『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』9巻の感想

今回は短編集です。
京介視点のプロローグと京介以外の視点による短編が7編。
以下、それぞれについて感想を書いていきます。

プロローグ

京介視点。
この巻で京介視点はここだけ。
夏休みが終わり、高校卒業まで残り半年となった京介の独白。
自分と妹の進路についての思索と、残りの半年で色々なことに決着をつけるという決心をしています。


これを読む限り、どうも俺妹の物語は京介と桐乃の卒業時点で一区切りがつくっぽいですね。
そして、これからの半年は激動の半年になるようです。


それと、この物語はあくまで京介の主観で見聞きした物語であり、

「語り部が変われば視点も変わり、俺が見てきた物語はその様相を大きく変えてしまうのかもしれない」

と京介が語っています。
京介の主観が云々という話は以前秋葉Blogのインタビューで作者が語っていましたが、
小説の中で明示されたのは初めてですね。

『あたしの姉が電波で乙女で聖なる天使』

黒猫家の出来事や8巻の顛末が黒猫の妹の日向視点で語られる話。


普通に面白かった。
8巻で暴落しまくった黒猫の株がある程度は元に戻るぐらいには。
京介と桐乃も少しだけ登場しますが、特筆するような事は無し。

『真夜中のガールズトーク』

『あたしの姉が電波で乙女で聖なる天使』の続き。
時間軸は桐乃と京介が温泉街で倒れた黒猫を旅館まで送っていた後。
黒猫の家族と一緒に高坂兄妹が旅館に泊まった夜の話を桐乃視点から描いた話。

桐乃視点で判明したこと

桐乃は京介のことを「兄貴」ではなく「京介」と心の中で呼んでいる。


自分はさんざん京介をボコってるくせに、京介が他の人にボコられるのは嫌。(75ページ)


桐乃は兄の事を無敵のスーパーヒーローのように相当高く評価していたらしいが、
今は、本当は普通の高校生で無理して頑張ってくれていただけなのだと気づいている。
そしてその事実を認めることが出来ず、すれ違い続けていた日々を後悔している。(77、78ページ)

『俺の妹はこんなに可愛い』

京介の親友の赤城視点。
時間軸は夏休みが終わった後の新学期。
前半はシスコンの赤城が妹の瀬奈について語り、
後半は赤城と京介がどっちの妹が世界一可愛いかを決闘で決めようとする話。


赤城兄妹は高坂兄妹とはまた違った良さがありますね。
赤城の妹への接し方は、兄としてかなり優秀。
瀬奈の方もなんだかんだ言ってブラコンのようです。


それにしても後半の決闘は色んな意味でやばい。
まさか京介が、赤城と張り合って自分の妹自慢を始めるほどのシスコンになっていたとは驚き。
ここまで開き直っているとは全くの予想外。
もう一つ驚いたのが、そんな決闘をしてることを桐乃に普通に教えてしまうところ。
当の本人である桐乃にすら妹を可愛いと思ってることを隠さないこの積極性は、今までの京介には見られなかった部分。
五巻以降京介のシスコンぶりはどんどん進化してましたが、まさかここまで行くとは思ってませんでした。


妹の載ってるファッション雑誌(ビキニ写真も有り)を複数持ち歩き、
あやせのことを「桐乃を除けば」たぶん世界最高の美少女と言い出し、
桐乃が自分撮りした写メを見て死ぬほど可愛いと評し赤く頬を染め、
赤城に対し「お前が出してくる妹の写真には、おまえが映っていない。
妹ってのはな、兄貴と一緒にいるときにこそ、最高の魅力を発揮するんだよ!
妹とのツーショット写真なくして、世界一の可愛さなど表現できはしない……!」などと熱く語り、
携帯の裏側には妹とのらぶらぶツーショットプリクラをいまだに貼っており、
目線で妹に対しホッペにチューをせがむ。


シスコンってレベルじゃねぇぞ!!!


まぁ、兄からメールで決闘の事を教えられ、自分の可愛い写真をわずか1分で撮って送ってあげる桐乃も大概ですけどね。


今までは電撃文庫の倫理規定で兄妹の関係をどこまで描けるのか疑問だったのですが、
今回の話からすると妹の胸を揉むのとホッペにチューまではOKのようですね。
サブキャラの赤城兄妹でここまで出来るのなら、高坂兄妹の方にはそれ以上を期待したいところ。

『カメレオンドーター』

沙織視点による沙織の過去話。


普通に面白かった。
今まで影が薄かった沙織だけど、この話でかなり印象が変わった。
8巻以降の京介と桐乃がほんの少し登場するけど、特筆するような事は無し。

『突撃・乙女ロード!』

桐乃視点。
時間軸は『俺の妹はこんなに可愛い』の後。
前半は桐乃と瀬奈が池袋の乙女ロードを散策し、
後半は桐乃と瀬奈が、どっちの兄がよりシスコンか勝負するという『俺の妹はこんなに可愛い』の対のような話


桐乃が京介と同じく自分の携帯にらぶらぶツーショットプリクラを貼っていることが瀬奈にバレたのをきっかけに、
京介がどれだけシスコンかを語る桐乃がニヤニヤすぎる。


四巻で京介にエロゲーを買ってきてもらった時の話をした時に、
「チョー大好きなあたしのために」と言ってるあたり、桐乃は京介から好かれていることはちゃんと理解しているらしいが、
京介の自分に対する様々な行動に対して「ねぇ……どう思う?」(207ページ)と瀬奈に質問してるところから察するに、
それがどういう意味での好きかは測りかねているようです。

『過ちのダークエンジェル』

あやせ視点。
加奈子のライブに偽マネージャーとしてやってきた京介を、あやせが意識しまくる話。


京介にあやせと加奈子とのフラグが立ちまくってますが、
それを全く相手にしてない京介が良し。
「……余裕なんかねえよ。ぜんぜんダメだ」(244ページ)という呟きから、セクハラを我慢してる可能性が大ですが、
それでも努力してるだけマシ。

『妹のウエディングドレス』

桐乃視点。
『過ちのダークエンジェル』の続き。
モデルとしてウエディングドレス姿での撮影に参加していた桐乃の元に、
ライブ会場から京介が痛チャリで駆けつけ、一緒にライブを見に行く話。


見所は
不審者と間違われた京介に助け舟を出す桐乃(260ページ)
桐乃のウエディングドレス姿を見て顔を赤らめる京介(261ページ)
京介の腕を取って移動する桐乃(262ページ)
手を繋いでライブ会場に急ぐ兄妹(272ページ)
ラストの結婚式を思わせる高坂兄妹の挿絵(275ページ)
あたりかな。


ラストの桐乃が誓ったことについては「京介に対してもうちょっと素直になる」
喧騒にかき消された言葉については「(ライブに連れてきてくれたことと今まで自分にしてくれた事に対しての)感謝の言葉」が無難な線でしょうか?
(後者は四巻でプレゼントを渡す時(191、192ページ)に既にやってますが……)
「これからもずっとこうやって一緒にいる」と「告白」という線もありますが、
どちらにしてもハッキリとは確定不能で、いつも通りのどうにでも解釈出来る表現ですね。


高坂兄妹のお互いに関する気持ちについては、
今までは桐乃→京介に対する気持ちがガチで、京介→桐乃は曖昧というイメージがあったのですが、
9巻を読むと桐乃→京介が曖昧、京介→桐乃がガチとまるで正反対になりましたね。
8巻での「きっと次は俺から告白するから」(298ページ)という京介の台詞と今巻の意味深なモノローグを合わせると、
兄妹恋愛的にはかなり面白くなりそうな展開が予想出来るんですが……どうかな?

まとめ

前巻で色々とやらかした分をずいぶん修正してきたなという印象。
8巻で黒猫を持ち上げすぎたのを反省したのか、9巻はかなり桐乃を押してきてますね。
京介に対してもずいぶんイメージアップが図られています。
8巻の展開にはかなり失望させられたので、
9巻については全くというほど期待してなかったのですが、予想以上に良い出来で面白かったです。


まぁ、正直、作者や編集にいいように釣られているなとも思うし、
10巻以降でまたやらかす可能性が無いとは言い切れないのですが、
少なくとも9巻は兄妹メインの展開にしてくれた以上、ここは素直に評価したい。
とはいえ、8巻の感想の時に書いたようにこれ以上作品の価値が下がらない内に早めに終わって欲しいという気持ちは変わってませんが。


どうも俺妹が10巻で終わるのは無理そうなので、せめて12巻辺りで終わってほしいところ。
10巻で兄妹の過去回想、11巻で兄妹に関する大きな変化、
12巻で兄妹の関係に区切りをつけて締めという感じで終わってくれると理想的なんですが……。