あらすじ
やや周りから孤立しながらも、それなりに平凡な学生生活を送っていた主人公が、なぜか他の人には見えない不思議な女の子「ウタカタ」と出会ったことがきっかけで、様々な女の子と出会い打ち解けていくという学園恋愛モノ。
公式サイトのストーリー紹介では「たった数日間の物語」などと書いてありますが、実際は全然そんなことはなく、それなりにボリュームがあります。
妹について
名前 | 年齢 | |
---|---|---|
神楽鳥 雛(かぐらどり ひな) | 兄の1つ下、高○1年生? | |
一人称 | 兄呼称 | |
私、雛 | おにいちゃん、真 | |
身長 | 体重 | スリーサイズ |
154cm | 不明 | B82/W51/H78 |
CV | 原画 | シナリオ |
藤森ゆき奈 | やすゆき | 小林公示 |
備考 | ||
3月17日生まれ、AB型 |
主人公の妹。
休学中の学生。
性格は口数が少なく大人しい。
現在は訳あって学校には行かず、実家から遠く離れた兄のアパートで引き篭もり生活を送っている。
家事は得意で、家の事はほとんど雛がやっている。
好物はおにいちゃんが好きなもの。
昔から自分に優しかった兄だけが心の拠り所で、兄がいなくなったら死ぬんじゃないか? というぐらいの依存レベル。
「………………迷惑?」
「…………ん」
「……おにいちゃんなら、抱きついてもいいよ?」
兄について
主人公。
私立桜紡糸(さくらぼうし)学園2年生。
家族構成は両親と妹の雛の4人家族。
北海道の寒さを嫌って親元を離れ、アパートで一人暮らしをしながら関東の学園に通っていたが、今は妹の雛が転がり込んできて、二人で暮らしている。
人付き合いが苦手で、友達は少ない。
人の気持ちにかなり鈍感なところがあり、愛想がなく不器用ではあるが、根は真面目で常識人。
趣味は絵を書くこと。
この手のゲームにしては珍しく、ヒロイン視点からの立ち絵有り。(ボイスは無し)
家事は苦手なので基本的に雛に任せているが、妹にすべてを任せるのは心苦しいので、皿洗いだけは手伝っている。
学校に行かず家に引き篭もっている雛のことを、兄として心配しているが、口数が少ない雛の考えが掴めず、今は見守ることにしている。
かなりの良兄です。
シナリオ
共通ルートの長さは2〜3時間ぐらい。
いつもの授業中に突然ウタカタが登場し、それをキッカケに各ヒロインたちと出会い、さまざまな出来事が起こる1週間までが共通ルート。
選択肢の数はそれなりにありますが、ひよナビというヒント機能もあるし、難易度は低め。目当てのヒロイン寄りの選択肢を選んでいけば、自然とそのヒロインのルートに入れると思います。
妹の雛については、同じ学校に通っているわけではないので、会えるのは家でのみ。
共通ルートでの出番はそれほど多くないです。
ただ、兄妹描写はなかなか良いですね。
近すぎず遠すぎない兄妹の距離感ですが、やり取りの端々に兄が妹を心配したり意識したりする描写や、妹が兄を慕う描写が挟まれていて、兄妹愛を感じさせてくれます。
雛ルートは4〜5時間ぐらい?
しっかり計算したわけじゃないですが、体感的にはかなり長めです。
(ここからネタバレあります。未プレイの方はお気をつけ下さい)
雛ルートに入ると雛に名前で呼ばれたこと(雛がそう呼んだ理由は、兄が寝ぼけてたのを起こすため)と、アクシデントで胸を掴んでしまったことがきっかけで、兄が雛を意識し始めます。
兄のそんな内心を知らず、手を恋人繋ぎしたり、兄の胸に顔を押し付けて匂いを嗅いだり、自分の胸を兄の腕に押し付けたり、胸の話になった時に自分のを「触ってみたい?」と質問したり、兄の耳元で囁いたり、首筋をちゅっちゅしたり、耳たぶを噛んだりと、兄が余計に意識してしまうような行動を繰り返す雛は、天然というか小悪魔というか……。
その後、兄は雛が自分を想ってオナニーしてるのを目撃してしまい、雛のことを完全に女の子として意識してしまいます。
雛はオナニーしていることを兄に知られたことで、兄に嫌われたと思い込み泣き出すのですが、兄はそんな雛を慰めるために、自分も雛に対してそういう欲望を抱くこともあるからお互い様であると告白し、「でも、自分たちは兄妹だからその関係を守りたい」となだめます。
一応その場は丸く収まるのですが、自分の兄に対する気持ちと欲望を肯定してもらったことで、雛が今まで抑えていた兄へのリミッターが外れ、ますます兄に甘えてくるように。兄の言葉に一喜一憂し、感情を出すようになった雛はめちゃくちゃ可愛いです。
めちゃくちゃ可愛いです。
この後しばらくは兄妹の一線を越えたりすることもなく(雛からの可愛い誘惑はありますが)、お互いの考えを理解しようと兄妹の会話が続くのですが、僕がこの兄に感心したのが雛の考えが理解できなくても、決して否定しようとせずに、何とか理解しようとするところ。何かと悪い方にものを考え、すぐに自己否定しようとする雛の態度は、正直、見ててちょっとイラっとする部分もあるのですが、この兄の懐の広さは見習うべきものがあります。
また、我慢できずに雛に手を出してしまった時も、雛の態度がおかしいと気づいた途端、すぐに兄モードに入り止めます。
男としての性欲よりも、兄としての妹への愛情をちゃんと優先出来る兄の態度に好感度アップ。
そうこうするうちに兄も雛への自分の気持ちを認め、キスもして(CG付き)、ペッティングまでは行くのですが、セックスという一線まではなかなか越えない兄妹。
そんな中、赤ちゃんの話になります。ちょっと長いですが、ここは雛について理解するのに、どうしても必要なので引用。
「私は、おにいちゃんと結婚できないもん。だからせめて、証が欲しい……うん。それは確かに私のエゴだよ。でも、だからってそれは本当に赤ちゃんにとっての不幸なの? 母子家庭の子はすべて不幸なの? それって決めつけじゃないの?」
「……」
「赤ちゃんを授かるって、本当にそんな客観的な考えで受け取るの? 本当はみんな、もっと純粋に……欲しいって、感情で考えてそれで産まれて来るものじゃないのかなって、そう思うよ……? だって、私、わかるもんっ。おにいちゃんの赤ちゃん、欲しいもんっ。きっとみんな……こんな風に感じてるって、わかるもん」
中略の後、更に続く雛のターン。
「だって……俺は、ただ雛のそばにいただけじゃないか。雛の言うようにずっとずっと家で一緒にいて。だから雛にとって、存在が大きかっただけなんだ。きっと外に出たら……色々な人に出会えば雛が好きになるような男の人だってきっと現れる。その可能性を摘んでしまうんじゃないかって……」
「ん…………そうだね」
「うん?」
「私もそう思う…………きっと色々な人と知り合えば、おにいちゃん以外にも好きになる人とかが、現れると思うよ」
「あ、ああ……だよな?」
(……何でこんな動揺してんだよ、俺?)
「でも……だから、ヤ」
「いやって?」
「もう…………誰とも、会いたくないよ……」
「いや、待て。それは――」
「雛、間違ってるの?」
(また、直感する。この分野では、絶対に雛に勝てないって。思いつきで話して敵うほど、雛の考えは浅くないって、感じる。……結果、言葉が出なかった。)
「おにいちゃん以外の人を好きになるかも知れない雛を、その可能性を、私は否定しないよ……? でも、じゃあ、すべての人と出会うまで何も決められないの……? 私が、雛が、『この人だ!』って決めちゃったのに、もうそれしか考えられないのに……それでもだめなの? 私……そこまで子供じゃないよ……? おにいちゃんだけがこの世界の男の人だって、そう思ってないよ?」
「…………そっか」
(降参するしかなさそうだった。)
「あ……ごめんなさい……少し、嘘でした……」
「ん?」
「私のおにいちゃんは……世界にひとりだけ、でした……。だから……だからっ、そばにいたいの……大切なの。せめて、迷惑だって思われるまでは……いたいの……っ……」
これには参った。
まさか雛が兄との関係について、ここまでちゃんとした考えを持っているとは、全く想像してませんでした。
この時までは、やたら兄の所有物になりたがる雛の考えがイマイチ理解出来なかったのですが、この辺りでようやく理解出来るようになりました。
子供だと思っていた妹が、自分が思ってたよりもずっと大人である事を知った時の兄の気持ちが、このシーンでは実に上手く表現されていると思います。
「全部……おにいちゃんだけで、染まりたいっ……。ほかに何もいらないよぅ……。何も、ほんとに何も、いらないよぅー……。他の可能性なんて、いらない……そんなの、いらないっ……お兄ちゃん以外を好きになる世界なんて、絶対に、ヤ……っ!!」
何ともいじらしい台詞。
外の世界に出れば、他の男の人を好きになってしまうかもしれない自分を恐れて世界を拒絶し、ただ、兄だけを求めようとする雛の気持ちが痛いほど伝わってきます。
大人である「私」と子供である「雛」。
この二つが混じり合った不安定さが雛の魅力ですね。
この後ようやく兄妹は結ばれるわけですが、その後は兄が雛との関係をどうするかで悩み始め、悩んだ末に思考停止し、学校をサボって雛とやりまくる爛れた生活を送ったりするシリアス展開が続きます。そして、そんな生活が続けられなくなった頃、選択肢がいくつか出てきます。
この選択肢次第でハッピーとバッドエンドに分岐。
ちなみにこの選択肢、シナリオを真面目に読んでないと(読んでても)、正解を選ぶのが結構難しいです。初回プレイ時の僕はひよナビがないと、わかりませんでした。
バッドエンドは雛と共に町を逃げ出す逃避行エンド。
なんか爽やかに終わってますが、問題は全然解決していません。
ハッピーエンドは……出来れば自分の目で確かめてください。
兄が雛を説得するシーンは名台詞のオンパレード。特に兄妹が結婚出来ないことについての解決策は「なるほど、こういう考え方があるのか」と目から鱗。この兄の考え方は学生である兄妹の一つの理想形ですね。
(ネタバレここまで)
他ルートの雛ですが、他のヒロインルートに入るとすぐに雛は実家に帰ってしまい、以降ほとんど登場しなくなります。ヒロインのことばかりに夢中で、いなくなった雛のことをほとんど気にしなくなる兄を見ていると、実家に帰った雛の心情を考えて複雑な気分になってしまい、あんまり楽しめませんでした。雛目当てなだけなら他ヒロインのルートは特にプレイする必要はないです。
もし、最初から全員プレイする気なら、雛ルートは一番最後にプレイするのがお勧め。
親バレ、周りバレ
ネタバレなので隠します。構わない人は反転して読んでください。
親バレは無しです。周りバレは一応自分から友人に自分たちの関係を告白するというのがありますが、ラストでサラっと話してびっくりされるだけなので、やや中途半端。雰囲気的には受け入れられそうな感じですね。
禁忌、背徳描写
かなりあります。
兄も雛も、兄妹で愛し合うことが現実的には困難であることを十分自覚しており、それについてしっかり考えて悩みます。
作品の矛盾点について
プレイしていて気づいたのですが、兄の年齢については、ちょっと設定がおかしいです。
共通1日目の「雛が学園に行かなくなって一年と少し」という兄の独白とSS#02の雛の話に矛盾があります。
兄が関東の学校に進学するために実家から居なくなった後の二学期の終業式の時点から(この時、兄は高◯1年生で雛は中◯3年生のはず)雛が学園に行かなくなり、それから1年と少し経った3月に、兄のアパートに雛が転がり込んだという事実が正しいなら、兄は現在学園の3年生で、雛が2年生じゃないと計算が合わないからです。
まとめ
雛の可愛さと妹想いの兄のキャラ、兄妹恋愛を真面目に考えたシナリオはハイレベル。
妹が兄を好きになった理由、兄妹の過去の思い出、妹のオナニーシーンとキスシーン、ハプニングで妹の恥ずかしいところを見てしまう、兄妹という関係について悩むなど、実妹モノの基本はしっかり押さえています。
ただ、どうしても物足りなかったのは兄妹の生活描写の乏しさ。
朝起きる、一緒に食事、ソファーで二人で過ごす、一緒にTVを見る、比較的長いシナリオなのに兄妹で過ごすシーンがワンパターン過ぎて、不満。雛が引き篭もりで外に出られないのはしょうがないとして、もうちょっと家の中での過ごし方にバリエーションがあっても良かったと思います。あと、Hシーンを含め、CGの使い回しの多さも気になりました。
製品の中に入っていたチラシを見るかぎり、どうやら雛メインのファンディスク? が出るみたいなので、今作の不満点についてはそちらで解消されるのを期待。攻略不可の妹キャラを攻略可にするようなファンディスクは嫌いですが、(ファンディスクを買わせるためにわざと攻略不可にしたんじゃないか?という疑惑が湧くのと、妹好きのユーザーを妹で釣ってるようで気分が良くない)妹の魅力を更に掘り下げてくれるようなファンディスクなら大歓迎です。
読み応えがある妹シナリオの後に待つラストシーンは必見
お気に入り度(10点満点) 10
おまけ
なんかこの作品のレビュー自体が少ないみたいなので、妹以外について知りたい方向けに、もうちょっと書いてみます。
システムについて
システムの設定項目は、音楽、効果音、各キャラのボイスの個別ボリューム設定、演出効果のオンオフ、既読スキップ、メッセージスピードの設定など、快適にプレイするための基本的な機能は揃っています。
クリックしてもボイスを継続の項目もあり。個人的にこれがあると無いとではプレイの快適度がかなり変わるので、ありがたいです。
ちょっと変わったシステムとして、文字ウィンドウに各ヒロインのSDアイコンが選べます。
気になったのが、既読スキップが次の日になった時などに勝手に止まること。シナリオの途中で頻繁に起こるので、再プレイで違う選択肢を選んで先に進めたい時などはかなり面倒でした。
次にゲーム本編のシステムについて。
プレイ中、メッセージウインドウの左上にSS開通というアイコンが点滅することがあるのですが、これを選択すると「SS(スクランブル・ストーリー)」という2〜10分ぐらいのショートストーリーが始まり、その時のヒロインの心情や裏事情などがわかったり、あるシナリオをクリアするとキャラの別EDが見られるようになってます。(SSは後から読むことも可)
ただし、これには一つ欠点があって、再プレイの時にSS開通というアイコンを選んだ場合、NEWアイコンが出ないため、どのSSを選べばいいのかわかりづらいです。
他には「ひよナビ」というヒント機能があり、ひよこのアイコンによって選択肢の有効度がわかるようになってます。
おまけモードはクリアしなくても最初から解放。
CGモード、回想モードはありますが、音楽モードはありません。
別に音楽が凄くいいというゲームでもないので、なくても構わないといえば構いませんが、こういうところに、作りこみの甘さを感じます。
公式サイトにSSが追加される修正パッチ(これを書いてる時点ではVer1.01)がありますが、これを入れても誤字脱字が目立つのも気になりました。
2012/2/9追記 一度ゲームをアンインストールしてパッチを入れなおしたら直った? パッチの入れ方がまずかっただけかもしれません……失礼しました。
キャラについて
ここがこの作品の一番の魅力でしょう。
どのヒロインも可愛く、萌えに関してはレベルが高い。特にSD絵の出来が非常に良く、ヒロインの魅力を更に引き立てています。SSのヒロイン視点のおかげで、ヒロインに感情移入しやすいのも◯。
男キャラも獅士王と黒岩さんは何かと主人公のことを気にかけてくれ、要所要所で主人公にアドバイスをしてくれるありがたい存在で、不快になったりということもなかったです。
シナリオについて
起承転結の転まではいいのですが、結の部分が決定的に弱いです。
転までは比較的丁寧に描かれてたのに、結の部分になると急に駆け足の展開になって、あっさり終わってしまいます。
世界設定の作りこみが甘く、肝心の部分はご都合主義で解決してごまかされてる感じ。(特にぷーさん、理々乃、ウタカタのハッピーエンド(ウタカタはSSの方)は酷かった……)余計な設定がないクラスメイトAと雛のシナリオは気にならなかったんですが……。
あと、両想いになった後はすぐにシリアス展開になってしまうので、イチャイチャが短めなのも、もったいない。
シナリオの出来の順位は
雛>>>>>クラスメイトA>>ウタカタ>理々乃>ぷーさん
こんな感じ。
一応フォローしておくとぷーさんはバッドエンド? の方は良かったです。ハッピーエンドをなくしてこっちをメインにしたほうが、余韻があっていいのにと思いました。
他にも一応夏美、黒岩さん、獅士王とのエンドもありますが、どれもおまけレベルなので特に語るほどのことは無し。
Hシーンも無いので、妙な期待(アッー!)はしないように。
結論
全体的な評価としては、点数でいえば70点ぐらい、凡作〜良作の間といったところ。
キャラは魅力的なのに、シナリオとエロでかなり損をしてる印象。もうちょっと作り込んで、この2つが解消されていれば良作になれたと思います。