく、妹の人生相談に付き合ってきた俺には分かる。
桐乃は、今日、逆鱗にふれられた。俺があのとき垣間見た『大切なもの』を踏みにじられた。
だから桐乃は、いま、こんなにもキレている。死ぬほど悔しくて、涙を流している。
比較するのはバカげているのかもしれないが、俺にだって『大切なもの』くらいある。
そいつをくだらんと否定されたなら、俺だって同じようにブチキレるだろう。
ぜってーだ、相手が親父だろうが必ずブッ飛ばす。そうしなきゃ気が済まねえからだ。
桐乃も同じ気持ちなんじゃねーかな?

ここの京介の『大切なもの』というのは、おそらく麻奈実との日常、普通の生活のことでしょう。
まぁ、それは置いておいて、ここで大事なのは高坂兄妹は似たもの兄妹だということです(顔は似てないですが)。やっぱり兄妹というのはどこか似るものなんですよ。どんなに本人たちが否定しようと。

P.238
……絶対言うつもりはないけどさ。こいつ、すっぴんの方がかわいいんじゃないか?

京介の妹かわいい描写11回目。
深刻な状況で何を考えてるんだか(笑)

P.238
「少なくとも、親父は、そう言うだろうな。親父が特別厳しいからってわけじゃない。普通の親なら、誰だってそう言うし、それが当たり前だ。自分でも分かってるはずだろう――世間体があるから、バラすわけにゃいかなかったんだって」

桐乃のオタク趣味のことを言っているはずなんですが、兄妹恋愛に当てはめてもぴったりくるのは単なる偶然でしょうか?

P.239
「でも、やめないよ。絶対やめない。だって……好きなんだもん……すっごい好きなんだもん! それなのにやめるなんて……やだよ。できないよ……」

P.240
「あたしは、やめない。好きなのをやめない。前にアンタに言ったじゃん。両方があたしなんだって。どっちか一つがなくなっちゃったら……やめちゃったら、あたしがあたしじゃなくなるの。確かにあたしは子供だし、お父さんの言うことは聞かなくちゃいけないと思う。それが当たり前だし、抵抗なんて出来ないと思う。……でも、もしも、全部捨てられて……なくなっちゃっても。いままでのあたしが、なかったことになるわけじゃ、ないから。……だから、好きでいることだけは、絶対、やめない」

この好きでいることだけは絶対やめないという頑固なまでの一途さは、桐乃という人間の魅力の一つだと思います。
ここも先ほどと同じく、京介への気持ちに当てはめてもぴったりきますね。

P.241
チッ。舌打ちひとつ、俺は妙に吹っ切れた気分で、おもむろに立ち上がった。
「桐乃――」
妹のツラ見て、親指で自分のツラをぐっと指差す。
「俺に任せろ」
十七年の人生で、俺は、もっとも自分らしくない台詞を吐いた。
まるでこいつの、兄貴みてえに。

京介お得意の台詞である「俺に任せろ」は、ここが初出です。

十七年の人生で、俺は、もっとも自分らしくない台詞を吐いた。

明らかな矛盾、その6。
中学生の頃の京介(11巻参照)は、この手の台詞を自信満々に何度も言っていましたが……。

P.242
桐乃は店に置いてきた。一時間経ったら帰ってくるよう、言い含めてある。一方的に喋って、返事も聞かずに出て来たから、アイツが言うことを聞くかどうかは分からんが。
どちらにせよ、家に帰る決心がつくまで、戻ってくるこたあないだろう。

アニメ二期の第13話の伏見先生オリジナル回で、京介が桐乃のために親父と対峙した時に、実はリビングの扉の陰で桐乃がコッソリこの口論を聞いていたという事実が明らかにされたのですが、この描写でその事実を読み取るのは、相当難易度が高いですね。

P.243
あんなヤツはどうでもいい。本当に、心底、どうでもいい。
おかしいと思うか? ウソをついていると、矛盾してると思うか?
……どうだろうなあ。自分でも、今日の自分のこたあ、ちょっと分かんねえ。
全部が全部本音ではあるんだが……もしかしたら、自分でも意識できてない何かがあるのかもしれん。
胸の内から沸き上がってくる妙な気持ちの正体だって、まだ判然としねえよ。

自分でも意識できてない何か。
これは過去の自分でしょう。
胸の内から沸き上がってくる妙な気持ちの正体は、昔の京介が持っていた熱い気持ち。
詳しくはP.249で説明します。

「矛盾」というのは俺妹という作品を語るうえで、外せない重要なキーワードです。
特に「信頼出来ない語り部」である京介の言動は矛盾が多い。
この矛盾をちゃんと読み解けないと、俺妹という作品は理解できません。

P.243
桐乃は、一度だって、そんなふうに呼んでくれたことはないけどな……
俺はあいつの兄貴なんだ。
大キレーだろうが、どうでもよかろうが、クソ生意気でかわいくなかろうが。
妹は助けてやんなくちゃならんだろうよ。
そうだろう?

「京介がどうしてここまでして桐乃のようなクソ女を助けようとするのか、理解できない」という感想を、他の人の俺妹感想でよく見かけます。実際に妹がいる人なら、この京介の気持ちはよくわかると思うんですけどね。

妹のいる兄というのは、子供の頃から親に「お兄ちゃんなんだから妹の面倒を見てあげなさい」とか「お兄ちゃんなんだから譲ってあげなさい」という感じで、「兄は妹の面倒をみるもの」「兄は妹のためになにかしてあげるもの」という意識と価値観を刷り込まれます。その結果、兄は「兄とはそういうものだ」と無意識に思うようになります。この子供の頃から刷り込まれた意識と価値観は、大きくなってもなかなか消えるものじゃありません。

兄にとって妹というのは、嫌いだろうが生意気だろうが無条件で助けなきゃいけない存在であり、兄とはそういう生き物なんですよ。だから京介(兄)は桐乃(妹)が困っていたら、つい助けたくなってしまうんです。「なんで俺はこんな奴のために……」と思いつつもね。

桐乃は、一度だって、そんなふうに呼んでくれたことはないけどな……

明らかな矛盾、その7。
その2でも出てきましたが、これも過去編とは明らかに矛盾する描写ですね。
1巻は作者が続きを想定せずに書いたのだから、たびたびこの手の矛盾が出るのは仕方ないことですが。

P.249-250
ちょっと前の俺なら、自分がこんな暑苦しい真似をするとこなんざ、想像もできなかっただろうよ。いまのいまだって、一言一言、自分が口開く度に驚いてるさ。
まさかこの俺に、こんな激しいところがあったなんてな。普通に、平凡に、凡庸に――のんびりまったり生きていくのが俺の信条だ。それはいまも変わんねえ。
でも、ちょっと前の俺と、いまの俺とでは、確実に何かが違っている。
アイツから相談受けて、色々面倒見てやって、いままで知ろうともしなかったモンをたくさん見て、影響受けてさ。変わっていったのは俺の方だった。
あんな変テコな連中やら、理解できねえ諸々に、自分が影響されていたなんて、認めたくはないけどな。事実なんだから、しょうがねえ。
俺はあいつらから、何かを得て、変わった。バカになった。恥ずかしいやつになった。

ここの一つ目の何かはP.243と同じものですね。
過去の自分が持っていた「心、魂のようなもの」です。
麻奈実の影響を受け、凡人の自分は平凡に生きるのが幸せだと思い込んで無気力な生活をしてきた京介に、昔の熱い魂を蘇らせるきっかけになったのが桐乃の人生相談です。妹や黒猫、沙織などオタクの影響(二つ目の何か)を受け、平凡に生きていくはずだった京介は、この先どんどん変わっていきます。

P.252
しかし、ホントに俺の写真は一枚たりともねえな。

アルバムに京介の写真が無い理由は12巻で明かされますので、そちらで。

P.254
「これも。これも。これもこれも……! 見ろよ! 全部二位だの優勝だのばっかじゃねーか! こっちは小学校時代のやつな! こっちは幼稚園時代のやつ! ……なんでこんなにあんだよチクショウ!? 集めた俺がビックリだぜ! なあ! 親父! あんたの娘は、こんなにもスゲエやつだろうが!?」

明らかな矛盾、その8。
11巻P.67にある高坂兄妹の歩みという年表を見ると、桐乃が兄を見返すべく努力を始めたのは、小学3、4年生からになっています。それまでの桐乃はそこまで凄い子供ではなかったはず。

P.263
あいつはあいつでいままでどおり、今朝も俺を、路傍の石ころみたいに無視してくれたぜ。

先程の、桐乃が京介と親父の口論を聞いていたという事実と京介の信頼出来ない語り部というのを前提に考察すると、ここは桐乃の照れ隠しということになります。
素直になれない桐乃は、自分を庇って父親と対決してくれた京介に対してどういう態度で接すればいいのか分からなくて、結果京介からは無視したように見えたのでしょう。

P.263
ふん、おかしいと思うかい? あんだけイベントこなして、あんだけ尽力してやったんだから、妹の好感度は、その分ぐーんと上がってなきゃあワリに合わねーだろうって?
冗談じゃねーよ! 気味悪い想像させんなや! 第一ゲームじゃねえんだからさ、人生ってのは基本ワリに合わねーもんだと思うよ? 特になぜか俺の人生はな!

一人で勝手にキレだす京介。
内心では桐乃の好感度が上がってくれるのを期待していたのに、そうならなかったから怒っているんですね。京介が気づいていないだけで、実際にはちゃんと桐乃の好感度は上がっているのですが。

P.265
その笑顔はなるほどかわいかったが、それが俺に向けられることは今後もないだろう。

京介の妹かわいい描写12回目。
京介の「かわいい」描写は、この巻ではこれで最後です。

P.266
「人生相談、まだあるから」


……………………マジで?


あまりの絶望に、俺は、じわ……と目に涙を滲ませた。
ドアノブを握りしめたまま、固まる。

この涙は嬉し涙ですね。
もう自分の役目は終わって、妹とはまた以前の関係に戻ってしまうんだと寂しがっていたのに、まだ妹が自分に相談してくれる、必要としてくれると知って嬉しかったんですね、シスコンの京介お兄ちゃんは。

P.266
「それと――一応、えと……」
そんな俺に、桐乃は、口ごもりながら目を合わせる。
たった一言、照れくさそうに微笑んで、
「ありがとね、兄貴」
はっきりと、そう言った。
それから、ふいっとそっぽを向いてしまう。
心なしか、頬が赤かったかもしれない。

ここのポイントは、桐乃が京介と目を合わせながら、作中で初めて京介を「兄貴」と呼んだこと。
冷戦が始まって以降、「あんな情けない男は兄貴じゃない」と思いこんでいた桐乃が、再び京介のことを兄と認めたという、高坂兄妹にとって極めて重要な場面です。

P.268
自分の目と耳を盛大に疑いながら、俺はこう想ったのさ。
俺の妹が、こんなに可愛いわけがない――ってな。

ここは「思った」じゃなくて「想った」なんですよね。
そして、今までは「かわいい」とひらがなで表現していた妹を、ここで初めてタイトルと同じ「可愛い」と表現しています。今までの「かわいい」と、この「可愛い」はまったく別の可愛いであることが、この表現から読み取れます。この「可愛い」は、京介が妹に対して本気で想った「可愛い」なのでしょう。

1巻のまとめ

改めて読み返してみたら、思った以上に京介がシスコンでした(笑)
京介の妹かわいい描写は12回(最後の可愛いを含めると13回)。約20ページに1回は言っている計算になります。

1巻はまだキャラがハッキリと固まっていないのか、微妙に手探り感がありますね。
桐乃以外にも、麻奈実、沙織、黒猫とのフラグもガンガンばら撒いています。

京介がいつから桐乃のことを好きになったかについてですが、この1巻のラスト時点で、妹のことはかなり意識しているようです。
この時点で桐乃のことを好きになったと解釈してもそれほど無理はないのですが、とりあえず一旦保留。ただ、京介に自覚がないのは確かでしょう。じゃないと京介の2巻以降の言動を、上手く説明できなくなりますから。

京介の「俺は妹が嫌いだ」というフィルターはかなり強いです。
しかし、この先、このフィルターが少しずつ破壊されて、京介のシスコンぶりがどんどん露わになっていきます。そんな京介の嘘を、これから容赦なくガンガン暴いていきますよ。

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