『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の伏線を改めて読み解き、「完全なる桐乃エンド」を考察してみた(2巻編、上)

注意

この記事はライトノベル俺の妹がこんなに可愛いわけがない』を全巻読んでいることを前提に書いています。
おもいっきりネタバレがありますので、未読の方はお気をつけください。

2巻の時系列

日付 出来事 原作
とある7月の土曜日 京介が自宅で『シスカリ』をプレイ 第一章
翌日 桐乃の友達が高坂家にやってくる、京介が事故で桐乃を押し倒す 第一章
7月のある日 麻奈実の家に遊びに行く、ロックが五厘刈りに 第二章
翌日 麻奈実と図書館で勉強 第二章
翌日以降 麻奈実との下校途中にあやせに会う 第二章
3日後 麻奈実の様子がおかしくなる 第二章
翌日 麻奈実に彼氏疑惑発生 第二章
翌日 麻奈実が学校を休む、ロックに休んだ理由を聞くも教えてもらえず 第二章
数日後 麻奈実について、桐乃に人生相談する 第二章
翌日 麻奈実が帰ってきて、うさぎの抱き枕をプレゼントする 第二章
翌日 桐乃にエロサイトを見てるのがバレて、お詫びとして夏コミにつれていくことに 第三章
8月中旬の日曜日 桐乃、黒猫、沙織と夏コミ三日目に参加 第三章
同日 コミケからの帰り道で、あやせに桐乃の秘密がバレる 第四章
上記の翌日以降一週間ほど 桐乃が陸上部の合宿に参加 第四章
9月1日 あやせとのことで落ち込んでいる桐乃を見て、人生相談を最後まで終わらせる決意を固める 第四章
上記後 電話であやせに桐乃との仲直りを持ちかけるも、断られる 第四章
同日夜 あやせを説得するために父親に相談 第四章
翌日 あやせとの対決、桐乃を抱き締めて妹が大好きだと絶叫する 第四章
1週間後 桐乃の偽告白に騙される 第四章

第一章

P.13
『いえにかえるんだな。おまえにも、おにぃちゃんがいるのだろう』

dic.nicovideo.jp
ストリートファイターⅡ』(ストⅡ)のキャラ、ガイルの勝利台詞が元ネタですね。

P.13-14
「チクショ~ッ、またコイツに負けたよっ! いくらなんでも強すぎだろ!? 勝てるかこんなもん!」
妙にムカつく勝利台詞をフルボイスで聞かされた俺は、コントローラーを放り出し、机をバンバン叩いて悔しがった。そして、
「はっ」
はたと正気に立ち返る。催眠術から解き放たれたような気分で頭を抱える。
――お、俺はいったい、何をやっとるんだ……
休日の朝っぱらから、部屋に閉じこもって妹もののエロゲーに熱中している十七歳。
それが俺・高坂京介の現在の姿であった。いや、いやいや。違うんだって。これは違うの。
俺はごく普通の男子高校生なのであって、別にオタクとかじゃないんだからな。
妹がいるのに、こんなふうに妹もののエロゲーばっかやってるのには、ふかーいわけがあるんだよ。なにを隠そう、これは俺の持ち物じゃなくて……妹のもんなんだ。
妹に、むりやり『やれ』と脅されて、仕方なくエロゲーをプレイしているんだよ、俺は。
……ウソじゃないぞ。とうてい信じられないような話だが、俺の妹は、妹もののエロゲーを愛し、子供向けアニメを好んで視聴する、とんでもない女なのだ。

P.16
つい先日も、この『シスカリ』を強引に押しつけられ『いいから、速攻でクリアして。絶対だかんね』みたいなことを言われたのだ。意味が分からない。
それで諾々と従っちまう俺も、情けないっちゃ情けないんだが……。
「っあ――やめだやめだ! やってられっか!」
もうダメだ。限界だ。妹を持つ身でありながら妹もののエロゲーをプレイするという重圧がどれほどのもんなのか、想像できるか? 実際に妹がいる兄貴諸君ならば、分かってくれるかもしれないが――なんかも~段々とやるせない気持ちになってくるんだよ。

シスカリ』を熱心にプレイする京介。
妹にむりやり『やれ』と脅されて、仕方なくエロゲーをプレイしていると言っていますが……。

P.17
いつもの定位置・ソファに深く腰掛け、超短い短パンで足を組んでいる。太ももを見せつけるようにしたラフな服装だが、別に妹の色っぽい姿を見たって、どうってことはない。
いくら見てくれが良かろうと、妹はそういう対象にはなりゃしねえのである。

この頃は「まだ」妹に対して、性的なアレを向けることはない京介。

P.19
くぁ――っ! こ、この、この女だきゃあ……ほんっっとかわいくねえ!
この間、ちらっと見せたあの笑顔は、やっぱり俺の見間違いだったのかもな!
俺の妹が、あんなに可愛いわけがねえし。
クラッ。い、いかん、ムカついて目眩してきた。

目眩がするほど京介がムカついているのは、1巻のラストの桐乃の笑顔で少しは兄妹の仲が良くなるかと思っていたのに、その期待を裏切られたからですね。

P.21-22
ようやく分かってきた。そうかおまえ、自分が勝てる程度の対戦相手が欲しかったんだな?
対戦はしたい。でも負けるのはヤダ。ハンデつけたり、手抜きされたりするのもヤダ。
あくまで本気の相手と対戦して、勝ちたいという……。
くぅ~っ、どんだけわがままなんだよこの女……。

京介はこう考えていますが、本当のところは大好きなお兄ちゃんと、自分の好きなゲームを一緒にプレイしたいからでしょう。

P.22
「ふーん、バカなんだ?」
にやぁ……と嗤う桐乃。
兄をムカつかせる才能なんてもんがあるとしたら、こいつは天才だな。

京介に対する態度がくだけた分、ムカつき度もアップ。
この巻の桐乃の京介に対する態度は全体的に酷いです。

P.22
「時間ないなら、さっさとクリアしちゃえばいいだけじゃん。どうしてもっていうなら、あたしが教えてあげてもいいケドぉ~……でも今日はあいにく忙しいからダメ」
こいつは人の話を聞いているのか? やりたくねーんだってばよ。
眉間に縦ジワを刻んだ俺に向かって、桐乃はこう言った。
「……ったく。攻略サイトでも見れば? せっかくアンタの部屋からでもネットに繋げるようにしてあげたんだからさ」
「……攻略サイト?」
「そ。『シスカリ@wiki』ってサイトが大分詳しいかな。あたしもそこ見てクリアしたし」

眉間に縦ジワを刻んだ京介を見て、さすがに言い過ぎたと思ったのか、攻略サイトを勧める桐乃。
お兄ちゃんと一緒にゲームをするために必死ですね(笑)

P.23
桐乃からアドバイスを受けた俺は、それならもうちょっとだけやってみてもいいか、という気分になっていた。妹ゲーなんざやりたくないってのはもちろん超本音であるが、中途半端なところでやめるのも気分が悪い。それに格ゲー部分だけに限定してみりゃあ、あのゲームも、わりと……その……面白いしな。

チョロすぎる京介。
なんだかんだ言い訳してますが、かなり『シスカリ』にハマっている模様。

P.24
「そんなことになったら、今度こそほんとに他人のふりしなくちゃね、一生」

わかりづらい桐乃のデレ。
裏を返せば、今はちゃんと家族(兄)と認めているということです。

P.25
「とにかく――友達くるからさ。家にいるんだったら、部屋で大人しくじっとしてて」

わかりづらい桐乃のデレ、その2。
外に出かけろと言わず、家にいてもいいという桐乃の気遣い。
妹様の優しさに感謝するんだぞ、京介お兄ちゃん。

……という、冗談はさておき、この桐乃の提案は単なる話(作者)の都合でしょう。
京介と友達を絶対に合わせたくないなら、京介に外に出かけてもらうのが一番なんですが、実際に京介に外に出かけられたら、話的に困りますしね。

P.26
「そーいうコト。くれぐれも、あたしに迷惑かかんないようにね。かわいい子いっぱいくるけど、話しかけたら殺す。見るのもダメ、穢れるから」

この桐乃語を翻訳すると、
「そーいうコト。くれぐれも、あたしに迷惑かかんないようにね。かわいい子いっぱいくるけど、話しかけたら(友達が兄貴に興味持つかもしれないから)殺す。見るのもダメ、穢れる(友達を見て兄貴が好きになっちゃうかもしれない)から」
となります。
一見ムカつくこの台詞には、桐乃のお兄ちゃんに対する独占欲が表れています。

「くれぐれも、あたしに迷惑かかんないようにね」の部分は伏線なので、忘れずに覚えておいてください。

P.27
机に座って、ノーパソをスタンバイから復帰させる。
えーっと……どこでもいいからボタン押しゃーいいんだよな?
最近桐乃からノーパソを借りっぱなしなので、少しずつ手慣れてきたような……。
「……むう」
一瞬、自分が少しずつ何かに侵食されてきているような錯覚に陥ってしまったぜ。
気のせいだといいんだが。

気のせいではありません。
桐乃の「京介シスコン(オタク)化計画」は着々と進んでいるんですから。

P.26-27
「……ったくよ。何様のつもりなんだあいつは……」
そんなこんなで、俺はむかむかしながら部屋に戻った。
ついさっきまでは昼寝でもしようかと考えていたのだが、妹様と喋って眠気がすっ飛んでしまったので、いまさらそんな気にもなれない。
(中略)
俺はとりあえず、ブラウザを起動してみた。(あまりパソコンには詳しくない俺であるが、ブラウザくらいは分かるさ。使い方もな。ホームページを見るソフトのことだろ?)さっき桐乃が言っていた『シスカリ@wiki』とやらを見てみようと思ったからだ。ちなみにこのノーパソでブラウザを起動するのは初めてである。

文句言いながらも、部屋に戻ったら即『シスカリ@wiki』をチェックする京介。
やっぱりハマってるじゃないですか(笑)

P.29
だが、だからこそ、凄いと思う。
同じエロゲーが好き――たったそれだけの想いが集まって、こんなに上等なデータベースを造り出しちまうんだよな……。
俺は先月の事件で触れた『あの感覚』を、このサイトからも感じ取った。

『あの感覚』というのは「オタクに対する親近感」ですかね?
段々とオタクに染まっていく京介。

P.32-33
「……うぉっと」
参照していた動画が、ややエロいシーンに差しかかった。
これはwikiページ内からリンクが張られていた、シスカリの基本的な立ち回りを解説する動画らしいのだが、この動画を作成したヤツの茶目っ気なのか、ラスト付近に、戦闘終了後の『ご褒美CG』を一部収録してあったのだ。
……ううむ……くそう。やっぱ、こういう妹もののエロには馴れんな……。
ゲームとはいえ、妹がエッチなことをされているシーンというのは、見ていて気が滅入るというか、精神的に辛いものがあるんだよ。
桐乃あたりにしてみれば、ゲームと現実はあくまで切り離された別物であり、妹がいるからといって妹ゲーを楽しめないというのはおかしな話であり、二次元と三次元を一緒にするのは甚だキモいということなんだろうが……俺はその辺、いまだに割りきることができないでいる。
この件については、無理なものは無理としか言いようがないんだ。妹がいるのに、妹を攻略するゲームなんかやってられん。妹キャラがエロいことになってるシーンなんざ見たくもない。

妹もののエロに抵抗を感じる京介。
12巻の頃には、自分から妹にエロいことをするようになるんですけどね(笑)

P.46
あいつの部屋には、エロゲーその他のオタクグッズが大量に隠されているのだ。
アレが友達に見付かったりしたら、親バレ以上にとんでもない事態になるよな……。
いや、別に、アイツのことを心配してるわけじゃないぜ。
あんなヤツはどうでもいいし、どうなろうが構いやしない。だってカンケーねえもんよ。
ただ……その、なんだ。テスト前だってのに、また騒ぎを起こされたらイヤじゃんか。
だから俺は、あくまで自分の心配をしているんだ。

「桐乃の秘密が桐乃の友達にバレないか心配だ」
素直にそう言えば一言で済むものを、長々と言い訳ご苦労さまです(笑)

このくだりは、第四章であやせに桐乃の秘密がバレる伏線にもなっていますね。

P.47
するとちょうどニュース番組がやっており、『違法改造を加えたスタンガンで、女性を感電死させようとしたとのことです。男の部屋からは、他にも成年漫画や――』と、ろくでもない報道が流れてきたもんだから、余計に苛立つ。

第四章であやせとの会話に出てくる『シスカリ殺人未遂事件』の伏線です。

P.48
結局俺は、リビングの掃除を手伝ってやり、妹の友達のためにアイスコーヒーを作ってやり、しかるのちにリビングから追いやられ、とぼとぼと自分の部屋へと戻った。

恐ろしく妹に甘い京介。
妹のためにここまでしてあげる兄なんて、なかなかいませんよ。
口ではなんだかんだ言ってても、結局は妹が可愛いという京介の気持ちが伝わってきますね。

P.55
ちょ、ちょっと待て! 桐乃に彼氏だあ!? ウソだろ!?
そんな菩薩のような男がどこに!? 神か? 神なのか?
目を見開いてかぶりを振る。俺の十七年の生涯でも、最大級の衝撃だった。どのくらいかっつーと、ハンドルネーム“沙織"さんの正体を見てしまったときより驚いたわ!
あんなのを彼女に出来るわけねえだろ。精神が保たねえって。

1巻のP.201で母親と桐乃の彼氏について話してた時に比べると、慌てすぎ(笑)
明らかにシスコン度が上がっています。
菩薩のような男はそこにいるぞ!!

P.55-56
『えー? だって桐乃、ガッコーですっごいモテるじゃん、男の子たちからさー』
『そ、それは! そうかもしんないけど!』
そうなのか……ま、まぁ黙ってりゃかわいいからな。学校では猫被ってるみたいだし……見てくれに騙されちゃうかわいそうな男も、そりゃあいるだろう。
いや、待てよ……? 意外とアイツ、好きな男の前じゃ、ちゃんとしてるのかも。
ひねくれた性根を引っ込めて、健気な彼女をやっているんだとしたら。……想像してみた。
「うえ」
吐き気がした。うっげ、ぺっぺっ! しゃれになんねーわコレ。気色悪りい。

なかなかに酷い京介の反応。
この時の反応は素っぽいですね。7巻の偽彼氏の頃とはえらい違い。

P.60
『あはは、言えてる言えてるーっ。なんていったらいっかなぁ……あ、アレアレ。十年後とかぁ、フッツーにしょぼい中小企業とかに勤めて、課長とかやってそうじゃね?』

27歳で課長って、かなり凄いですよ。中学生じゃ、その辺わからないかもしれないですが。
ちなみにこの台詞を言っているのが加奈子だというのが、合本版に掲載されている読み切り『或る結末の続き』で明らかになっています。

P.61
『あれ? 桐乃ぉ……なに黙り込んでんの?』
『……別に?』

大好きなお兄ちゃんを悪く言われて不機嫌な桐乃。
これはわかりやすいから説明不要でしょうが、一応。

P.61
……勝手なことばっか言いやがって。いい加減にしろって怒鳴り込んでやろうかい。
と、俺は非常に不愉快な気分で憤慨していたのだが――そんな真似はできやしない。
どうせ、俺は、腰抜けのへたれだからな。妹の友達に言いたいこと言われたからって、どうしようもないんだよ。……それだけだ。他に理由なんて、ないんだからな。
妙な勘違いするんじゃないぞ。

そんな真似が出来ない理由は、桐乃に迷惑がかかるから。
P.26で桐乃が言った「くれぐれも、あたしに迷惑かかんないようにね」という言葉をちゃんと守る京介。
つくづく妹想いの良い兄貴ですね、京介は。

P.63-64
桐乃は慌ただしくだんだん音を立てて階段を駆け下り、俺の手からダンボールをひったくるや、嬉しそうな声を上げた。
「“エタナー”の箱じゃん! ウソ、なんでなんで? なんであるのっ!」
桐乃は俺の方を見て、困惑と期待が入り交じったような表情になる。
「え? なに? これ……あたしに?」
「は? あ、いや……」
「すごー! これ、あたしでもなかなか手に入らないんだよ!」
なんのこっちゃ分からんが、何やら勘違いが発生しているようだな。どうやらコイツ、このブツを俺からのプレゼントだとでも思ったらしい。よく考えろよ、どうして俺がおまえに化粧品なんざくれてやんなくちゃなんねーの?
「しょうがない、もらっといてあげてもいいよ」

“エタナー”の箱を見て京介からのプレゼントと勘違いし、舞い上がる桐乃。
よほど嬉しかったみたいですね。

P.64
なんてやつだ、誤解を解く気がどんどん失せていくな……。ところで“エタナー”ってのは、メーカーの名前っぽい。ダンボールに英語でエターナル・ブルーなんとかって書いてあるのが見えた。

この“エタナー”は7巻で登場する御鏡に関係するアクセサリーブランドです。

P.64
「しかもこれ……今年の新作じゃん! さっきからアンタがヘボいせいで溜まりまくってた怒り、これでチャラにしてあげるから!」

この溜まりまくってた怒りというのは、さっき桐乃の友達が京介の悪口を言っていたことによるものです。

P.69
八畳ほどの広さに女子中学生が、桐乃を含めて四人いた。桐乃は勉強机の椅子に座っており、その他二人は猫の座布団を敷いた床に座り、最後の一人はベッドに腰掛けている。

沙織から桐乃が持っていったダンボールの中身がエロ同人誌と聞いて、慌てて桐乃の部屋に飛び込む京介。部屋にいる四人は、桐乃、あやせ、加奈子は確定として、残りの一人はランちんですかね?

P.70
くっそー、俺を追い出したら泣くのオメーなんだぞ? 分かってねーんだろうけどよ。なんだって俺はコイツの世間体を護ろうとしてるんだろうな! ったく報われねえ話だぜ!

京介が桐乃の世間体を護ろうとする理由は、「桐乃の秘密が友達にバレて泣くところを見たくないから」「京介が桐乃の兄だから」ですね。口では何と言っていても、京介は妹想いのシスコンですから。

P.70-71
「は? 手違い? いいから出てって。早く。いますぐ」
ずんずん部屋を横切って俺に肉薄するや、両手でぐいぐい押し出そうとしてくる。
「ちょ、待て……そうじゃないんだ! 話を聞いてくれ……」
「うるさい! 出てけって言ってるでしょ!」
取り付く島もない。これは桐乃にしてみりゃ、ごくごく自然な行動だろう。こいつは俺のことが大嫌いで、バイ菌の温床か何かだと思っているフシがある。しかもさっきの会話からすると、俺の評価はこの女子中学生軍団の中でボロボロらしいしな。
一秒たりとも、俺と友達とを接触させたくねーってのは、分かるよ。分かるんだけどな……。

ここの京介の認識は間違っていますね。
桐乃がここまで必死に京介を追いだそうとする理由は、P.26の考察でも説明したとおり、京介と友達が接触してお互い興味を持たれると困るからです。

P.71
「……くっ」
気付け……! 兄の意図に気付くんだ桐乃……! その中身はエロ同人誌なんだって……!
(ちなみに同人誌とやらについては、、先日のアキバ巡りで不本意ながら学習させられたんだぜ。女三人連れてエロ本売り場を見て回るとか、なんの拷問かと思ったもんよ)
「キモいからこっち見んなっ!」
兄妹同士で通じ合うテレパシーとか、昔テレビでやってたけど、ウソだなありゃ。
俺の願いなんざ、何一つ伝わってねぇ。

巻数が進めば目線でお互いの意図を通じ合えるようになる高坂兄妹ですが、この時点ではまだそこまで理解し合ってないのと、桐乃が逆上しているせいで、まるで通じてないですね。

P.71
「くっ……スマン!」
俺は桐乃の手をやや強引に振り払い、逆に二の腕あたりを掴んで、上手く体勢を入れ替えた。
その際、妹からの即座の反撃がくると思っていたのだが――少なくとも即座にはこなかった。
「ひゃっ」という女の子みたいな悲鳴を漏らし、自分の身体を抱きかかえるようにしただけだった。腕に触っただけだろ! 妙な反応をするんじゃない!

京介がちょっと腕に触っただけでこの反応。
桐乃が京介のことを異性として意識しているのは、確定的に明らか。

P.77
「危ねえ!」
俺は前のめりに倒れながらも、咄嗟に手をのばし、桐乃の後頭部に差し入れた。
言っておくが、あくまでこれは無意識の行動だった。別に妹を助けようとしたわけじゃない。

こんな時にまでわざわざ言い訳しなくても(笑)
無意識で妹を庇おうとするって、そちらの方がシスコンレベル高いし、言い訳になってないんですけど。

P.77-78
どしんっ! 俺たちは重なりあって倒れこんだ。桐乃の後頭部と床に挟まれた掌に、鋭い痛みが走る。
倒れこんだまま目を開けると、すぐ間近に妹の顔があった。何が起こったのか分からない――そんな呆然とした表情をしている。たぶん俺の方も同じだろう。
痛みはあるが、桐乃も俺も、たいした怪我はなさそうだ。
……ってて。
「………………」
「………………」
ぴったり密着して、折り重なるように倒れたまま、俺たちは数秒間見つめ合った。
お互いに、事態を認識する時間を必要としていたのだろう。
俺の右手は、あたかも妹の顔を自分の顔に引き寄せようとしているかのような形で、桐乃の後頭部を押さえており。
俺の左手は(断じてわざとではないが)妹の、大きくめくれあがった服から覗くブラジャーを、いまにも引き毟ろうとしているかのようであった。。
そして俺たちの下半身は、もつれ、互いのふとももを密着させる形で絡まり合っている。

ブコメではお約束のトラブル。
京介は断じてわざとではないと言っていますし、実際そうなんでしょうが、隠された欲望が無意識という形で表れたという可能性は排除できませんね。

P.78
「――――――」
この窮地にあって、俺の脳は以下のようなことを考えていた。
……エロゲーだったら、このシーンには絶対イベントCGがあるよな……。
しょ、しょうがねえだろ! つい最近やったゲームで、まったく同じシチュエーションがあったんだよ! と、誰にともなく心中で弁明していたときだ。

エロゲ脳が進行する京介。わずか1ヶ月でこれとは才能ありますね。
倒れた時の京介の反応は、このゲームに影響されたのかもしれません。

P.78-80
「こ、この変態っ! シスコン! 強姦魔ッ!」
「わざとじゃねぇ――!? それと俺は断じてシスコンではない!」

シスコンという単語が出たのは、ここが初めてですかね。
京介はシスコンであることを否定していますが。傍から見るとどう見ても……ね。
ちなみにこの時の挿絵は、俺妹にしては珍しくお色気路線でサービス満点です。
何度見てもエロい。

P.80
「き、桐乃……?」
「うっわ~……ちょっとコレは引くよ~~ぅ?」
「まさか禁断の恋っ!? 二人はそういう関係だったの!?」
女子中学生どもは、俺の想像の斜め上を行く誤解をしていた。
なんでそうなるんだよ! このマセガキどもめ!

台詞的に、あやせ、加奈子、ランちんの順番ですかね?
この時点では単なる誤解でしたが、まさか12巻で誤解じゃなくなる日が来るとは……。

P.80
「「違っっが――――――――――――う!!」」
俺と桐乃は、声を揃えて同じ台詞を叫んだ。
ある意味では、兄妹の気持ちが強固に繋がった一瞬だったさ。

仲が良い兄妹ですね(笑)

P.81
しかし、妹は事情を理解したあとでも怒りが収まらないらしく、俺にさんざん理不尽な制裁を加えた上で、こう言いやがったのだ。
『追放追放追放ッ! みんなが帰るまで、絶対家に入ってこないで! この変態!』
どうやら誤解云々よりも、俺に胸を触られたことをお怒りになっているらしかった。
別に触りたくて触ったわけじゃねーのにさ……。

桐乃が激怒しているのは、恥ずかしさや照れ隠しもあるのでしょう。
京介の方は触りたくて触ったわけじゃないと言っていますが、12巻では明らかに妹の胸を触りたくて触ってましたし、どこまでこの言葉を信じていいものやら……。

P.85
「だけどっ、本気でお兄さんのこと嫌ってるわけじゃないと思うんですよ!」
「そ、そうかぁ?」
「絶対そうですって! 勘ですけどっ!」
簡単に断定するけどな、俺にはそうは思えん。兄貴のこと、めちゃくちゃ嫌ってるだろアイツ。幾らなんでもそりゃあおまえの読み違いだって。つーか、ほんとお人好しなんだな。
それに加えて、結構思い込みが強い娘なのかもしれない。

桐乃は本気でお兄さんのこと嫌ってるわけじゃないと断言するあやせ。
あくまで勘とはいえ当たってますね。
あやせが思い込みが強い娘というのは、第四章の伏線です。

P.87-88
妹の友達。あやせとの出会いは、我が家の庭に、あまやかな余韻を残していった。
あるいはそれは、彼女が付けていた香水の残り香のせいだったのかもしれないが――
ともかくこのとき、俺は、眠り薬でもかがされたように、ぼーっとしたような気分で突っ立っていた。……なんというか、あれだな。年の近い妹がいるやつなら分かってくれると思うが、妹の友達というのは、やたらとかわいく見えるんだよ。妹と同い年の――ガキのはずなのに。
……まあいまの娘に限っては、マジで超美人だったけどさ。だから余計に……むう。
頭をぽこぽこ叩いていると、背後のリビングで、鍵の掛かっていた窓が開いた。
そこから桐乃が、ぬっと姿を現す。
「…………………………」
超無表情。冷たい視線が、俺の眼球をぐさりと貫いた。
妹は、人差し指でくいくいと『こっちに来い』とやっている……。
「はぁ…………そうだったな。おまえ、まーだご機嫌斜めなんだったっけな……」

あやせに心を奪われて、ぼーっとしてしまう京介。
桐乃がご機嫌斜めなのは、まだ怒っていたからではなく、京介とあやせのやり取りを見ていたからでしょう。
桐乃からしてみれば、あれほど京介と友達が接触しないように気をつけて釘まで刺しておいたのに、結局京介とあやせが電話番号とメルアドまで交換することになってしまったのですから、怒るのも無理はないですね。

P.88
さーて。よそん家の美少女はもう帰っちまったし。
数時間ぶりに、我が家の美少女とのご対面といきますか。

京介は、桐乃を美少女と認識しているんですね。
桐乃の容姿についての評価の高さは相変わらずです。

第二章

P.95
「ほーう。それじゃあ、恋愛感情っつーか、そういうのはない?」
「……………………」
俺が眉をひそめると、赤城が急かすように言う。
「ねぇの?」
「………………ああ」

京介と麻奈実の関係について、問い詰める赤城。
京介のこの反応からして、恋愛感情がまったくないわけではないんでしょうねぇ……。
少なくとも、この時点では京介が麻奈実のことを大事に思っているのは確かでしょう。

P.96
「たとえば……他の男が田村さんに言い寄っても、おまえは構わないっての?」
「は? そりゃ構うよ。ダメに決まってんだろ。誰だその物好きは。ぶっ飛ばすぞ」

P.96-97
「じゃあ何か? 高坂……おまえは、こう言うわけか? 田村さんとは単なる幼馴染みであって、付き合っているわけじゃない。惚れてるわけでもない。でも田村さんが他の男と付き合うのはぜってーイヤだと」
「………………悪いかよ」
くそ、どーして俺がこんな台詞を言わなきゃならんのだ。まるで幼馴染みへの秘めた想いに、自分でも気付いていない鈍感主人公みたいじゃねえか。そんなんじゃねーってのによ。
まあでも、この答えは俺の本心ではある。
あの垢抜けない麻奈実の魅力に気づくような目ざといやつがそうそういるとは思えんが――もしもそんなやつが現れたなら、俺は全身全霊をもって妨害してやる。
いいか、俺はあいつのとなりにいるのが一番落ち着くんだよ。色恋とか抜きにしてもな。
それを邪魔しようってんなら、誰だろうと許さん。

P.97-98
「……ふん」
俺はごく自然な動作で、幼馴染みの姿を探す。
するとふと目が合った。麻奈実は『どうしたの?』という眼差しで俺を見つめる。
俺は『なんでもねえよ』という意味で、鼻を鳴らす。
俺と麻奈実との関係は、つまり、そういうものだった。

麻奈実フラグ。
ここまで、京介が素直に自分の心情を吐露するのは珍しい。
言葉を交わさなくても、目と目で通じ合う描写も二人の絆を感じさせます。
巻数が進むごとに幼馴染み(笑)になるんですが、この時点では、まだまだ麻奈実優勢です。

P.98
俺は畳の上に足をのばし、自分の家のようにくつろいだ。ああいや、桐乃がいない分、この家の方が気が休まるかもな。

P.104
俺が求めている生活というのは、こういうものなのかもしれない。
うるせー妹もいないしな。

事あるごとに妹をディスる京介。
もう少し先の巻なら京介の照れ隠しという解釈もできるのですが、まだ、この時点では普通にそう思ってる感じです。しかし、京介は他の人と話してても、すぐに妹を引き合いに出しますね。どこまでシスコンなんだか。

P.106
だから、まぁ、俺はこれでいい。
変わり映えのしない、いまと同じ未来こそが、俺が常に望み、望んできたもんなんだ。
中学時代の俺が望んだ自分が、いまここにいるんだから、何も文句なんてないぜ。
そりゃ、何もかも思い通りってわけじゃねーけどさ……。
妹の事とか、妹の事とか、妹の事とかな。

ここにも過去編の伏線が。
桐乃の人生相談さえなければ、麻奈実の思い通りの未来がやってきていたのでしょう。

P.110
先日知り合った桐乃のクラスメイト、新垣あやせだ。制服を着ているから、学校の帰りなんだろう。同じ美少女でも、セーラー服姿の桐乃は、いかにも小生意気なコギャルという感じなのだが、あやせの場合は清楚な女学生という風情。

サラッと桐乃を美少女と形容する京介。
京介は、誰かを妹と比較しないと生きていけない病気にでもかかってるのでしょうか?(笑)

P.122
麻奈実に彼氏ができるなんて、桐乃のそれと同じくらいに想像ができん……。

ここは非常にわかりやすい比較。
この時点では、俺妹という作品は幼馴染みと妹のバランスが拮抗しています。

P.122
明日も明後日も、俺が望んだとおり、おそらくはいままでと似たような日が続くだろう。
だが、五年後も十年後もまたそうだろうと考えるのは、いささか楽観すぎるってもんだ。
居心地のいい、いまの日常は、いずれ違う日常にすり替わっていくかもしれない。
俺は自分の信条に従って、できる限り長続きさせるよう頑張っていくつもりだが――

P.123
そう、麻奈実と俺の関係が、そんなに簡単に変わってしまうとは思えない。
そうならないよう、普通のままでいられるよう、俺は俺なりに頑張ってきたつもりだ。

京介は平凡な日常に固執するあまり、今の麻奈実との関係が変化することを恐れています。
京介が麻奈実に恋愛感情らしきものを抱いているのに、それを表に出さずあくまで単なる幼馴染みとして扱っているのは、平凡な日常を守るために頑張って意識してやっていることなのでしょう。

しかし、改めて読み返してみると、この部分は崩壊フラグにしか見えないですね。

P.131
「あーそうすっと……五日くらい前か? ちょっと待ってろよ……」
新聞で特番をやっていた日付を確認してみると、やはり五日前である。
思い返してみると、麻奈実の異変の兆候が出始めたのは三日前の朝くらいからだった。
その前に麻奈実と会ったのは……えっと……休日を挟んじまうから……そうそう、下校中にあやせと会った日だ。

ここ時系列おかしくないですかね?
何度読み返してみても、麻奈実の異変の兆候が出始めたのは二日前の朝になるはずなんですが……。

P.133
俺がついつい世界の真理を叫ぶと、壁がドカッと向こう側から叩かれた。
妹様が『うるせー黙れ』とおっしゃっている……。俺は気まずい視線を壁へと向けた。
ちなみにこいつとの関係は相変わらずだ。たまーに、エロゲーの進捗状況を問いただされたり罵倒されたりする以外は、いっさい喋らないし、目も合わせない。
もっとも妹に嫌われているのは前々からだし、俺だってこんなクソ生意気で面倒きわまりない女なんか大キレーだから、喋らないのはむしろ大歓迎だ。

妹様の壁ドン。
今ではすっかり意味が変わってしまいましたが、これが本来の意味の壁ドンなんですよね。
深夜の0時以降にも関わらず桐乃が起きているのは、テスト前でテスト勉強を頑張っているからだと思われます。京介との関係が相変わらずなのは、テスト勉強やモデルの仕事などがいろいろと忙しくて一緒にいる暇が無いから、というのもあるのでしょう。

P.135-136
と……すると、だ。残る候補は……――
「……………………………………フ~」
俺は一分ほど沈思していたが、やがてきわめて複雑な心境で、目を細めた。
――いる。たった一人……いるっちゃいる、な。真剣に相談に乗ってくれそうで、女心に長けていて、死ぬほど口が固くて、有効なアドバイスが期待できそうなやつ……。
だが……こいつは。こいつはなぁ………………ふぅむ……。
俺はうってつけの人材に思い当たっていながら、決心が付かず……
眉間に深い縦ジワを刻み、しばし唸っていた。
……もしかしたら、先月のあいつも、こんな気持ちだったのかもな。
何しろ、幾ら悩んでいたとはいえ、こんなにも嫌っている相手に自分の秘密をさらけ出して、相談してみようってわけなんだからさ。

様子のおかしい麻奈実について、桐乃に相談しようか悩む京介。
先月のあいつとは、もちろん桐乃のことで、京介に秘密がバレそうになって、人生相談をするかどうか悩んでいたときのことを指しています。ここの京介はその時の桐乃との対になっていますね。

P.136
そう考えると、迷いが少しずつ薄れてきた。
何故ってホラ、あいつにできて、俺にできんわけがないだろうよ。

極めて兄的な京介の思考。兄とは妹の上に立ちたがる生き物なんですよ。

P.137
それで妹のお願いを聞いてあげる優しい兄貴は、世界でも俺くらいのもんじゃねーの?
マジいい男だよ。俺が妹だったらとっくに惚れてるよ。グッドエンド一直線だよ。

京介のエロゲ脳化は2巻の時点で、この有様。
桐乃先生のスパルタ妹ゲー教育の成果は凄いですね(笑)

P.137
というわけでレッツゴー。俺は問答無用で、妹の部屋のノブを回した。
がちっ。
鍵がかかっていた。

部屋に鍵をかけている桐乃。
京介に対しての心の壁はまだまだ厚いようです。
これが8巻(P.234)になると……。

P.141-142
「頼むよ! 聞くだけでもいいんだ! もうおまえしか頼れるやつがいないんだって!」
「………………」
必死の嘆願が功を奏したのか、足に掛かる圧力が弱まった。いまの台詞は、相談に乗ってもらうための方便ではなく、かなりの部分、俺の本心だ。
「……なに、その、もしかして……アンタ、あたしに悩みを相談するつもりなワケ?」
「そうだよ。さっきっからそう言ってるつもりだったんだがな。……悪いか」
「悪い」
即答かよ。しかし桐乃の台詞はそれで終わらず、さも忌々しげな口調で、こう続いた。
「悪いんだけどね……チッ、もうめんどくさいから、五分だけ聞いてあげる。感謝しなさいよ」

口調は相変わらずですが、なんだかんだで話を聞いてあげようとする桐乃。
この妹様、兄と同じくチョロいですね(笑)

P.142
先月のことを思い出す。
親父に問いつめられたとき、桐乃は頑として俺との共犯関係を漏らさなかった。
モデルの仕事を、遊び半分ではなく、こいつなりのプロ意識をもってこなしていたように見えた。親父との約束を遵守し、学業スポーツともに優秀な成績を修めていたことを知った。
そういった内面の硬さは、あの厳しい親父譲りのものかもしれない。
誰よりも口が固く、一度決めたことに対しての責任感があり、女心にも長けている――。
なんだかんだ言って、先月の出来事を経て、俺は桐乃にある種の信頼を抱いていたのだ。
もちろん大キレーだってことは、変わらないけどな。

桐乃のことをよく見ていて、ちゃんと理解している京介。

P.142
妹の部屋には灯りが点いていた。どうでもいいが、明るいところで見ると、俺の妹はやはりかわいい顔をしていやがるな。かわいいのは顔だけだけど。

どうでもいいとか、顔だけとかいうノイズに騙されがちですが、普通の兄は、妹をこんな風に頻繁に褒めたりしません。こういうのを世間ではシスコンと言います。

P.142-143
桐乃はベッドにちょこんと腰掛け、地べたを指差す。
「ほら、座れば?」
だからこの位置関係は、罪人と奉行みたいだと……。
言ってもどうせ聞きゃしねえんだろうけどさあ。
俺は素直に妹の言うことに従い、床に敷かれていた猫の座布団に腰を下ろした。その瞬間、桐乃は不快そうに眉をひそめる。こいつは自分の持ち物を俺に触られるのが嫌いなのだ。

1巻の人生相談の時と同じ構図。
京介が猫の座布団に腰を下ろしたときに桐乃が不快そうに眉をひそめた理由は、京介に自分の持ち物を触られるのが嫌いなのではなく、

P.69
八畳ほどの広さに女子中学生が、桐乃を含めて四人いた。桐乃は勉強机の椅子に座っており、その他二人は猫の座布団を敷いた床に座り、最後の一人は、ベッドに腰掛けている。

京介が座った座布団は、前に友達が使っていたものだからだと思われます。
自分でそこに座れと言った手前、文句は言えないけど、友達が使った座布団に京介が触れるのは気に入らない。
この描写には、桐乃の京介に対する独占欲が表れています。

P.143
「ちょっと……なに口ごもってんの?」
「いや……その……あのさぁ……聞いてもバカにしないか?」
これは別に妹の台詞の真似とかではなく、自然に出てきたものだった。
嫌な話だが、やっぱ俺らは兄妹なのかもな。

高坂兄妹の似たもの兄妹描写。

P.144-145
「じゃあなに? ……まさかその顔で恋愛相談とでも言うつもり?」
「それも違う。俺とあいつは、そういう色恋とは無縁だからな」
「……ふぅん? あんなに、キモいぐらいベタベタしてるのに?」
嫌な言い方すんなあ。よく知りもしねえくせに。俺は、ついムッとして言い返した。
「おまえに俺と麻奈実の何が分かんだよ」
「相変わらずあの女のこととなると、すぐむきになるんだから…………」
忌々しげに言う桐乃。
……おまえ、やっぱり麻奈実のことが嫌いだろう? 意味がわからん。おまえと麻奈実はほとんど会ったことすらねーじゃねーか。どうしてそんな目の仇にすんだよ。

桐乃の台詞から推察するに、興味無い振りをしつつも、京介と麻奈実のことはよく見ているようです。「大嫌いな」京介と麻奈実の関係を見て、ますます二人に敵意を募らせる桐乃。悪循環ですね。

P.146-147
「……というわけなんだが……どう思う?」
「死ねばいいと思うよ」
即答でそんな言葉のナイフを投げてきたので、さすがに俺は「おいっ……」と咎めようとした。しかし桐乃は「真剣に考えた回答だけど?」と悪びれない。
「家庭の事情ってのはなんだか知らないけどさ――これだけは分かった。アンタは死ぬべき」
眇められた妹の瞳は、その温度を、際限なく低下させていく。桐乃はさらに、こう続けた。
「幾らなんでもそれはナイでしょ。なんで気付かないワケ? 一緒に歩いてた男に、自分の顔をばかにされてさー、他の女と比較されたら、落ち込むに決まってんじゃん」
「バカになんてしてねーよ! ちゃんとあとでフォローしたし、俺は、」
「アンタがどういうつもりで言ったとか、カンケーないって。大事なのは相手がどう思ったかなんだからさ。あと何度も言うけど、あたしはアンタらの関係なんて知ったこっちゃないの。これはあくまで、あたしだったらどう思うかって話。いや、あたしだったらもちろん、落ち込む前に、ふざけた口を利いてくれた男に身の程を教えるけどね。ていうか、なに? フォロー? 一度吐いた台詞が、あとで取り消せるとでも思ってるワケ? んなわけないでしょクズ」

この章の桐乃は本当にキツイ。
京介と麻奈実のことで苛ついているから口調が厳しくなったんでしょうが、それにしてもキツイです。

P.148-149
「おまえだったら……どうする? たとえば……俺がおまえを怒らせちゃったとして、どうしたら許してくれるんだ?」
「絶対許さない」
「許すっつー前提で考えてくれよ!」
「えっ……だって、何をされても許さないし……」
きょとんと目をぱちぱちさせる桐乃。
当たり前のように言いやがって……。
こういうときだけかわいい表情してんじゃねぇよ。絶対ダマされねーぞ?

当たり前のように妹かわいい描写を入れてくる京介。

P.152
そんなド派手なアクセサリーを身に付けて、砂浜でカッコいいポーズを決めている水着姿の茶髪モデルは、目の前にいる俺の妹であった。となりには青いビキニ姿のあやせもいる。
先日、あやせが言っていた見本誌というのは、どうやらこれのことらしい。
……実にイマドキの女子中学生が好みそうな記事ではあるな。
かわいいじゃん。

前回から3ページしか空いてないのに、またもかわいい描写。

P.153
「だいたい――喧嘩するほど仲がいい男からもらったもんならさあ。それがなんだって、嬉しくないわけないよ」
「……それって、おまえの話か? それとも、一般的な女の子の場合か?」
「さあ?」

桐乃は答えをはぐらかしていますが、桐乃の話が含まれているのは確かでしょう。
この伏線は、3巻での京介から桐乃へのクリスマスプレゼントに繋がっています。

P.153
小馬鹿にするような口調ではあったが――たぶん、そうじゃない。
こいつは心底兄貴を嫌っていて、ムチャクチャむかつく性格をしちゃあいる。
しかし、自分を頼って相談してきた相手に、適当な回答をしたりはしない。こんな見てくれとは裏腹に、厳しくしつけられたせいか、妙に硬いところがあるやつなのだ。
それは先月の事件で、なんとなくだが分かったことだった。
だからこそ俺は、こいつに悩みを吐露したんだよ。

「心底兄貴を嫌っていて」の部分以外は、妹のことを的確に理解している京介。
京介の桐乃に対する信頼具合が窺える描写です。

P.159
そうやって、ときおり「ふぅ」と汗を拭う仕草を見ていると――
「――――」
一瞬で色々な想いが胸を過ぎった気がした。
心配、寂寥、苛立ち、郷愁、親愛、それに――……まぁ、なんだ。
混沌としていて、ちょっと一言では表せないが……安堵というのが一番近いかな。
こいつのそばにいると、たまらなく安心する。
避けられているかもしれないという不安を抱えているいまでさえもだ。
それは、何年もかけて少しずつ俺の心に深く刻まれてきた、もう取り外しの利かないルールなのかもしれなかった。条件反射といってもいい。
――は、まったく。俺って、こいつがいないとホントしょうがねえやつだよ。
ちゃんと仲直りしなけりゃな。改めてそう思う。

今では考えられないほどの麻奈実推しの描写。
まぁ、結局人気では桐乃や黒猫、あやせに勝てなくて段々出番が減っていくうえに、最後は汚れ役まで押しつけられるんですけどね。いつから幼馴染みは負けフラグになってしまったのか……。

P.163-164
「それは、だって……きょうちゃんのこと、ほっとけないもん」
「知ってる。なにせおまえは、俺のお袋よりもお袋みたいなやつだからな」
「……それって、大好きって意味?」
少し落ち込んだような口調で、麻奈実はそう口にした。
以前とは違う返答が、自然と俺の口を衝いて出てくる。
「おう」
「え、ええっ――!?」
麻奈実はびくっと身体を震わせた。
「あ――ち、違うぞっ。いまのはそういう意味じゃなくてだな……ああクソ……ええっと……売り言葉に買い言葉っつーか、家族的な意味というか……だな……その……」
バカか! なに言っとんだ俺は!
クソ暑い中、二時間も突っ立ってたもんだから、脳味噌ゆだってんのか!?

京介が幼馴染みと典型的なラブコメみたいなことをやっている、俺妹にもそういう時代がありました。

P.177
――やれやれ。俺たちの腐れ縁は思いの外、頑丈なのかもしれねーな。
この天然地味眼鏡な幼馴染みとの付き合いは、ずいぶんと長いものになりそうな予感がする。
俺と麻奈実がお互いに、そうしようと心がけていく限り、俺たちの望みは叶い続けるからだ。
その望みさえ、いずれ変わるとこがくるのだとしても。
いまはこれでいい。なに一つ問題ねえ。
ふん、今後ともよろしくな。

こんなフラグを立てておいて、まさか1年半後にあんなことになるとは。
京介の感じた予感とは一体何だったのか……?

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