『さらば、佳き日』8巻(完結)の感想

作品情報

兄と妹、交わらないはずだったふたりの恋。「夫婦ごっこ」の結末は……。

上記はamazonの商品説明より転載。

jitsumai.hatenablog.com
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作品内容や兄妹については上記の記事を参照してください。

感想


目次。
8巻は第29話から最終話までが収録されています。
単行本描き下ろし漫画もちゃんとあり。


奥さん(と周りには思われている)である晃が妹なのではないかと疑われ、ごまかす桂一。
最後のコマのドアを閉める音と台詞のリンクのさせ方が上手い。
この漫画は、兄妹恋愛についての背徳感が強めですね。



母親と買い物に出かける晃。
今までのことも反省しているみたいだし、案外話のわかるお母さんじゃないか。


……と思わせておいてからのこれ。
晃の意思や気持ちなどハナから無視で、考えているのは自分のことばかり。
ダメだ、この母親……。



晃のことを回想する桂一。
晃という名前には光という意味もあるので、おそらくその辺も掛けてあるのかな。


ちなみに桂一は月です。
桂一が勤める月虹社という社名は、月の光が関係しているので、確かに運命を感じさせますね。


自分の桂一への気持ちを抑えて、後押しをしてくれる剛つんカッケー!


そんな剛つんの気持ちにはまったく気づかず、一生友達宣言する桂一。
この男はホンマ……悪気がないのが、余計質悪いわ。


剛つんと別れ、何かを決意するような表情をする桂一。
こうしてみると、やっぱり晃と顔似てますね、さすが兄妹。


母親に桂一との仲を疑われ、とぼける晃。
桂一と晃は、今の関係を続ける限り、こうやって嘘を吐き続けなきゃいけないんですよねぇ……。



晃に自分を産んだ理由を尋ねられ、答える母親。
普通なら、こんなことを言われると傷つくものですが……ここは最終回の伏線になっています。


桂一のモノローグ。
ここ「だから俺たちは兄妹だったんじゃないか」の部分が前の文章と上手く繋がらず結構悩んだのですが、「(そもそも赤の他人だったら出会うことすらなかった)だから俺たちは兄妹だった(出会うために兄妹として産まれてきた)んじゃないか」という風に僕は解釈しました。
兄妹だったからこそ二人は出会い、一緒に過ごし、惹かれ合ったわけですから。


晃がいなくなったことを桂一に説明する母親。
口では突き放したようなことを言っていますが、最後の2コマの反応を見る限りちゃんと心配はしているようです。



桂一に口答えされ、逆上する母親。
この母親なりに、晃のことは愛していたみたいですね。
決して良い母親ではありませんし、好きにはなれないですけど、この母親の過去を考えると情状酌量の余地はあるかなぁ。


いなくなった晃を見つける桂一。
ここは5巻の17話で二人で出かけた砂浜ですね。
晃が居たのは、桂一が晃に蹴り込まれた岩の中です。


伏線回収。
兄のために産まれてきた妹っていうのはいいですね。


兄妹であることを否定する桂一。
ここは、ちょっと残念だったかなぁ……兄妹であることは否定しないで欲しかった。


身も心も結ばれる兄妹。
さすがに行為自体の描写はありませんが、一般誌でちゃんと近親相姦描写をやってくれたのは素直に嬉しい。
最後は1話の冒頭の場面に戻って、物語は終わります。

描き下ろし漫画について

単行本描き下ろしの「佳き日に」では、その後の兄妹が描かれています。
ちょっとしたイチャイチャもあり。

あの絵本については、人魚である姉=晃、弟=桂一という解釈でいいんですよね? 裏表紙の幼い頃の兄妹(晃の方が背が高い)とも一致しますし、



1巻の鶴によせてで、こんなシーンもありますから。


「佳き日」という単語と結婚する二人が手を繋いでいるのに注目。

『さらば、佳き日』というタイトルは、佳き日=結婚式ということで、結婚出来ない道を選び、二人で生きていくことにした広瀬兄妹の決意を表していたのだと、僕は思います。
絵本と最後の「手を繋いで」走っていく兄妹の描写からは、二人の幸せな未来を感じました。

あとがき

4巻で兄妹が駆け落ちした後は、長い間グダグダした展開が続きましたが、最終的にはちゃんと兄妹恋愛エンドで終わってホッとしました。

ただ、兄妹のその後に関しては、実の兄妹であるという根本的な問題や母親との関係については解決してないんですよね。

僕としては、過去描写が終わったら1巻の時間軸に戻ってきて、その後の兄妹の話をじっくりやってくれると思っていたので、その辺りの問題がふわっとした感じで、お茶を濁されてしまったのが残念。

この作品に限らず、他の兄妹恋愛モノもそうなんですが、両想いになった後の兄妹の未来ってハッキリ描かれないことが多いんですよね。
なんとなく良い雰囲気で終わってめでたし、めでたし、みたいな。

そりゃ、現実には兄妹での恋愛は色々と問題があって難しいし、その辺をリアルに描いても面白くないのかもしれませんが、そこを堂々と正面から突破して、本当の意味で兄妹が幸せになれる作品。そういうのが僕は見たいんですけどねぇ……。

もう、自分で作るしかないのかなぁ。