jitsumai.hatenablog.com
前回の続きです。
注:この記事は『氷の鱗』と『ミスター残念賞』のネタバレが多大に含まれております。
まだ読んでいない方は、楽しみが損なわれる可能性がありますし、そもそも読んでることを前提に書いているので、お気をつけください。
『ミスター残念賞』
1/ナゼだろう?こんな気持ち 初めての感覚より
ロシア語の部分は「ダンスの経験ある? 一緒に踊らない?」のようです(翻訳はグーグル翻訳アプリのカメラ機能を使っています、正確さは保証できません)。
ロシア語の部分は「思った通りだった。一緒に夕食を食べない?」のようです。
3/君を思い出せば後悔だらけで真っ黒になったより
バレエを辞める決意をしたユキを侮辱し、責めるマオ。
言ってることは酷いですが、マオがかすみにされたことを思うと仕方ないかなという気もします。
マオの告白を拒否するユキ。
マオのいうことに反論しないあたり、ユキはかすみの自分に対する扱いをわかったうえで、受け入れているようですね。
ロシア語の部分は1つ目は「おはよう」、2つ目は「(飲むの)禁止」のようです。
ブリヌィというのは、ロシアの料理のことらしいです。
4/先生教えてください 愛ってどんなカタチでしょうかより
兄妹の娘である雫花(しずか)。
かすみのことは父ではなく、伯父と教えられています。
確かにかすみ似ですが、髪の色といい、母親に似てないってことはないと思うんですけどね。
ちなみに年齢は12歳です。
娘を溺愛するあまり、セクハラまがいのことをしているかすみ。
ユキの今の年齢が36なので、雫花はユキが24の時に産んだ子供ですね。
5/反抗期の君 よく聞きなさいより
ロシア語の部分は「こんにちは」のようです。
アサトをユキに会わせようとしないかすみ。
サラッとのろけてるうえに過保護ですね。
札幌に行かないというユキ。
含みがある言い方ですし、かすみに言わされているようにも見えますね。
かすみはユキを家に閉じ込めて、極力、人に会わせたくないようです。
独占欲、不安、臆病。
ユキを手に入れても、かすみのこの辺りは全然変わってないですね。
7/優しくて残忍なモノ熱くて冷たいモノより
ロシア語の部分は「心臓が激しくなって爆発しそう」のようです。
8/君との二人きりはイキたくなる程痛いより
ロシア語の部分は「おはようございます」のようです。
9/だから悲しく冷たいこの想いをより
ロシア語の部分は「痛い! 伯父さん待って」かな? ここの訳はあまり自信ないです。
ここのシーンは、最初見た時かなりびっくりしましたね。
さすがのユキも怒ってますね。
いくらかすみでも、実の娘に手を出したりはしないようです。
かすみが言っている「雫花がマオに騙されている」というのは、「マオが雫花にユキの影を見ている」ことを指しています。
13/一輪は蒼くより
ロシア語の部分は「すごくおいしい」のようです。
14/楽しめばいいさ 苦しめばいいさより
ロシア語の部分は「キャー」のようです。
15/先生の差し伸べた手のひら、僕はより
ロシア語の部分は「やめて!!」のようです。
雫花が首に掛けてる指輪は、前作のラストでユキがマオから貰った指輪ですね。
16/この瞳に君だけを映し出していたいより
アサトにアドバイスとサポートをするかすみ。
マオが壊れるのもお構いなしだった昔に比べると、かすみもずいぶん丸くなりましたね。
……と褒めた途端にこれだ。
マオに対しては、本当に意地が悪いですね。
結局マオから指輪はもらえず、マオに指輪を返す雫花。
マオが、まだユキに未練があることをかすみは見抜いています。
17/切なく怨んでやりたいより
マオの本音。
あんたらの業からシズを断ち切りたいは問題ないとして、後半は……。
まだ、諦めてないんですね。
かすみの影響が抜けきらず、まだまだ黒い部分が残っているナオでしたが、かすみと話すことで自分の間違いに気づきます。
そんなマオに釘を刺すかすみ。
かすみはマオに自分と同じことはしてほしくないようです。
18/せ つ な いより
ロシア語の部分は、1つ目はふりがな通り、2つ目は「なんでもない! なんでもない!!!」のようです。
踏み込んで頂いて構いませんと応じるアサト。
この言葉を真に受けたのかどうかは不明ですが、実際にこの後かすみはアサトに踏み込んでいきます。
23/自己の解放 ぁあああぁあぁああああああああぁより
ここのロシア語の部分は、ちょっと意味がわからなくて上手く訳せませんでした。
わかる人います?
24/君を連れて叫び続けるより
妹のしたことを自分の責任と感じているところは良兄っぽい。
ユキとマオの望む事というのは、かすみに塗りつぶされたマオがその影響から抜け出すことですね。
引退云々はラストへの伏線です。
26/目を閉じても伝わるより
どんどん成長していくアサトに目をつけるかすみ。
アサトを面白いと感じた理由については、かすみの逃げずに縋り付く子という台詞から、かすみの目にはアサトが掴もうとしている恩師の手が見えるからだと思われます。
27/大好きな、より
かすみが伯父ではなく父親だと気づいた雫花。
過程に問題はありましたが、ちゃんと兄妹はお互いのことが好きだし、愛し合っているようですね。
28/死ぬまで忘れはしませんより
かすみは自分が自己中で最低な大罪人という自覚はあるんですね(笑)。
スィルニキというのはロシアのお菓子らしいです。
30/響け、この声。より
ロシア語の部分は「(あなたを)愛してます」のようです。
アサトにアドバイスするかすみ。
ここの描写は、昔、かすみがマオを鍛えてた頃を思い起こさせますね。
さすがにあの頃のような酷い鍛え方はしませんが、かすみはアサトを鍛えることでマオを変えようと利用しているので、やってることは似たようなものですね。
32/悲しみの果てに君は何を見た?より
自分に甘えてくる雫花を優しく突き放すかすみ。
雫花には自分のように黒く染まってほしくないので、自分とは距離を置かせようとしています。
雫花が、自分が父親であることに気づいているのを察し、苦悩するかすみ。
36/噛みつきたくて心が騒ぐより
マオとユキ、久しぶりの再会。
傍から見るとマオが言っているように籠の中の鳥に見えますが、本人は幸せなようです。
まだユキへの想いを断ち切れていないマオ。
それが断ち切れるのはもう少し先です。
37/君は何を見る?より
雫花に真実を告げることを決意するかすみ。
使うというのは、「ユキが妊娠しているという嘘」のことです。
ロシア語の部分は「もっともっともっと」「自由に!」のようです。
マオとアサトに本物の踊りを魅せようとするかすみ。
目的は自分の踊りから二人に何かを掴ませようとしているのはもちろんですが、自分の引退への道筋を付けるためでもありますね。
38/冷たい雨より
ユキが妊娠しているという嘘をついて、マオを試すかすみ。
相変わらずいい性格してますな(笑)。
39/心酔からの心痛より
韓国語の部分は1つ目が「人の男に手を出さないで」2つ目が「迷惑ー!」のようです。
ロシア語の部分は「リディア、誰かいるの?」のようです。
リディアは団員の名前かな。
40/鬼畜生の道徳主義者より
雫花を巻き込まないために、あくまで突き放そうとするかすみ。
マオ次第で、バレエを引退するというかすみ。
この辺は賭けですよね。
まるで『氷の鱗』のコンクールをなぞっているようです。
最愛の人(ユキ)を手放さない為に愛する人(雫花)をも道具に使うというかすみ。
表面上はだいぶ丸くなったように見えますが、根本的な部分は変わってないですね。
雫花を愛しているのは、嘘ではないようですが。
ユキのお腹の中に子供がいるという嘘までついて、自分を憎ませようとしたかすみですが、雫花はかすみから離れようとしません。
42/儚く脆く小さな願いより
一度はかすみに黒く塗りつぶされたマオが、かすみとアサトの踊りがきっかけで、ようやく「ゼロ」になれました。
かすみやユキ、櫻庭の望みがようやく叶えられた瞬間です。
指輪も返してもらい、ユキとのわだかまりも解けたマオ。
43/ミスター残念賞より
かすみが引退を決意した理由。
これはあくまで表面的なものであって、実際の理由は40話でかすみが雫花に語っています。
雫花のためにかすみに約束を迫るアサト。
雫花にとってのアサトは、ユキにとっての櫻庭みたいな存在なんですよね。
お互い恋愛感情こそありませんが、頼りになる年上的存在という意味で。
長くなるのでいちいち拾いませんでしたが、そういう視点でアサトと雫花の会話を見直してみると、また新たな発見があるかと思います。
雫花に指輪を渡すマオ。
ユキのことも吹っ切れて、めでたし、めでたしと思いきや、続編の『七色きつね』では別れちゃうんですよね。
この辺りは続きが描かれてないこともあって、もやもやしたものが残ります。
ここのかすみとユキの会話、そして最後の「……けれど、もう、戻れない程狂ってしまったね。ユキも、僕も」という台詞。
最初読んだときは一見ハッピーエンドに見えるし、かすみはともかくとして、ユキのどこが狂っているのかよくわかりませんでしたが、
「僕は君たちの口から僕の望む言葉が出てとても嬉しかった」という、このかすみの台詞が鍵なのかな?
43話をよく読むと、アサトもマオも雫花もユキも、みんなかすみの望む言葉を言っているんですよね(最後のユキは特に顕著)。
アサトは見事に成長し、マオが自分を取り戻すきっかけを作ってくれ、更に雫花の良き理解者にもなってくれた。
マオは自分を取り戻し、ユキへの想いを断ち切った。
雫花はユキへの未練を断ち切ったマオから指輪を受け取り、自分が父親だと口外する心配もなくなった。
バレエを引退し、ユキとの二人きりの生活を手に入れた、という感じですべてがかすみの望み通りになっている。
どこまで計算してやったのかはわかりませんが、かすみは他人をコントロールするのが異常に上手いですね。
表面上はみんな幸せそうに見えますが、結局は、みんなかすみの掌の上で踊らされているという意味で、純粋なハッピーエンドと言えるのかどうかは微妙なところです。
最後のコマの氷の鱗が剥がれる描写は、かすみなりの贖罪の気持ちの表れに、僕には思えました。
あとがき
感想でも書きましたが、この作品、純粋なハッピーエンドとは言い難いんですよね。
かすみのユキに対する扱いも人形(コッペリア)みたいですし、そもそもかすみという人間がおよそ善人とは言えないのもあって、共感しづらい。
これらのこともあって、なかなか人には勧めづらい作品なのですが、兄妹モノとしてみれば、両想いで子供まで作ってと、かなり踏み込んだ内容となっています。
歪んだ関係というのは、僕の兄妹の好みからはちょっと外れていますが、漫画としては面白いですし、兄妹のキスシーンやHシーンも多いなど、なんだかんだ言ってこんな記事を書くぐらいには気に入ってます。
続きは……もうないのかな。