『初めて好きになった人』の感想

作品情報

jitsumai.hatenablog.com
この記事のコメント欄で教えてもらった作品です。

初恋コレクションという児童書のアンソロジーシリーズ8巻『貝がらハートの恋心』に収録されている短編小説です。
著者は藤野恵美さん。

2006年発行の少し古い本なので入手は難しそうですが、児童書ということで図書館なら置いているかもしれません。
僕も近所の図書館で借りて読みました。

妹について


主人公。
名前は「ひな」で名字は不明。
兄の4つ下で、小学4年生。
家族構成は両親と兄の4人家族。

一人称は「あたし」「ひな」。
兄呼称は「お兄ちゃん」。

お兄ちゃん大好きな女の子。
友達同士の好きな男子の話で、お兄ちゃんのことを大真面目に挙げるぐらいのブラコン。

実義に関してはハッキリ書いていませんが、兄妹は結婚できないと書いてあるし、義理を匂わせる要素もないので実妹と考えて問題ないと思います。

兄について


主人公の兄。
名前は不明。
中学2年生。

眼鏡男子。
妹と一緒にゲームをしてあげたり、妹のお願いをちゃんと聞いてあげたりと、妹にはかなり優しい。
妹のことは、ひなと呼び捨てにしている。

挿絵のビジュアルを見る限り、妹と結構似ています。

内容と感想

小説は妹視点の一人称で書かれています。

教室での女の子同士の好きな男子の話から始まり、中盤は家に帰ってからのお兄ちゃんと過ごす時間が描かれ、最後は夜になってお兄ちゃんと一緒に寝るシーンで終わり。

22ページと短い作品ですが、妹のお兄ちゃん大好きな気持ちがしっかりと描かれており、兄妹の会話も兄のぶっきらぼうな感じがリアルなところが気に入りました。

兄妹の両親はあまり仲が良くないらしく、そのことが妹の心に影を落としており、それが兄に対する依存のような感情になっているのが上手いですね。

ゲームをしている兄の足に頭を置いて寝転がる妹、妹の頭に手を伸ばして髪をくしゃくしゃっとする兄、両親のことで泣く妹を兄が抱きしめてなぐさめるシーンなどがお気に入り。

あとがき

短いながらも、兄妹モノとして上手くまとまっています。
児童書ということもあって、兄妹恋愛というよりは兄妹愛という感じですし、最後のシーンでは妹が他のだれかを好きになる可能性が示唆されたりもしているので、そこは好みが別れそうですが、僕は良い作品だと思いました。
妹の、子供らしい純粋に兄を慕う気持ちは、どこか懐かしさを感じさせて、心を打ちますね。

コメント欄に書いてあったセリフについては、ぜひ自分の目で確かめて欲しい……のですが、古い本ということで読めない人もいるでしょうし、一応隠して紹介(反転して読んでください)。

どんなに好きでも、あたしはお兄ちゃんとは結婚できない。
でも、結婚なんかしなくたって、いっしょのおうちで暮らしてる。だから、それでいい。
好きな人といっしょにいること。それが一番大切だと思う。

兄妹恋愛の本質をズバッと突いていて、感心しました。
2006年でこれは、結構凄いですね。