『さらば、佳き日』4巻までの感想

作品情報

ある地方都市に“新婚夫婦”として引っ越してきた、桂一と晃。新しい生活を始めたふたりは、睦まじく穏やかな日常を送っていた。しかしふたりの陰には、大きな「秘密」があって――。とある“夫婦”と、ふたりをとりまくオムニバス・ストーリー。

上記はAmazonの内容紹介より転載。
一般の恋愛漫画
これを書いている現在4巻まで刊行されていて、COMIC itという漫画サイトで連載中。

妹について


主人公の妹。
兄の3つ下の社会人。
名前は広瀬 晃(ひろせ あきら)。
保育園で保育士として働いている。

一人称は「私」「あき(幼少時)」
兄呼称は「桂ちゃん」

しっかり者で、兄の世話を焼くのが大好きなブラコン。
昔から忙しい両親に代わって家事をしていたので、家事は得意。
クールな性格で、大人になってからは、兄に対しても敬語で話すように。
童顔で見た目もボーイッシュなので、中学生や男に間違えられたりもする。

実の妹や血の繋がったという表現はないですが、兄妹の恋愛をタブー視している、赤の他人になんてどうやってもなれないという兄の台詞(第8話)、兄妹の顔がよく似ていることから、実妹と思われます。

兄について


主人公?
名前は広瀬 桂一(ひろせ けいいち)。
月虹社という絵本の出版社で働いている。
高校では帰宅部だったが、3年時に演劇部に所属。大学では児演サークル所属。

家族構成は両親と妹の4人家族。
両親は仕事が忙しくて、ほとんど家にいない。

どうにも頼りないヘタレ眼鏡天然の妹たらし。
妹のことはとても大事に思っていて、独占欲も強い。
眼鏡を外した顔は、妹と良く似ている。

感想

この作品は時間軸が特殊で、社会人から始まり、高校や大学のエピソードなどを挟みつつ、登場人物の過去が少しずつ明らかになっていくという構成になっています。
広瀬兄妹がメインですが、その他のキャラ視点から見た兄妹の話などもあります。

この作品はとにかく、伏線の張り方や心理描写が非常に上手い。
第1話で晃が『桂ちゃん』とは結婚出来ないんだからと呟くシーン、第4話で兄が15年間ずっと兄貴って役を演じてたと呟くシーン、第6話で引っ越しする晃の見送りをする場面で晃の表情を見せず、最後に笑顔を見せて、桂一が晃が嘘を言っていると見抜くシーン、第8話で桂一が剛に愚痴るシーン、第9話で珠希が不倫して出ていった自分の母親について語るのを聞いて、晃が自分と重ね合わせるシーンなど、兄妹だけでなくそれ以外のキャラも上手く使って、兄妹の気持ちや関係を丁寧に描いています。

兄妹で恋愛関係になる事に関しても、両親が仕事で忙しいという環境や、子供の頃の思い出をしっかり使っていて、説得力があります。

時系列

時系列が結構ややこしいので整理しました。
(ネタバレ全開なので、未読の人はお気をつけください)

子供の頃。
桂一がおばけを怖がって泣くが、隣で寝てる晃の手を握って安心する(第6話)。

子供の頃。
風邪を引いた桂一のために、晃がパンのみみのかりんとを作ってあげる(1巻のはつゆき)。
風邪が治った後、兄妹でパン屋に行く(3巻の番外編)。

小学生の頃?
兄妹でメイドごっこ、秘書ごっこ、夫婦ごっこをして遊ぶ(第6話)。

桂一高校1年生、晃中学1年生。
桂一が彼女? を家に連れてきたことに晃がショックを受け桂一に思わず好きと言ってしまう(第2話)。

桂一高校2年生、晃中学2年生。
珠希視点のエピソード。晃が珠希に誕生日のケーキをプレゼントする(第3話)。

桂一が高校生の頃?
桂一が自分の友達が晃に興味を持ったことに不快感を覚える(第6話)。

桂一高校3年生、晃中学3年生の夏。
広瀬兄妹と珠希、剛の4人で地元のお祭りに行く(第5話)。

桂一高校3年生、晃中学3年生秋。
剛視点のエピソード。文化祭で剛が桂一の妹に対する気持ちに気づく(第4話)。

桂一大学1年生、晃高校1年生の夏休み。
覗き事件発生。晃を心配した桂一が晃を抱きしめる(第5話)。

桂一大学2年生、晃高校2年生の秋。
晃が京都に修学旅行に行く。自分のやりたい事を貫き通す柳沢を見て晃が羨ましがる(2巻のあこがれ)。

桂一大学3年生、晃高校3年生の終わり。
桂一就職活動中。大学進学を期に晃が家を出ていくことに。
引っ越しの荷物の関係で同じ部屋で寝た時に、桂一が晃に好きな人のことを聞く。
晃が家を出ていき、兄妹に距離が出来る(第6話)。

桂一社会人3年目、晃短大3年生の秋。
桂一が映像の仕事で先輩に怒られる毎日の中、母親が突然帰ってくる。晃は学祭を満喫中(第7話)。
情けなく愚痴をこぼす桂一に、剛がキレて突き放す(第8話)。
晃が珠希を訪ね世間話、誰にも言えない関係について考える。桂一が、晃が男と手を繋いでいる学祭の映像を偶然見掛ける(第9話)。

桂一社会人3年目、晃短大3年生の冬。
桂一が仕事を辞めて家を出ることを母親に伝えて、キレられる。晃に会いに行き、晃に彼氏がいると勘違いする(第10話)。
桂一が晃と久しぶりに再会、泣いてる晃を見て衝動的にキスしてしまった後、風邪が悪化してぶっ倒れる。
桂一が仕事を辞めて家を出るという話を聞いた晃が、ついていくと言い出す(第11話)。

桂一社会人3年目、晃短大3年生の年明け。
珠希視点のエピソード。珠希が剛の桂一への気持ちに気づく。晃がスマホの番号を替えていて、連絡が取れなくなる(第12話)。
桂一と晃が引っ越し先の富山に出掛ける。
当てにしていた社員の募集が締め切られていたので、とりあえず伝屋に泊めてもらうことに。
晃が伝屋の人たちに自分たちは夫婦だと説明する(第13話)。
晃が桂一に兄妹に戻るか夫婦ごっこをするかの選択を突きつけ、桂一が夫婦ごっこを選択する(第14話、4巻のラスト)。

???(不明)

春。
兄妹で田舎のアパートに引っ越してくる。周りには新婚夫婦として通している。
新婚ということで、キスする関係になっている(第1話)。

引っ越し後の兄妹のエピソード。兄が妹たらしぶりを発揮する(1巻の鶴によせて)。

まとめ

兄妹恋愛モノとして、素晴らしい出来です。
兄妹描写、恋愛描写、心理描写、先が気になるストーリー展開、絶妙な伏線の張り方と構成と、どれをとっても申し分無し。
雰囲気的に『にえるち』とよく似てますね(あれほど暗くはないですが)。
『シスコン兄とブラコン妹が正直になったら』も素晴らしい出来なんですが、それとはまた違ったベクトルの素晴らしさです。

まだ連載途中なので、ハッキリした評価は下せませんが、このまま行けば名作になる予感がしますね。

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思いっきりネタバレあるのでお気をつけください。