『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の伏線を改めて読み解き、「完全なる桐乃エンド」を考察してみた(11巻編、上)

注意

この記事はライトノベル俺の妹がこんなに可愛いわけがない』を全巻読んでいることを前提に書いています。
おもいっきりネタバレがありますので、未読の方はお気をつけください。

10~12巻の出来事と時間軸

10~12巻の時系列はバラバラで理解しづらいので、3巻分をまとめています。

日付 出来事 原作
10月上旬のある日 両親に桐乃との仲を疑われ、一人暮らしをすることになる 10巻、第一章
翌日の放課後 御鏡と赤城に一人暮らしについて話す 10巻、第一章
上記の2日後 京介のアパートに桐乃がやってきて、冷蔵庫と『押しかけ妹妻』をもらい、賭けをする 10巻、第二章
上記の翌日の放課後 加奈子がアパートにやってきて、桐乃と兄妹ということがバレる 10巻、第二章
上記の翌朝 あやせと黒猫がアパートにやってきて、黒猫に自分の決断を伝える 10巻、第二章
同日放課後 親父がアパートにやってきて、『押しかけ妹妻』を持ってるのがバレる 10巻、第二章
上記後の休日 京介のアパートで引越し祝いパーティ、あやせが京介のお世話をすることに 10巻、第三章
上記の翌日の放課後 あやせに桐乃がフィギュアや妹エロゲーを好きな理由について聞かれる 10巻、第三章
上記の後日の放課後 雨の日に、日向ちゃんが様子を見にやってくる 10巻、第三章
上記の後日の深夜 あやせのファンブログに異変が起こる 10巻、第三章
同日 ブログの異変について赤城や御鏡に相談 10巻、第四章
上記の翌日の放課後 女装した御鏡に遭遇 10巻、第四章
上記の後日の放課後 あやせにエッチな本を隠していたのがバレる 12巻、第二章
上記の後日の土曜日 あやせに『おしかけ妹妻』を隠していたのがバレる 12巻、第二章
上記の翌日の日曜日 アパートに加奈子が差し入れに来て、あやせとの仲を誤解されそうになる 12巻、第二章
上記の翌日の放課後 あやせと買い物に出かけ、フェイトさんから赤ちゃんを預かる 12巻、第二章
11月1日 アパートであやせに踏まれている黒猫を目撃する 10巻、第四章
11月3日 模試当日、あやせのストーカー問題解決 10巻、第四章
同日試験終了後 桐乃と一緒に病院に行く 10巻、第四章
11月のある日 麻奈実と加奈子の話し合い 11巻、エピローグ
上記以降のある日 桐乃が黒猫と沙織に、卒業したら海外に行くことを告げる 11巻、俺の妹がこんなに可愛いわけがない12 プロローグ
上記の翌日 桐乃、黒猫、あやせの話し合い 11巻、俺の妹がこんなに可愛いわけがない12 プロローグ
12月の初め 模試結果発表、京介がA判定を取って実家に戻れることに 10巻、第四章
上記後の休日 京介が一人暮らしを終えて帰宅、部屋が桐乃の私物だらけになっている 10巻、第四章
12月上旬 田村家で麻奈実、京介、桐乃の話し合い、冷戦の真相が明かされる 11巻、第一~四章
上記の後日 京介が櫻井と再会、好きなやつがいると櫻井の告白を断り、自分から告白すると決心する 11巻、第四章
12月のある日(上記のすぐ後) 桐乃をクリスマスデートに誘う 12巻、第一章
上記の後日 アパートの前で、あやせに告白されて断る 10巻、第四章と12巻、第二章
12月20日 京介が黒猫に正式に自分の気持ちを伝え、黒猫を振る 12巻、第三章
12月24日 京介がクリスマスデートで桐乃に告白、高坂兄妹が恋人同士になる 12巻、第一、三、四章
12月25日 黒猫と沙織に兄妹で付き合うことになったと話す、ゲーセンで櫻井に会う 12巻、第四章
とある休日の日の朝 起きたら桐乃が隣で寝ていて、びっくりする 12巻、第五章
正月を過ぎた頃 UDXのライブで加奈子に告白されて、断る 12巻、第四章
とある休日の日の午前中 桐乃と『恋人の儀式』をする 12巻、第五章
卒業式の日 麻奈実と対決、桐乃と結婚式を挙げ、約束通り兄妹に戻る 12巻、第五章
春休み 桐乃と秋葉原に行き、指輪を買ってあげたあとにキスをする 12巻、最終章

第一章

P.16
「どうやらおまえの言うとおりらしいな」
「え?」
ぴく、と俺をチラ見して、耳を動かす桐乃。俺は素直に褒めてやったよ。
「すげーじゃん」
「ふん、うっさいっての」
なんで褒めると怒るのかね、この妹様は。

やけに素直な京介。
桐乃が怒ったのは、単なる照れ隠しですね。

P.28
「ねぇねぇ、あたしの方が看板娘に相応しかったでしょ?」
アホがアホなことを言い出しやがった。
「ヘッ、そういう台詞は和菓子作れるようになってから言うんだな」
「はあ? やる気になればすぐに作れるようになるっつーの」
「ばーか、そんな甘いもんじゃねーって」

麻奈実より自分の方が看板娘に相応しいと言い出す桐乃。
麻奈実への対抗心もあるでしょうが、ここは頑張った自分を京介に認めて欲しいという気持ちの現れでしょう。京介は否定していますが、桐乃が本気を出したら、本当にすぐに作れそうです。

P.30
……なんか、冷たい目で見られてんだけど。
「……ずいぶん素直じゃん」
『あたしが髪型変えたときとは、ずいぶん態度ちがくなーい?』と目が言っている。
(いや、褒めたじゃねーかよ! おまえが美容院行ったときもさあ!)
(はあ? 褒めればいいってもんじゃないっつーの!)
もう、口に出さなくても兄妹喧嘩ができるよーになった俺たちであった。

とうとう、口に出さなくても兄妹喧嘩ができるまでに。
二人の関係も、いよいよここまで来ましたねぇ。

P.35
「桐乃ちゃん、桐乃ちゃん、こっちおいで。――お年玉あげるから」
「え? まだ十二月ですよ?」
ちらっと俺を見る桐乃。たぶん『ねぇ、お婆ちゃんボケちゃったの?』って意味のアイコンタクトだろう。俺はぶんぶんと掌を振って、『いやいや! ボケてねーよ! たぶん!』というジェスチャーを返す。

今度はアイコンタクトで通じ合う兄妹。

P.36
「あんちゃん来てるってマジ!?」
「おう、ロックか。なんかおまえ、数年ぶりに会ったよーな気がすんな」
「ひでえ! せいぜい数ヶ月ぶりじゃねえの?」
「だっけか」

メタネタ。
ロックが最後に登場したのは3巻の第二章。京介が数年ぶりというのは、作中の時間ではなく現実の時間のことでしょう。

P.38
「よ。裏切りもん」
「――――」
一拍の間があってから、固まっていたロックがおずおずと口を開いた。
「……まさか…………おまえ、まだやってんの?」
「ふん、なんだっていいでしょ」

P.39
「や、それがさ! おれたち昔――」
「――言っていいんだ?」
ロックの台詞を切り裂くように桐乃が割り込んできた。
「っ!」
発言を邪魔されたロックは、何故かちらりと麻奈実を見て――
「ああああああああああああああああああよくねえ――!!」
と恥ずかしそうに叫ぶ。もちろん俺はこう言ったさ。
「おいおいなんだよ。気になるじゃねぇか」
「ごめんあんちゃん! 勘弁してくれ! この秘密はおれ、墓まで持って行くと決めたんだよ!」

このロックと桐乃の会話については、下記を読めば理解できます。

P.46
「あんちゃんは、別に、何もしてないんだよ。ただ、おれたちが勝手に怒ってただけでさ」
「聞こえねーよ、なんだって?」
「姉ちゃんが! あんちゃんと仲良くしてんのが、なんかムカついたんだよ!」
――――。
「姉ちゃんて……麻奈実?」
「そう! なんか、姉ちゃんがあんちゃんに取られちまったような気がして、イライラして……そんであんちゃんに八つ当たりしたりしてさ」
「あー」
そっちにゃ思い当たったわ。
「あーあーあーあー……そーいやおまえ、最近よく絡んできてたよな。俺がおまえんち行ったときとか、いきなり怒鳴って――喧嘩売ってきたりよ」

P.49-50
あれ? 桐乃のヤロー、最近反抗的じゃね?
麻奈実んちに遊びに行ったときくらいしか、一緒に遊べないってのに、そーゆうときに限ってタイミング悪くご機嫌斜めでな。
『なにキレてんのおまえ?』
『しんない! ばか!』
これである。
『は? 意味分かんねえし』
思い返してみれば、この頃から桐乃は、意味不明の理由で怒る女だった。
偶然だろうが、ロックのバカも同じタイミングで、親分である俺に反旗を翻していた頃だったので、『どいつもこいつも、年下ってのはうぜーやつらばっかだなあ』なんて思っていたっけ。前述のとおり、その後ロックは反省し、再び俺の旗下へと収まるわけだが……。
一方で、桐乃はさらに、反抗の度合いを上げていった。

京介と麻奈実が仲良くしてるのを見て、桐乃とロックは自分たちの兄、姉が取られるような気がしてヤキモチを妬いたのでしょう。そして、二人は京介と麻奈実が仲良くするのを邪魔しよう、自分たちの兄と姉を取り戻そう、みたいな協定を結んだと思われます。

しかし、ロックはうんこを漏らしたのを京介に助けられた件で京介と和解し、二人の邪魔をするのをやめます。桐乃はそんなロックを裏切りもんと呼び、ロックはいまだに桐乃が小学生時代と同じく二人の邪魔をしているのを知って、呆れたのでしょう。

P.40-41
桐乃と麻奈実の話し合い……ねえ」
ちらっと婆ちゃんと喋っている桐乃の顔を見ると、目が合った。
「――っ」
すると桐乃は、慌てて目をそらしてしまう。
……なんだあいつ? 麻奈実と俺の会話が聞こえたのかもしれないが、にしてもいまの反応はおかしくないか?
麻奈実を見て目をそらすんならまだしも、なんで俺の顔を見て動揺すんの?

これから行われる話し合いでは自分がお兄ちゃんっ子であることを京介に話さなきゃいけないので、桐乃も意識して緊張しているのでしょう。

P.51-52
「嘘でしょ! なにコイツ強すぎ! あたしのレイカたんデッキが返り討ちだと……!」
…………このクソゲー、六万円使っても負けるのかよ……上には上がいるもんだな。
「あーもー! マジありえない! イベント装備奪われたし! チッ、この重課金厨死ねばいいのに! ゲームに幾らリアルマネー突っ込んでるんだっつーの! ばっかじゃないの?」
(中略)
「課金無双してたはずのあたしが負けちゃったのは、相手が『シスゲー』超古参で、いまはもう廃れちゃった大昔のゲームで配られた限定レアカードをたくさん持ってたからっぽい」
(中略)
桐乃のいう大昔ってのは、せいぜい数年前ってところなのだろうが。
『シスゲー』とやらは、そんなに前からあったらしい。どうりで聞き覚えがあるわけだぜ。
もしかしたら『大昔』に――俺も、見聞きしたことがあったのかもしれない。

過去編の伏線。

P.177
「……つか、『hwhw虎兎s』(ほわほわらびッつ)の『きょうちゃん』って……さっきあたしをシスゲーで凹ってくれた相手のデッキにも入ってたんですけど」

P.287
ゲームはそこそこやってるけどね、と、櫻井はスマホを取り出して、シスゲーの画面を俺に見せつける。
はは、まさかこいつがおまえとの再会の鍵になるなんて、当時は思いもしなかったな。

これらの描写を見る限り、この時、桐乃が負けたのは秋美ですね。

P.52
「…………ねぇ」
回想に入りかけたところで声をかけられ、はっと気付く。
「なっ……!」
いつの間にか桐乃は、四つん這いの体勢で顔を近づけてきていた。
「な、なんだよ」
ドギマギと慌てる俺。

桐乃を意識しまくる京介。
妹相手の態度じゃないですね(笑)

P.57-58
「『お兄ちゃん、一緒に遊んでよ』つって――毎日毎日俺のあとに付いて来ようとしてたっけ」
「ん、んなこと言ってないっ!」
「言ってたって」
「言ってないっ! 『お兄ちゃん』て呼んでたのは二年生までだもん!」
「……よ、よくそんな細かく覚えてんな」
「……はっ!」
愕然と目を見開く妹。だがすぐに気を取り直して、ごほんと咳払いを一つ。

>『お兄ちゃん』て呼んでたのは二年生までだもん!
もんという語尾が妹っぽくて可愛い。滅多に見られない妹らしい桐乃。

>「よ、よくそんな細かく覚えてんな」
そりゃあ「大好きなお兄ちゃん」のことですもんね(ニヤニヤ)。

P.60-61
「あの頃……あたしがどーしても付いてくって怒鳴ったとき、あんた走って逃げたでしょ。意地悪そうに笑いながら――『付いて来られたら、おまえも連れてってやるよ』って」
「――んなこと、あったかな」
「あったの。あたしは、あんたを、走って追いかけて……でも、追いつけなくて……転んで……あんたの背中がどんどん遠ざかっていって……置き去りにされて。……気が付いたら、全然知らない場所だった」
「…………」
「心細くて……怖くて……泣いちゃって。でも、誰も助けてくれなくて……」
すっごく哀しかった、と、桐乃は言った。
「でね……それと同じくらい……ううん、それ以上に――すっごく、すっごく、悔しかった
当時の思いが甦ってきたのか、目を伏せて唇を噛む。
見てろよ、って、思った」
「そっか」
ウザい妹を振りきって、せいせいと男友達と遊びに行く。
確かにあの頃の俺なら、いかにもやりそうだ。さすがに妹が転んだら助けに行くだろうから、きっと気付かなかったんだろうな。

桐乃が兄を見返すために努力を始めた理由の一つ。
ちなみに原作では桐乃が転んだことに気付かず、そのまま行ってしまった京介ですが、アニメでは気付いて戻ってきています。

P.62-63
「違ったらそう言ってくれ。おまえが陸上始めたのって……」
「あんたより、足が速くなりたかったから」
「そっか」
「いつか、あたしと同じ思いを味わわせてやるんだって、決めたから」
「そっか」
どうしていままで、気付かなかったんだろう。
とっくの昔に、リアのやつが、答えを教えてくれていたってのに。
桐乃はもう――当初の目的を果たしているって。
妹がアメリカに渡る前、俺はこいつに言ったのだ。
『いま、おまえと足で勝負したら、もう勝てねえな』
そしたらこいつ、誇らしそうにしていたっけ。
『なんか、すっきりした』
満足そうに笑って、俺の下(もと)から去って行った。当時は意味がわからなかったけれど。
そういうこと、だったのか。
運動音痴を直したのも、見た目に気を遣うようになったのも、成績を上げていったのも。
「――ぜんぶ、俺を見返すため……だったのか」
「は? 思い上がんないでくんない?」
俺のすぐ前に座っていた桐乃が、半目になって見くだしてきた。
「え?」
「いま言ったのは、あくまできっかけであって――あたしがいまのあたしになったのは」
「分かってるよ」
おまえが凄えやつなのは、おまえが頑張ったからだよな。
そんなの、当たり前のことじゃねえか。
「――ならいい」

桐乃がチート桐乃になっていったのは京介がきっかけ。
あくまできっかけとはいえ、兄を見返すためにありえない努力をして、そして実際そうなってしまうとは、桐乃のブラコンぶりの凄さがわかるエピソードです。
この辺りについてはすでに4巻編、下の記事で考察しましたね。

P.64-65
「それもあるけど、それだけじゃない。確かにアレは、当時のあたしにとっては超悔しくて、ムカついて、いままでの生き方を変えるくらいのきっかけだったけれど――」


「――そんなことで、お兄ちゃんを嫌いになるわけないじゃん」


桐乃が口にした『お兄ちゃん』は、目の前にいる『俺』のことではなく――
きっと妹からそう呼ばれていた頃の『高坂京介』のことなんだろう。
「超ムカツクことがあって、走り始めるようになって、一緒にいる時間が減ってからも、あたしはお兄ちゃんっ子のままだった。――あんたを無視するようになったのは、そのあとだよ」
桐乃が話している間、俺はずっと絶句しっ放しだった。
だって、だってよ。
「……なにびっくりしちゃってんの? あたしがべらべら自分のこと喋んのが、そんなに意外?」
それもあるが、俺が絶句している一番の理由は、
『――そんなことで、お兄ちゃんを嫌いになるわけないじゃん』という妹の台詞の破壊力が、とんでもなく凄まじかったからだ。
喋れるわけがない。
俺の妹がこんなに可愛いわけがない。
殺すつもりか。

妹の台詞の破壊力で(萌え)殺されそうになり、絶句する京介。
超シスコンのお兄ちゃんには刺激が強すぎたようです(笑)9巻の『俺の妹がこんなに可愛い』を見る限り、京介のシスコンぶりはとんでもないことになってますからね。

P.66
今夜は、俺たちにとって二度目の……ネタバレ上等の話し合いなのだから。
一度目は、きっと失敗だった。だけど今度は、選択肢を間違えない。

一度目は4巻第四章で桐乃の秘密を見せてもらった時のことですね。
選択肢とあるから間違いないでしょう。

P.67の年表や兄妹の会話にはミスリードや間違いはまったく無いので、そのまま信じて大丈夫です。

第二章

P.71-73
「――というわけで、新学期早々、俺は三つも大事件を解決したわけよ!」
「へぇ~っ! 兄貴って、みんなに頼られてるんだね」
(中略)
ようやく兄離れをしたのか、以前のように俺の後を付いて来なくなった桐乃であるが――正直せいせいしているというのが本音でもあるが――こうやって歩く数分間だけは、妹と喋るのも悪くないなんて思う。家で話すとなーんかウザく感じるんだけどよ。……不思議だ。

妹に自慢話をする中3の頃の京介。
この頃は桐乃も信じられないぐらい素直ですし、兄妹仲も悪くないです。

P.75-76
「やれやれ……おまえに泣かれると、こっちまで泣きたくなるよ」
不思議な感覚なんだけど、本心だった。白状してしまうと、親父に殴られたとき、俺は泣いたのだが、精神的にはあんときよりいまの方がきつい。
「わたしだっておんなじだもん!」
「――」
「きょうちゃんが怪我したり、危ない目に遭ったりするくらいなら、自分が怪我した方がずっといいよ! 自分からそういうことするきょうちゃんも、それを褒める人たちも――みんな大っきらい!」
本気で叫ぶ麻奈実。
「そっか」
確かに、俺たちはおんなじだ。
もしも麻奈実が俺みたいなやつだったとしたら、俺の胃が爆発してしまう。
反省したよ。マジで。俺はできる限り真剣な声を出した。
「心配させてごめん。心配してくれて、サンキュな」

中3の頃の京介と麻奈実。
この時点では、京介にとって麻奈実>桐乃です。
ここはそれがよく分かる描写。

P.77
「俺はクラス委員だからな。クラスメイトが泣くようなこと、しちゃだめだろ」
「………………」
「……お~い、なんでムスッとすんの?」
かっちょいい台詞だったろうが?
「しらない」

麻奈実の気持ちには全然気づかない京介。
この頃から自分の恋愛関係には鈍かったようです。

P.77-78
「……きょうちゃんは、いつも優しくて、誰にでもお節介を焼いて……いつだって一生懸命で……。だからみんなに頼りにされるんだよね」
「それっていいことだろ」
俺は嬉しいし、みんなも喜ぶしさ。
けれど――麻奈実はゆっくりと首を振った。
「ちがうよ。少なくとも……わたしにとっては、違う」
「?」
涙を拭いて、優しい母親のような眼差しで、あくまで真摯に幼馴染みは繰り返す。
「……むりしないでね、きょうちゃん」
へっ、なーに言ってんだよ。
「俺はちっとも、無理なんてしてないぜ」

無理をする京介のことを心配する麻奈実とそのことにちっとも気づかない京介。
いずれ来る破綻への伏線です。

P.82
――『今年に入ってから、ずーっと学校来てない人がいて心配』、ね。
「ひひひ、任せとけっつーの」

この「ひひひ」ってのは京介の台詞です。
桐乃のあの手の言葉遣いは、昔の京介の影響を受けている可能性が高いですね。

P.88
「あのー、うるさいんですけどー。筐体叩くのやめてくれませーん?」
赤い眼鏡をかけた、いかにも優等生然とした女児(小学校高学年くらい?)だ。ただし何故か、ゲームのマッチョキャラと『筋肉』という文字がプリントされたTシャツを着ている。

P.91の挿絵と描写で分かりますが、この女児は赤城の妹、瀬菜です。

P.92-93
「見てください! この肉体美! ほとばしる汗っ! ぶつかり合う漢同士の肉と肉を! チョー素晴らしいでしょう? 胸がドキドキしちゃうでしょう!?」
ふんふん鼻息も荒く力説する。なんだこのガキ、頭おかしいわ。
(中略)
「うん。ていうかなに? キミってホモとか好きな人なの?」
「…………ホモってなんですか?」
「えーっと……漢と漢の、絆……みたいな?」
「ほ、ほう……!」
激しい興味を示す女児。
「BLとか――知らない?」
「し、知りませんっ」
ぶんぶんと首を振る女児。
「でもでもっ、なんだかミワク的な響きですね!」
「そう。じゃあインターネットとかで調べてみるといいよ!」
「はいっ!」
何のことやらわからねーが、小学生に妙なこと吹き込んでんじゃねーよこのバカ女。
怪しげな単語を検索させて、将来に影響を与えちゃったらどうすんだよ。

瀬菜がBLにハマるきっかけを与えた秋美。
京介が懸念してますが、その懸念は現実のものに……。

P.97
「にひひっ」
まるで俺の妹のように、歯を見せて笑いやがる。

秋美ってちょっと桐乃に似たところあるんですよね。ゲームが好きなところとか。

P.104-105
『初心者に、初プレイでそう感じさせるのが、良いゲームの条件です!』
ずっとあとの話になるが――『高校三年生になった俺』に、とある後輩が教えてくれた言葉である。だから、いまにして思えば、『鉄筋4』は良いゲームだったんだろうな。

この、とある後輩は瀬菜と真壁くん、どっちのことですかね? 瀬菜のことだとは思うんですが、真壁くんとも取れるんですよね……。まぁ、本筋に絡むわけでもないので、別にどちらでも構わないのですが。

P.120
……なるほど、あーやって装着するのか。
感心する俺。将来、偽物のおっぱいに騙されないよう気をつけなくてはいけないな……。
こうして俺は、偽物のおっぱいを見分ける眼力を養ったのであった。遠い未来、俺の彼女がデートに乳パッドを装着して来たとしても、必ずや見ぬくことができるであろう。

「お前、8巻の黒猫とのデートで見抜けなかったじゃねーか!」というツッコミ待ちなのか、実はあの時本当はパッドだって気づいてたけど、気を使って見て見ぬふりをしてたのか……解釈に迷う描写です。まぁ、これも本筋に絡むわけではないので、別にどちらでも構わないのですが。

P.124
「だめェ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!」


「き、桐乃ちゃん?」
「ダメダメダメダメ! 兄貴はあたしが起こすから、まなちゃんは下で待ってて!」
「え? で、でも……」
「いいから! あたしならすぐ起こせるから!」

京介を起こしに来た麻奈実に対し、自分ならすぐ起こせると主張する桐乃。
ヤキモチ妬いて可愛いですね。

P.124-125
「えいっ!」
どーん!
「ぐはぁッ!」
腹部に重い衝撃。俺はたまらず目を覚まし、
「な、なんだぁ……!?」
攻撃を加えてきたものの正体を見定めた。
俺の腹の上に乗っかっていたのは――妹。
「桐乃てめぇ……! その起こし方やめろっつってんだろ!」
「だってこーでもしないと起きないじゃん」
「んなことねーよ。普通に起こしてくれれば目ぇ醒めるっつーの」

このシーンは、1巻の最初の人生相談で深夜に京介の部屋に来た時との対比ですかね? 余談ですが、ここの挿絵の小学生桐乃はとても可愛いです。

P.125-126
「まなちゃんが、兄貴を起こすの苦戦してたから、あたしが代わりにやってあげたってわけ。――いつもどおりに!」
なに偉そうにしてんだこいつ。さっさとどけよ。
「きょうちゃん、いつも桐乃ちゃんに起こしてもらってるの?」
「いつもじゃねーよたまにだよ。おい桐乃、もう俺起きたから。とっととどけよ。重い」
「う、嘘だあ。あたしそんな重くないでしょ」
「デブって意味じゃねーよ! やせてようがチビだろうが、人間に乗っかられりゃ重いっつーの」
まったくこの妹は、最近みょーに色気付きやがってよ。
「おらどけ」
「うにゃ……」
俺は足裏で軽く妹を押しのけ、ベッドから起き上がった。

いつもどおりに! などという嘘をついてまで麻奈実に張り合う桐乃。昔の桐乃は、子供っぽくて可愛いですね。

>う、嘘だあ。あたしそんな重くないでしょ
これは「京介に重いと言われたことがショックで、モデル体型を維持するように努力するようになった」という伏線ですかね?

>俺は足裏で軽く妹を押しのけ、ベッドから起き上がった。
軽くというところに、京介の妹に対する優しさが垣間見えます。うにゃ……という桐乃の声も可愛い。

P.128
「そうか? その分やりがいあるだろ」
ニッ、と歯を見せて笑う俺。それを見た桐乃は、何故か視線をそらして、
「……ま、まぁ、あたしにはカンケーないけどさ。…………がんばってみればいいんじゃん?」

京介を意識する桐乃。
この頃から既に京介に対して、兄以上の気持ちが芽生えていたみたいですね。

P.128
「ひひっ、任せとけっつーの」
頭に手を乗せ、撫でてやる。
最近俺や麻奈実に対して反抗期っぽくなりつつあった妹だが、
「にひひ」
笑いかければ、こうやって笑い返してくる。

京介お得意の頭に手を乗せる仕草。
この頃の桐乃は、まだ素直に喜んでますね。
P.82の時にも書きましたが、この描写を見る限り、桐乃のにひひ笑いは京介の影響と見て間違いなさそう。

P.130
「あのな、麻奈実……一回しか言わねーから、よっく聞いとけよ」
視線を合わさず、ごほんと咳払いをする。
「おまえは、俺にとって一生付き合っていく家族みてーなもんなんだ。もしおまえがピンチのときは、真っ先に助けに行く」
「……ほんと?」
「おう。命に代えても助けてやるよ」
照れくささ半分、誇らしさ半分。本心だったから、笑顔で言えた。

最終巻の結末を知った後に読むと、残酷な描写ですね。
この時の京介は確かに本心で言っていて、決して悪気はないんでしょうけど……。

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