作品情報
そこには二人しかいなかった。両親は急逝し、撲と妹はおさないころに、二人ぼっちで世界に放り出された。世界は理不尽で、残酷なことだらけで、冷たく眼前にあった。ただ、現実を生き延びるために、手をとりあうしかなかった。その絆だけが確かだった。決して分かたれることがない唯一の証。愛なのか、恋なのか、依存なのか、わからない。わからないけど…。絵本作家・大吾は、白血病を抱える妹・一樹に彼女が不治の病である事実を隠しながら日々を送っていた。そんな彼の目の前に、モノクロームの世界から異界からの使者が現れる。その存在は、自らを生神と名乗り、青年・大吾の生の終わりを告げる。「君は、今晩死ぬんだ―脳溢血でね。ただし、ある契約をすれば執行猶予を与えよう」ミステリー大賞の俊英が描く、生と死を切り取った全く新しい物語。ヤングミステリー大賞第6回奨励賞。
上記はAmazonの内容より転載。
1巻完結のライトノベル。
妹について
主人公の妹。
名前は一樹(いつき)。
一人称は「あたし」
兄の呼称は「ダイゴ」
年齢は兄の11才下の13歳。
病気で入院中の病弱な少女。
年相応の子供っぽさと、妙に達観した大人っぽさを併せ持っている。
自分の兄に対する愛情も、兄の自分に対する愛情もそれが当然という感じで、迷いや疑問は欠片も無い。
「それでもいいよ、ダイゴはあたしが守ったげる」
「ダイゴの一番は、あたしだから」
「失礼ね、愛してるのよ。あたしはダイゴの為に生きて、ダイゴのお陰で生きて、ダイゴの望むことのために頑張って、ダイゴのそばで死ぬの。この身体が迎え入れるのもダイゴだけよ、あんたみたいな薄汚いヤブ医者なんかじゃ決してないわ」
兄について
絵本作家。24歳。
両親は6年前に交通事故で亡くなっていて、現在はアパートで一人暮らし。
自分と妹を取り巻く世界の理不尽に憤りながらも、絵本で生計を立てつつ、妹の面倒を見続ける青年。
妹の病気が少しでも良くなるようにと苦労と努力を重ねてきた結果、兄妹の関係は依存と呼べるほどになっている。
基本的な考えは妹>自分。
一途に妹の幸せを願う良兄です。
感想
重い話です。
物語の舞台の半分以上が病院ですし、話の展開も持ち上げては落とすという感じで、読み進めるのが辛かったです。
妹の一樹ですが、なんかこの子、妙に格好いいです。
「でもねダイゴ、傷や痛みはなくちゃダメだよ。傷があるから塞いで強くなれるんだし、痛みがあるから癒されて気持ちいいんだよ。だから──もしも痛みがない世界だったら、あたし、ダイゴのことなんとも思ってなかったかもしれない」
この台詞や最後の穂波に対する口上など、妹の言葉はどれも印象深い。
ちょっと性格は変わってますが、兄に対して変に大人ぶったり、甘える時は普通に甘えたりとちゃんと妹らしい可愛さも持ち合わせているし、いい妹キャラだったと思います。あっさりしてますが、兄妹のキスシーンもありますしね。
ラストはハッピーエンドと言っていいのかな?
思ったほど後味は悪くない結末でした。
少なくとも僕にはラストで絵本を手にしている妹が不幸せには見えなかったです。
あと、最後に一言。
二階堂は死んでいい。